KDDIスマートドローン「2つの新施策」発表--有人地帯での自律飛行「レベル4」解禁で

 12月5日、無人航空機の新制度がスタートし「レベル4」飛行が解禁となった。同日午後、KDDIスマートドローンは、ドローン事業に関する説明会をオンラインで開催。「衛星ブロードバンド通信Starlinkの活用」と「KDDIドローンアカデミー開校」という2つの新施策を発表した。


KDDIスマートドローン 代表取締役社長 博野雅文氏

ますます広がるドローンの可能性

 KDDIスマートドローンで代表取締役社長を務める博野雅文氏は最初に、「KDDIグループ新中期経営戦略」におけるドローンの位置付けを説明した。KDDIグループは、「サステナビリティ経営」を掲げ、「サテライトグロース戦略」を目指す。事業における注力領域は「DX」「金融」「エネルギー」などで、「モビリティ」「宇宙」などは、次の注力領域だという。そのうえで、博野氏は「ドローンは、DX、モビリティの一翼を担う」と説明した。


事業における注力領域は、右図で示された内側の輪にある「DX」「金融」「エネルギー」。外側の輪にある「モビリティ」「宇宙」などは、次の注力領域になるという

 では、どのような分野でドローンの活用が広がるのか。博野氏は、「物流」「監視」「点検」「測量」の4つを挙げた。インプレス総合研究所の予測によると、国内ドローン市場規模は5年後の2027年には2.5倍に成長する見込みだ。その追い風になるのが同日スタートした新制度と、これに伴い解禁となった「レベル4」飛行だという。

 新制度のポイントは、「目視外飛行」の普及が進むことだ。博野氏は、レベル1〜4の飛行について概要を説明したうえで、新制度によって何がどう変わるのかを整理した。


 無人地帯における自律飛行「レベル3」は、第二種機体認証と二等技能者証明を有する場合に個別の許可承認が一部不要になる。有人地帯における自律飛行「レベル4」は、第一種機体認証と一等操縦者技能証明を有する場合に個別の許可承認を取得すれば飛行可能になる。


 このため今後は、レベル3は実証から実装へ、これまで全面禁止だったレベル4は実証段階へと、ステージが上がるという。


 具体的には、「長距離飛行が必要になる山間部や島しょ地域でのドローン配送」「飛行中に機体が建物に隠れるなど複雑な構造物での自動飛行点検や少人数での点検」「現地に人を派遣しないで遠隔での点検や監視」が進むという。

 こうした未来を見据えて同社では、遠隔制御と自律飛行を可能にするシステムの構築や、さまざまな用途でのオペレーション技能の蓄積につとめてきた。

 例えば、ドローン配送では、国産ドローンメーカーのACSL、ドローンスタートアップのエアロネクストと、3社で「AirTruckStarterPack」を共同開発して、ドローンと陸路と組み合わせた配送モデル「SkyHub」との連携を図っている。10月にサービス開始した福井県敦賀市のほか、2022年度中に14自治体での導入を目指しているという。


 遠隔監視では、ドローンの自動充電が可能なポートと機体がセットになった「G6.0&NEST」を、モバイル通信を用いた運航管理システムで遠隔制御して、飛島建設が手がける建設現場において、空撮、画像解析、3Dモデリング化などを遠隔で行う実証を実施した。建設現場は技術を継承する人材不足や、働き方改革を進める必要性の高まりからも、遠隔での警備や点検に対する需要は高いという。


 また、ドローン活用を社会実装するためには、ビジネスとしての収益性、経済性の向上は不可欠だが、コストダウンの鍵を握るのが1対多運航だという。博野氏は、業務提携したJALと奄美群島において、複数台のドローンを1人で運航管理する実証も行っていると話した。


システムとオペレーション「両輪」強化へ

 このようななか、KDDIスマートドローンは、新たに2つの施策を発表した。博野氏は、「従来取り組んできた、システムとオペレーションの両輪をさらに強化する」と話した。システム構築の観点では「インフラ基盤の強化」に、オペレーション技能の観点では「人材育成」に取り組んでいくという。


 1つ目の「インフラ基盤の強化」では、衛星ブロードバンド「Starlink」の活用を進める。ドローンの活用が進む山間部や離島などでは、モバイル通信がつながりにくいエリアがある。au基地局のバックホール回線に、3000強の衛星群を持つ衛星ブロードバンドStarlinkを活用することで、大幅な低遅延や高速大容量が実現するという。例えば、集落内ではモバイル通信を使えるが近隣エリアとの接続が弱いところや、通信環境がないエリアで災害が起きた場合など、想定シーンは幅広い。



 同社はStarlink活用の第一弾の取り組みとして、大林組との協業を発表した。Starlinkを活用し、ダム建設現場をモバイルエリア化して、そこに充電ポート付きドローンを設置。遠隔自律飛行で画像や映像を撮影して、クラウド経由でデータを取得、点群化やオルソ化、差分検知まで遠隔で行う。国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム「PRISM(プリズム)」にて実施するという。


 なお、ソリューション提供は、用途や基地局を設置する場所などによって個別対応となるため、工期や料金は都度見積もりとなる。


 2つ目の「人材育成」では、KDDIスマートドローンアカデミーを開校予定だ。「国家資格取得コース」と「領域専門コース」を設置する。国家資格取得コースは、直営スクールの登録講習機関の登録申請が完了し次第、受付を開始する。直営スクールは、栃木県小山市にあるネットワークセンターを活用するほか、千葉県君津市にも設置を検討中とのことだ。

 「領域専門コース」は、これまで同社がドローンサービス提供で培ってきたノウハウを活かして、2023年1月から提供する予定。提供は直営スクールのほか、パートナースクール約10校とも協議中で、同校独自の認定コースの全国展開も見込むという。修了生が実際に業務を受託できるレベルを目指す。


 最後に博野氏は、レベル4飛行を見据えたつくば市や東京都での取り組みも紹介した。つくばスーパーシティ調査事業では、PCR検査の検体配送や、自動運転車両とコラボレーションしたフードデリバリ、東京都のドローン物流サービスの社会実装を目指すプロジェクトでは医薬品配送に取り組むという。博野氏は今日も、「ドローンはあくまで手段」と繰り返した。叶えるためにドローンを使って何ができるかを、今後も社内一丸となって考え続け、取り組んでいきたいと話した。

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