ロボットは未来を担う存在かもしれないが、ロボットアームは、古くから確立され、至る所で使われているバーコードの取り扱いに不得手のようだ。バーコードが見つけにくかったり、いびつな形の商品に貼付されていたりといった問題に、ロボットはうまく対処できない。
そこでAmazonは米国時間12月9日、バーコード廃止に向けた取り組みを明らかにした。
同社は、物流施設内の商品画像を使用してコンピューターモデルをトレーニングすることにより、ベルトコンベアを次々と流れる商品を監視して、それらが画像と一致していることを確認できる、カメラシステムを開発した。AmazonのAI専門家とロボット研究者らは、この技術をロボットと組み合わせることにより、ゆくゆくは商品を取り上げてその向きを変えながら商品を識別できるようにしたいと考えている。
「この問題を解決して、バーコードを探してスキャンする必要なく、ロボットが商品を取り上げて処理できるようにすることが重要だ」と、ベルリンで同社コンピュータービジョングループの応用科学マネージャーを務めるNontas Antonakos氏は述べた。「それによって、荷物を顧客により迅速かつ正確に届けられるようになる」(Antonakos氏)
マルチモーダル識別と呼ばれるそのシステムは、バーコードに完全に置き替わる状態にはまだない。同社によると、現在、スペインのバルセロナとドイツのハンブルクで使用されており、それらの施設では荷物の処理にかかる時間が既に短縮されていると述べている。この技術は、同社のさまざまな事業で共有される予定であるため、Whole Foods Marketや同社が保有する実店舗で、この技術を目にする機会がいつの日か訪れるかもしれない。
同社は、他の製品にもコンピュータービジョンを組み込んでいる。スマートディスプレイ「Echo Show」に「Alexa、私が持っているものは何?」と尋ねると、家の中にある物体の認識を支援してくれる。これは、「Show and Tell」という機能で、視覚に障害がある人を念頭に設計されたものだ。スマートフォンメーカーやソーシャルメディア企業も、人工知能(AI)機能をカメラや写真アプリに組み込んでおり、例えば、写真を自動で分類できる。
このシステムは、ベルトコンベアを流れてきた、注文と異なる商品を顧客に送付してしまうという問題をなくすものだが、そのような問題は頻繁に起きるものではないと同社は述べている。しかし、1つの物流施設で1日にどれほど多くの商品が処理されるかを考えると、めったに起きないミスであっても、積み重なれば深刻な時間ロスにつながる。
同社のAI専門家らは、このプロジェクト以前には存在していなかった、商品画像のライブラリを構築する作業から始める必要があった。それらの画像そのものと商品寸法に関するデータが、アルゴリズムの最初のバージョンへ入力され、カメラは、学習モデルをトレーニングするための新しい商品画像を絶えず撮影する。
このアルゴリズムを最初に使用した時の精度は75~80%で、うれしい驚きだったという。現在の精度はおよそ99%だと、同社は述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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