続いて登壇したゆうぼくは、畜産業においてテクノロジーを活用し、「カッコよく、魅力のある農業」を目指しているという愛媛県の企業。「はなが牛」や「はなが豚」という自社ブランドとともに、牛肉・豚肉の加工・販売、飲食事業を展開している。同社では餌に一般的に使われる配合飼料ではなく、トウモロコシ、大豆などの素材を個別に仕入れて独自配合し、抗生物質も不使用とすることで、安心・安全や品質を追求。さらにその餌の原料には地元産のものを使用すると同時に、家畜から排出される堆肥は地元農家に販売するなど、SDGsも意識した地域循環型農業を実践しているという。
同社もやはり、生産管理などにおいてICTシステムを駆使している。サイボウズの業務システムプラットフォーム「kintone」を中心に、データベースやオンラインストレージ、POSレジシステム、コミュニケーションツールを組み合わせ、さらにIoT技術を搭載した各種センサーも活用。牛や豚の個体管理、観察記録、繁殖管理をデジタルで行い、全頭のデータを把握するのはもちろんのこと、売上・収益分析もデジタル化し、業務の改善・効率化を図っている。
そして、伝統的な養殖業に新たな価値を見い出し愛媛県で事業をゼロから立ち上げたのが、ユナイテッドシルクだ。同社代表の河合氏は、2025~2030年に世界的なたんぱく質不足が起こると予測されているなかで、食肉中心のたんぱく源の代替として「カイコ」と「シルク」に着目し、その生産拠点を愛媛県内に2箇所設立した。
カイコは牛、豚、鶏のような家畜よりも低コスト、低環境負荷で育成でき、生産面においてメリットが多い。それでいてカイコそのものやそこから生まれるシルクは、食肉と比較しても高タンパクで、必須アミノ酸も豊富に含まれている。しかも大量飼育法もすでに確立されており、同氏によると高効率なスマート養蚕システムによって、従来型の手法と比べ単位面積当たりの飼育数が12倍に向上し、労働時間は1kgあたり3分の1に短縮できているという。
生産したカイコやシルクからは独自技術でたんぱく質を抽出し、加工することで食品原料になる。サプリメント、代替肉、パン・菓子類などの加工食品にも利用可能だ。「原料調達と加工の事業フェーズは完了し、現在は商品開発フェーズへと移行している」とし、食の分野から将来的にはパートナー企業とともに美容・健康分野、医療・バイオ分野にも手を広げ、2030年には約3兆円規模に成長すると見込まれる代替たんぱく質市場において存在感を示していきたい考えだ。
宮本氏は、会社員をしていたところから家業を継ぐ形でミヤモトオレンジガーデンを設立。ゆうぼく 代表取締役の岡崎晋也氏は大手化学メーカーのシステムエンジニアだったが、同じく家業を引き継いだ。ユナイテッドシルクの河合氏は愛媛とは無縁だったものの、国内の一大シルク産地として養蚕に関わる一連の技術をもつ愛媛の魅力に惹かれ会社設立し、県内に本社を構えた。
3者とも愛媛で事業を始めた理由は少しずつ異なるが、それぞれに新たな取り組みを広げていくにあたり、EFIコンソーシアムが立ち上がったことが少なからず力になっている。たとえば宮本氏は「地方では目先の自分の商売に目線がいってしまうが、多くの人と情報共有できることで、より広い視野でもっと先のことを考えていけるようになる」といった利点を挙げる。さらに「GAPにしても、六次産業化にしても、地元の高校や大学と愛媛県を通じて共同で事業ができるのは大きい」とも付け加える。河合氏もEFIコンソーシアムに加盟することで横のつながりができ、「産官学連携の機会も得られたのはありがたい」と話す。
一方で岡崎氏は、愛媛で生まれ、家業を継ぐために戻ってきたとき、愛媛県の「コンテンツ力」の強さを改めて感じたという。「愛媛にしかないものを組み合わせればすごく可能性がある」と思っていた同氏だが、しばらくは「それらをなかなか融合できない」状況に頭を悩ませていたとのこと。しかし、EFIコンソーシアムによって「ネットワークがつながりはじめ、情報の流れが早くなってきたことで、そのコンテンツが活かされる環境ができあがってきた」と実感している。
地方にいるとチャンスは限られ、他の業界とつながりを作りにくかったり、アイデアがあってもそれを相談する機会が少なかったりする。今回登壇した3社は、そうした課題を解決するきっかけ作りの場として、EFIコンソーシアムが大きな役割を果たしていると感じているようだ。しかしそうした環境があっても、岡崎氏いわく「旧態依然としたところも多い」産業で新しいことを始めるには壁もある。そこで一番大事なのは「勇気」と同氏。「いろいろな批判、失敗はつきものだが、誰もしていないからやらないじゃなく、誰もやっていないなら自分でやってやろう」という気持ちを持つべきだと語った。
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