しかもこの話は、iPhoneに限ったことではない。Googleのフラッグシップモデル「Pixel 7」でも、1台当たりのCO2排出量のおよそ84%がライフサイクルの製造段階で発生している。環境保護団体のGreenpeaceが指摘しているように、「スマートフォンで群を抜いて多くの炭素を排出するのがデバイスの製造段階であることが、さまざまなライフサイクル分析から判明している」
「スマートフォンのCO2排出量のほぼすべてが製造工程で排出されるのだから、スマートフォンのカーボンフットプリントを削減できる可能性がある唯一最大の要素は、期待される製品寿命を延ばすことだ」と、会計事務所のDeloitte Touche Tohmatsuは2021年に公開したレポートで述べている。
国際エネルギー機関は2021年に公開したレポートで、レアアースやその他のいわゆる「グリーンメタル」(リチウム、銅、コバルトなど、ライフサイクルにおける炭素発生量がきわめて少ない金属)の供給が大幅に増えない限り、世界は気候危機と戦えないとの見通しを示している。このような金属は、電気自動車や風力タービンなどクリーンなエネルギーへの移行に必要となる製品をはじめ、気候危機対策に重要な役割を果たすことが期待されているテクノロジーに欠かせないものだ。世界中の国々が気候変動に関する目標の達成を目指してグリーンエネルギーへの移行を進めているため、こうした元素に対する需要は急増していると、先の報告書は指摘している。
「リチウムやレアアースは、近いうちに石油やガスより重要なものになるだろう」と、欧州委員会で域内市場を担当するThierry Breton氏は9月に投稿したLinkedinの記事で述べている。
レアアースはその呼び名が示すほど希少ではないが、抽出、加工、精製し、利用可能な状態にするには、さまざまな環境問題が伴う。世界に供給されるレアアースの大部分を生産している中国は、水と土壌の有害物質汚染など、憂慮すべき環境問題に見舞われている。
このようにさまざまな問題があるにもかかわらず、スマートフォンに使用されている原材料の大半は、Appleなどの企業による下取りプログラムをもってしても、スマートフォンの寿命が尽きた時にリサイクルされることはない。専門家によれば、電子廃棄物のリサイクルにより、スマートフォンなどの家電製品に使用されているグリーンメタルは、製品が寿命を迎えてようやく回収できる。
「われわれは、スマートフォンを長く所有し(需要の削減)、壊れたら修理し(修理)、新しいスマートフォンが必要なときは他の人に古い物を譲り(再利用)、どうやっても使えなくなったらエシカルなリサイクルを手掛けている企業に渡す(リサイクル)ことを提案している」と、Cole-Hamilton氏は言う。
「こうすることで、スマートフォンの循環型経済を実現できる」(同氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
トラディショナルからモダンへ進化するBI
未来への挑戦の成功はデータとともにある