地上波の日曜劇場(「アトムの童」2022年10〜12月放送)でゲーム業界がフィーチャーされるなど、ゲームが広く一般化されたことに感慨ひとしおですが、この“ゲームが一般化”したことにより、昨今「ゲームマーケットも、景気動向の影響を受けるのか?」という声が聞かれるようになってきました。
長らくゲームマーケットは、国内景気と連動せずに独自のマーケット推移を築いてきました。その時々で次世代ゲーム機の登場や人気大型タイトルの投入、携帯アプリゲームの普及など、伸びの大小はあれ長期視点では右肩上がりのカーブを描いてきたと言えます。
近年では、コロナ禍における“巣篭もり需要”で2019年から2020年は大きな伸び(1.7兆円→2兆円)を見せました。ちなみに2021年の国内ゲーム市場は、“巣篭もり需要”という特殊な要因で2020年に大きく伸びた反動が出ることも危惧されましたが、前年とほぼ同じく約2兆円(そのうち1.3兆円はゲームアプリ)と定着した様が確認できています。
まだ国内GDPの0.4%に満たないとは言え、2兆円を突破し幅広い層に定着しはじめたゲームマーケット。5535万人と推計されるゲーム人口、これは5歳から59歳までの7737万人の実に7割を占めます。名実ともに“ゲームは一般化”したと言っていいでしょう。
任天堂の会長を務めた故山内溥氏も話されていましたが、ゲームは生活必需品ではありません。つまり、本当に苦しくなってくれば家計支出の削減対象にリストアップされやすいという性質もあります。“ゲームの一般化”と言われるほど大きくなったゲーム業界において、ゲームを我慢しようという層がいてもおかしくないのです。
また、グローバルにまたがる垂直統合を推し進めた現在のさまざまな電子機器やソフトウェアは、単に日本のメーカーだからといって円安の恩恵を受けにくくなっています。
ゲーム機やさまざまな関連デバイスは、日本以外のさまざまな国々で組み立て製造され、それらを構成する部品もさらにさまざまな国々のさまざまなメーカーから調達されます。レアアースを使った半導体は世界的な受給商況により高騰し部材確保のための熾烈なパワーゲームが繰り広げられています。工業製品だけではなく、グローバルに分業が進んだソフトの開発も同様です。
ここ数年のポイントを見ると、
(1)戦争やコロナ禍などの国境をまたぐ世相の不安定要素による輸送費の高騰
(2)業界を超えた需要拡大による半導体やバッテリー等の電子関連部品の高騰
(3)為替流動の加速(とくに日本は急激な円安の進行)
これらの理由により、iPhoneの値上げとか有名ですが、実際PS5も値上げされました。
しかし、ゲームというものには強みがあります。改めて、ゲームやゲームマーケットの持つ強みを考えていきましょう。
前述の山内氏は、「娯楽品というのは、生活必需品ではないため、なくても困らない。なくてもいいものに人は我慢しない」と語っています。つまり、生活必需品ではないからこそ分かりやすく楽しくあれと言っていたのですが、そういうゲームの登場があれば、不景気の壁に打ち勝つことができるのでないかと考えています。
1つ目は、「今までにない新しい体験を提供する、分かりやすく楽しいゲーム」の登場でアッという間にシーンは変わるということです。今までもゲーム業界では、あるゲームの登場でシーンが大きく変わる経験をしてきました。
2つ目は「テクノロジーの進化と共に」です。TVゲームから始まる私たちがゲームと呼んでいるものは、テクノロジーの進化と共にマーケットを広げてきました。まだ大きな市場とはなっていませんが、メタバース、Web3、クラウドゲーム、eスポーツ、ARやMR、NFTなど、次世代ゲームを語るキーワードには事欠きません。ブレイクスルーの兆しは至るところにその芽吹きを見せていると言っていいでしょう。
3つ目は、ネットワーク社会において「ゲームを核としたコミュニケーション」こそが最も注目されているということです。
ゲームという共通体験を通したコミュケーションの強さは、さまざまなSNSや動画サイト、ゲーム内でコミュニケーションできる場所等で実証されています。つまり、「今までにない新しい体験を提供する、分かりやすく楽しいゲーム」を「テクノロジーの進化と共に」生み出し、「ゲームを核としたコミュニケーション」でブーストしていくことで、単に節約対象ではない娯楽としてのゲームの可能性を期待できるのです。これができるのが、ゲームの強みと言えるのです。
ゲームマーケットの未来は明るいと思っていていいでしょう。そのための新たなブレイクスルーを業界に期待します。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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