トレーディングカードの人気が再燃--取引サイトを支えるテクノロジーとは - (page 2)

Stephanie Condon (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2022年12月01日 07時30分

 鑑定されたトレーディングカードは、6面すべてを約28cmのコンクリートで囲まれた約186平方mの保管庫に格納される。この保管庫は、重さ約3.4トンの分厚い2重の扉で厳重に守られており、内部は140台のセキュリティカメラでくまなく監視されている。この他、動体検知センサーも配備され、営業時間中は警備員も立つ。カードの状態を維持するため、保管庫の温度や湿度、照明も細心の注意を払って管理されている。保管庫に入れるのは同社の一部の従業員だけだが、保管庫の利用者は自分のアイテムの高画質画像をオンラインでいつでも閲覧できる。

PWCCの保管庫
PWCCの保管庫は3.4トンの二重扉で守られている
提供:ZDNET / Stephanie Condon

 この物理的な保管庫は、同社のエコシステムの心臓部であると同時に、デジタル時代にふさわしいトレーディングカードプラットフォームの構築を可能にした。すべてのアイテムを物理的に1カ所に集めることで、同社はスピーディな取引に対応できる、安定したプラットフォームを実現しただけでなく、顧客の資産の価値を活用した現代的な金融サービスも提供できるようになった。

 「顧客の資産をデジタルアーカイブ化する上でも、資産の流動性を高める上でも、保管庫は中心的な役割を果たしている」とCraig氏は言う。

 同社は保管庫の利用を促進するために、250ドル(約3万5000円)以上のトレーディングカードや、プラットフォームを通じて購入した資産は無料で保管サービスを利用できるようにした。それ以外のアイテムについては、わずかな手数料を単発で徴収している。

 カードのトレーディングは昔からある趣味だが、多くの顧客が同社のデジタルな手法を受け入れた。実際、この保管庫に格納されている資産の約8割は一度も持ち出されていない。売買はデジタルプラットフォーム上で行われるが、カードの現物は保管庫に安全に保管されたままだ。

 「長期にわたってカードを常に手元に置いておきたいコレクターには、保管庫は向いていない」と同氏も認める。「しかし、自分のコレクションを毎日どころか、週に一度、月に一度も見ない人、クローゼットや貸金庫に眠らせたままの人も大勢いる。保管庫の良い点は、預けさえすればデジタルアーカイブ化され、安全に保管され、保険もかけられることだ。しかもPWCCのアカウントにログインすれば、世界のどこからでも自分のコレクションを見ることができる」

 このように売買はしても一度も実物を手にする機会のないトレーディングカードは、NFTと「それほど違わない」と同氏は言う。つまり、デジタルアーカイブサービスを始めた2019年以来、同社は(ブロックチェーンとつながってはいないにせよ)独自のNFTを生み出し続けているのだ。

 ただし、「デジタル化されたイメージの背後には、物理的な資産が存在する」と、Craig氏は指摘する。

 トレーディングカード市場とNFT市場には確かに共通点もあるが、トレーディングカードの方が価格の変動は少ないと同氏は言う。トレーディングカードの方が所有者の思い入れが強いからだ。

 トレーディングカードは、いわば虎の子の資産だと同氏は言う。「インフレの時期は現金が必要になるので、多くの人が資産を処分したり、売却したりする。しかしトレーディングカード市場は他の市場と比べて、そうしたことが起こりにくい。資産に愛着を持っている人が多いからだ」

 同氏は、これを裏付けるデータをいくつか挙げた。例えば2008年に起きたサブプライム住宅ローン危機の際には、S&P500指数が最高値から50%以上下落したが、トレーディングカードは10%程度の値下がりにとどまった。

 同社は、鑑定書付きのトレーディングカードがいかに高い投資利益率をあげているかを示すために、S&P500と比較した市場指数を作成し、ウェブサイトで公開している。

 売買対象となるアイテムも拡大中だ。最近はコミックやビデオゲーム、各種記念品(バスケットボールの有名選手、例えばMichael Jordanさんのサイン入りシューズやLeBron Jamesさんが着用したジャージなど)も扱う。業務拡大のため、最近新たに約4.7平方kmの施設を確保した。収集品の博物館を建設する計画もあるという。

記念品のシューズ
提供:ZDNET / S提供:ZDNET / Stephanie Condontephanie Condon

 「若い世代は自分が理解できるものにしか金を使わない」と同氏は言う。「Marvelの映画は今も製作されているので、コミックの価値は非常に高い。コインにはクールでユニークな歴史がある。ほとんどの人が一度はビデオゲームで遊んだ経験があるだろう。われわれのビジネスを動かしているのは、こうした資産と人々との感情的なつながりなのだ」

 

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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