PayPay・LINE・ヤフーが独自マイレージ導入--「同じ商品を買うとマイルが貯まる」の詳細を読み解く

 Zホールディングス傘下のLINE、ヤフー、PayPayは2022年12月13日、オフラインとオンラインを横断したマイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を2023年春より提供することを発表。3社が協力してデジタルマーケティングの取り組みを加速していく方針を発表した。その優位性はどこにあるのか、3社の発表内容から探ってみよう。

同じ商品を購入するとマイルが貯まるお得な施策

 ヤフーとLINEが経営統合して誕生した新しいZホールディングスは、2022年10月にスマートフォン決済大手のPayPayを子会社化。これまで2社が強みを持っていた広告やEコマースに加え、オフラインでの決済も事業領域に加えたことから、3社のリソースを連携してデジタルマーケティングの強化を推し進めている。

 その取り組みの1つとして2022年12月13日に発表したのが、「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」である。これは、3社が持つ「LINE」「Yahoo! Japan」「PayPay」という3つのプラットフォームを活用したデジタル販売促進ソリューションで、商品を購入する消費者と販売する小売店だけでなく、商品を提供するメーカーにもメリットのある内容であることが大きな特徴となっている。

LINEとヤフー、PayPayの3社は2022年12月13日、3社のサービスを活用したデジタル販促ソリューション「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を発表している
LINEとヤフー、PayPayの3社は2022年12月13日、3社のサービスを活用したデジタル販促ソリューション「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を発表している

 その内容を具体的に説明すると、メーカーが対象とした商品を消費者が「Yahoo!ショッピング」、あるいはこのソリューションを導入した店舗でPayPayで購入すると、商品毎に設けられたマイレージが貯まる。そしてマイレージが一定以上に達すると、「PayPayポイント」がもらえたり、同じメーカーの他の商品がもらえたりする。

 さらに、マイレージを多く貯めた消費者に対してLINEで商品をお得に購入できるクーポンを送るなどして、さらなる販売促進につなげることも可能となる。将来的には商品購入時に限らず、例えば飲食店で対象のドリンクを飲んだ時など、消費した時にもマイレージが貯まる仕組みも提供したいとのことだ。

「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」の概要。メーカー指定の商品をオンライン・オフラインで購入してマイレージが貯まるとPayPayポイントなどがもらえるほか、LINEでお得なクーポンなどももらえるようになるとのこと
「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」の概要。メーカー指定の商品をオンライン・オフラインで購入してマイレージが貯まるとPayPayポイントなどがもらえるほか、LINEでお得なクーポンなどももらえるようになる

PayPayが可能にしたオフラインの購買行動把握

 3社がこのソリューションで目指しているのは「LTV」の最大化であるという。

 LTV(Life Time Value)はマーケティング用語の1つで、「顧客生涯価値」、つまり顧客と取引する間にどれくらいの価値をもたらすかを示す言葉だ。3社はこのソリューションで、メーカーの商品を購入する消費者のLTVを最大化を目指すとしているが、要は商品を長く継続的に、たくさん購入してもらう取り組みといえば分かりやすいだろうか。

 そのためには消費者がその商品を、どれだけ継続的に購入しているかを把握してプロモーションしていく必要がある。だが、従来は消費者の購買行動を継続的に追いかける手段が限定されていたため、商品を継続購入してくれる消費者の購買を“もう一押し”する手段が非常に限られていたのも確かだ。

 その最大の理由は、消費者のオフラインでの購買行動を把握するのが非常に難しかったことにある。ヤフーはYahoo!ショッピングを持つことからオンラインの購買行動を継続的に追うことはできたし、LINEも公式アカウントなど、顧客接点を作るCRM(顧客関係管理)関連のツールを豊富に持っているのだが、オフラインの店舗で誰が、どの商品を購入しているかを追いかける術は持ち合わせていなかった。

 しかしながらPayPayがスマートフォン決済で大きなシェアを獲得、広く利用されるようになったことで、PayPayを通じて消費者のオフラインでの購買行動データを継続的に取得できるようになった。それゆえこのソリューションの実現には、PayPayの子会社化が大きく貢献したことは確かだろう。

「Yahoo!ショッピング」でのオンライン購買行動だけでなく、「PayPay」でオフラインでの購買行動を把握できるようになったことが、ソリューションの実現に大きく影響しているようだ
「Yahoo!ショッピング」でのオンライン購買行動だけでなく、「PayPay」でオフラインでの購買行動を把握できるようになったことが、ソリューションの実現に大きく影響しているようだ

 そして3社は、このソリューションによって消費者とメーカー、そして小売店の全てが幸せになる「三方よし」の販売促進を実現したいとしている。中でも最も大きな恩恵を受けるのはメーカーだろう。なぜならこれまで不可能だった顧客の購買を追えるようになり、個々の顧客の購買動向に応じた適切なプロモーションを仕掛けられるようになるからだ。

メーカーは従来困難だった、商品を購入してくれるユーザーの動向を把握し、継続的なプロモーションができるようになる
メーカーは従来困難だった、商品を購入してくれるユーザーの動向を把握し、継続的なプロモーションができるようになる

 消費者のメリットは明確で、マイレージを貯めてポイントなどが獲得できる“お得さ”である。マイレージを貯めてポイントを得る……という仕組みはやや複雑なようにも見えるが、ヤフーで代表取締役社長 社長執行役員 CEOを務める小澤隆生氏は、マイレージはあくまでその商品の購買金額を示すものと説明する。PayPayポイントに類する新しいポイントの仕組みを作った訳ではないという。

 一方、小売店側の導入メリットはやや見出しにくいように見える。この点について小澤氏はマイレージが貯まることを理由に、消費者があえてソリューションの導入店舗を選ぶようになり、売り上げが増えることをメリットとして挙げる。ちなみに、このソリューションは、導入するメーカー側に費用は掛かる一方、小売店側にコスト負担はないとのことだ。

デジタルマーケティング強化に注力の3社、課題は

 なお、3社は先のソリューションの他にも2つ、デジタルマーケティングに向けた新たな取り組みを発表している。その1つは2023年5月の開始を予定している「商品クーポン(仮)」である。

 これはPayPay上で提供されるクーポンなのだが、従来の「PayPayクーポン」はPayPayの加盟店、つまりは小売店が発行するものであったのに対し、商品クーポン(仮)はメーカー側が商品毎に発行するクーポンであるという点に違いがある。PayPayクーポンはPayPay決済取扱高上位100社のうち、既に83社が利用しており、既に1200万のPayPayユーザーが利用しているなど大きな実績を持つことから、その対象をメーカーにも広げる取り組みとなるようだ。

PayPay上で新たに、小売店だけでなくメーカーが特定の商品に対してクーポンを発行できる「商品クーポン(仮)」が提供されるとのこと
PayPay上で新たに、小売店だけでなくメーカーが特定の商品に対してクーポンを発行できる「商品クーポン(仮)」が提供されるとのこと

 そしてもう1つは「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」の設立である。顧客の購買データのリアルタイムの反映を実現するために、店舗のPOSシステムをリアルタイムで連携し、デジタルマーケティングサービスの核となるCRMの高度化などを実現する取り組みとなる。

 それゆえ、同コンソーシアムはLINEとヤフー、PayPayの3社だけでなく、POSシステムに大きく影響する小売店とメーカーの参加も募って取り組む方針とのこと。既にアサヒ飲料やキリンなどのメーカーと、ウエルシアやOKなどの小売店が参画を表明しているそうで、今後も参加企業を増やしていきたいとしている。

新たに設立が打ち出された「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」は、デジタルマーケティング強化に向け店舗のPOSシステムのリアルタイム連携実現に向けた取り組みとなる
新たに設立が打ち出された「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」は、デジタルマーケティング強化に向け店舗のPOSシステムのリアルタイム連携実現に向けた取り組みとなる

 大きな顧客基盤を強みとしたデジタルマーケティングソリューションは、Zホールディングスの実質的な親会社となるソフトバンクをはじめ、携帯4社が強化を図っており競争が激化している。だがZホールディングスは、他社が持たないLINEのコミュニケーション基盤を持ち、スマートフォン決済でも頭1つ抜きんでた存在となったPayPayを持つことからも、その優位性が高いのは確かだ。

 ただ現時点では、Zホールディングスが2023年以降を目指すとしているLINEとYahoo! Japan、PayPayのID・データ連携が実現できておらず、3つのサービス間の連携が途上であることから、ソリューションを完全な形で提供できないなど課題も多く存在する。そうしたグループ内で抱える課題の解決が、この分野での存在感を強める上で非常に重要な要素になってくるだろう。

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