クアルコムが米国時間の11月15日から3日間にわたり開催したテクノロジーカンファレンス「Snapdragon Summit」。ここでは、2022年末から2023年にかけてのハイエンドAndroidスマートフォンに採用されるSoC(システム・オン・チップ)である「Snapdragon 8 Gen2」が発表された。
このSnapdragon 8 Gen2の進化軸の1つとして打ち出されたのが、イメージセンサーを開発するソニーセミコンダクタソリューションズ(ソニー)との協業だ。クアルコムとソニーは2021年に、スマートフォンのイメージングに関するジョイントラボを設立した。その研究成果がSnapdragon 8 Gen2に搭載されたのだ。
具体的には、ソニーが「Lytia」ブランドとして発表した新型センサー「IMX800」「IMX989」において、Snapdragon 8 Gen2に最適化した機能が搭載された。
その1つが「QDOL4」(Quad Digital OverLap 4)と呼ばれるHDR機能だ。従来のHDRは時間軸をずらして露出を変えた2枚のフレームを合成しHDRを生成していた。しかし、QDOL4では倍となる4枚のフレームを合成してHDRを生成する。これによって、従来の2つのフレームからHDRを生成する場合に比べて、ノイズレベルを大きく抑えられるという。
また、カメラ使用中に、トリプルカメラの全てを超低消費電力で常時稼働できるようになった。例えば、広角カメラで撮影中にも、超広角カメラと望遠カメラで毎秒3フレームずつ、消費電力を抑えながら露出やホワイトバランスの情報を常時取得できるようになった。これによって、カメラを切り替えた際の露出やホワイトバランスの暴れを抑えることができるという。
これらは、イメージセンサー単体ではなく、クアルコムのSnapdragon 8 Gen2と密に連携することで、実現できた機能だという。
これまでスマートフォンカメラの進化は、AI処理の導入に加えて、イメージセンサーの大型化が牽引してきた。しかし、ソニーセミコンダクタソリューションズ(ソニー)でモバイルシステム事業部副事業部長を務める御厨道樹氏によると、イメージセンサーの大型化は向こう数年は1インチで頭打ちであるとの見方を示す。そうした中で、イメージセンサーの進化においてSoCとの連携が重要になっていくという。
また、イメージセンサーは22nmプロセスで製造されているが、SoCは最先端のものは4nmプロセスが主流だ。イメージセンサーにもAIエンジンが組み込まれているが、そうした処理はより微細なプロセスであるSoCに担わせたほうが効率がいい。
さらに、クアルコムとの協業によって、ソニーが実現したいイメージセンサーの機能を、確実に顧客に届けられる点もメリットだという。クアルコムが開発するSnapdragonシリーズはAndroidスマートフォンの多くに搭載されており、クアルコムと協業するメリットは大きい。
なお、クアルコムによると、SoCとの協業はソニーに限ったものではない。サムスンやメディアテックとの協業も開始しているという。イメージセンサーの開発にあたって、各社のSoCに最適化する形での進化が始まったのだと言える。
(取材協力:クアルコム)
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