タクシーアプリ「GO」などを提供するMobility Technologies(MoT)は12月12日、同月からグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みとなる「タクシー産業GXプロジェクト(GXプロジェクト)」を開始すると発表した。
同プロジェクトを通じて日本の運輸領域全体のGXを推進するとともに、街中の風景の一つであるタクシーのEV車両化により、社会全体のカーボンニュートラルへの意識向上を促進するという。
GXプロジェクトでは、全国約100社のタクシー事業者やパートナー企業が参画し、2027年までに年間CO2排出量3万トンの削減を目指す。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティー社会の構築(GI基金)」による支援を含み、最大280億円規模の取り組みとなる予定だ。
GXプロジェクトの主な取り組み内容は3つ。1つ目はエネルギーマネジメントシステムの構築だ。
エリア特性に応じた運行距離やタクシーの乗務実務の実態などを考慮した上で、運行効率を損なわない充電計画を生成するAIシステムを開発、検証する。タクシー乗務員の休憩時間が限られていること、電力代が高い時間帯があることなども考慮し、EV運行マネジメントとエネルギーマネジメントに最適なシステムの開発、提供に最長2031年まで取り組むという。
また、東京電力ホールディングスと協働し、EVタクシーが導入される営業所の脱炭素化などを実施する。加えて、充電器や蓄電器などの設備故障、不具合で運行できなくなるなどのリスクを補償すべく、あいおいニッセイ同和損害保険と企画開発した新保険メニューを用意。MoTが保険の代理店を務めるという。
取り組みの2つ目として、タクシー事業者へEV車両と充電機器を提供する。12月時点でプロジェクトへ参画表明しているGO加盟事業者に向け、トヨタ自動車「bZ4X」、日産自動車「リーフ」「アリア」などを2031年までに最大2500台リースする。GI基金により1車両あたり最大3分の2の費用を助成する見込みで、車種は拡大する予定だ。
急速充電器400台と普通充電器2500台、計最大2900台も各営業所へ提供、設置する。GI基金などの活用で設置に伴う事業者の実質負担はないが、事業者は充電量に応じたチャージサービス料をMoTに支払う形になるという。
3つ目として、CO2削減量を見える化する。GOの法人向けサービス「GO BUSINESS」の管理画面で、EVタクシー車両利用による1台あたりのCO2排出量を表示し、CO2削減量を見える化する。将来的にはGOの一般ユーザー向けアプリ画面でも同様に表示する予定だという。
Mobility Technologies 代表取締役社長 中島宏氏は、「日本のタクシー産業における課題は、燃料費が異常に高騰していることと、EV車両の普及率の低さ」と指摘し、今回の取り組みで解決を図る課題を語る。
また、町中のタクシーをEV化することによる社会的なインパクトも見込むという。「頻繁に目にするものや日常的に使うもの、そういったものが脱酸素化する。それは間違いなく人々の意識を変える。この取り組みは日本の脱炭素化の大きなきっかけに、必ずなる」(中島氏)
発表会には多くの業界関係者や来賓が詰めかけた。元環境大臣で衆議院議員の小泉進次郎氏は、「仮に自分自身がEVを保有していなくても、タクシーでEVに乗ることで(EVに乗車する)体験が広がる。誰もがEVに乗ったことがあるというそのスタートが結果として、日本の自動車業界の電動化の加速を生み出していく」と期待を寄せた。
また、元環境大臣で参議院議員の丸川珠代氏は、「(今回の取り組みで)効率的な運用ができるだけでなく、グリーンなタクシーへの乗車を通じて社会に貢献できる。素晴らしいイノベーションになる」と語った。
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