AI警備システムや行動認識AIソリューションなどを手掛けるアジラは11月15日、AI警備システム「アジラ」を、三菱地所の新丸の内ビルディングに納入したと発表した。それに伴い、新たな事業展開についての記者発表会を開催。行動認識AI技術のデモンストレーションなども実施した。
アジラは2015年に設立。10月末にシリーズBの資金調達をクローズしており、「スタートアップにとって冬の時代とも言われる中、各社から支援いただいている」(アジラ 代表取締役の木村大介氏)とコメントした。現在、東京都町田市に本社を構えるほか、ビジネス拠点となる神田オフィスと、ベトナムのハノイに開発拠点を設ける。
アジラは、既存のカメラシステムをAI化できる施設向けAI警備システム。既設のカメラとアジラのサーバーを組み合わせて使用できる。カメラ映像の中から、転倒、卒倒、ケンカ、破壊行動などの異常行動や千鳥足、ふらつき、違和感行動といった不審行動を検出したときのみ、瞬時に映像を通知できることが特徴で、映像を監視する警備員の業務を軽減でき、見逃しや見落しをなくせる。
「ポイントは既存の監視カメラに追加することで、警備システムをAI化できること。『AIの目』を使うことで、瞬きすらせず、カメラという数百の目で24時間、365日あらゆるところをモニタリングできる」(木村氏)とアジラのメリットを話す。
デモンストレーションでは、喧嘩、転倒の2つのシチュエーションを披露。喧嘩の場面を捉えると、ポップアップ画面があらわれ、アラート音が鳴るほか、ランプが光る。その後画面は左側に何かが起きた時の映像、右にはリアルタイムの映像が映され、過去の状況が1画面内で確認可能だ。巡回中など画面が見られなかったり、音や光でのお知らせが届かない場所でもメールアドレスを登録しておけば、検知結果をメールで知らせる機能も搭載する。
また、転倒時では、単なるつまずきなど、危険性が少ないものは検知せず、倒れて動かない状態を識別してアラートをあげているとのこと。「本当に必要な情報だけを適切に届けることで、警備業務の効率化を目指す」(アジラ 執行役員CTOの若狭政啓氏)とする。
今後については、新たな機能のリリースも考えているとのこと。発表会では、複数のカメラ間での人物同定が可能なシステム「マルチカメラトラッキング」と、商業施設で入店から購買までの行動を把握する「動線分析」の2つを紹介した。
マルチカメラトラッキングは、カメラに映る人物の特徴をAIが自動分析し、カメラ間をまたいで人の特徴をもとに同定する機能。「迷子や徘徊者を探すのに役立てられる。いついなくなって、どういう場所に行ったのか軌跡を辿れるため、見つけ出すまでの時間短縮ができる」(若狭氏)とメリットを話す。
一方、動線分析では「現在の商業施設ではお客様がどういうルートをたどるのか統計的な情報がとれないが、動線分析により、統計的データが取得できれば、店舗内のレイアウト配置などを最適化できる。コロナ禍で一般化した密の解消に役立つ」(若狭氏)とする。これらの技術は、東京工業大学 情報理工学院教授の篠田浩一氏とともに共同で開発しているという。
1端末でカメラ50台まで処理ができ、月額20万円で利用が可能。初期費用はかからない。新丸の内ビルディングのほか、すでに「阪急西宮ガーデンズ」(阪急阪神不動産)、「町田GIONスタジアム」(町田市、ゼルビア)など20以上の施設に導入されているとのこと。木村氏は「マルチカメラトラッキングなどの新機能は子どもの置き去りや失踪などに対し活用でき、ソリューションになり得る。こうした機能を追加し、社会課題に対応していきたい」と今後について話した。
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