パナソニックHD、ガラスのリサイクル大幅促進へ--レーザー活用し、ガラス板のみを分離

 パナソニックホールディングスは、ガラス扉搭載冷蔵庫のガラス扉から、ガラス板をレーザー光で剥離する工法を新たに開発した。これにより、ガラスのリサイクルが大幅に促進されることになるという。

ガラス扉冷蔵庫
ガラス扉冷蔵庫

 家電メーカー各社は、2008年以降、冷蔵庫の扉部分にガラスを採用した製品を発売。デザイン性が高く、高級感があること、ドア素材が変形しにくく、傷がつかないこと、日常の手入れがしやすいなどの特徴が受けており、現在、大型冷蔵庫の約半数にガラス扉が採用されているという。

 だが、冷蔵庫のガラス扉は、ガラスとその他の素材との分別処理が難しいことから、リサイクル施設に持ち込まれても、現状では、大部分がそのまま破砕され、リサイクルされることなく、産業廃棄物として処理されている。

 パナソニックホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部マニュファクチャリングソリューションセンター環境システム技術部資源循環技術課主任技師の天野智貴氏は、「ガラス板が扉と強力に接着されているため、容易に取り外すことが困難であり、そのため、未処理のまま破砕し、廃棄物として処分しているのが現状である。現時点では、ガラス扉搭載冷蔵庫のリサイクルプラントへの入荷台数はまだ少ないが、今後、リサイクルされる量が増加するのは明らかである。もともと冷蔵庫は、金属や樹脂のほかに、リサイクルが難しい断熱材が多いため、他の家電製品に比べてリサイクル率が低い状況にあった。今後、買い替え時期を迎えるガラス扉搭載冷蔵庫が大量に排出されれば、さらにリサイクル率が悪化することが想定される。ガラス扉の処理問題を解決することが喫緊の課題であった」とする。

パナソニックホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部マニュファクチャリングソリューションセンター環境システム技術部資源循環技術課主任技師の天野智貴氏
パナソニックホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部マニュファクチャリングソリューションセンター環境システム技術部資源循環技術課主任技師の天野智貴氏

 ガラスを取り外す時には、わずかな亀裂でガラス全体が粉砕してしまうこと、ガラスに貼り付けられているフィルム樹脂やウレタン、テープが取りづらいこと、有機塗料とガラス板との分離がほぼできないという課題があるため、未処理のまま廃棄物として処分することになっていたという。ガラスの引き取り価格が安価であるという点も後回しにされる理由のひとつになっていた。

 パナソニックグループでは、2019年から、ガラス扉搭載冷蔵庫からガラス板を分離することで、ガラスのリサイクルを可能にする工法の開発を進めてきた。このほど、扉のガラスを透過するレーザー光を用いて、ガラス裏面の有機塗料を炭化させて、接着部を不活性化。ガラス扉搭載冷蔵庫からガラス板のみを剥離できる「レーザー剥離工法」の開発に成功した。基本特許は出願しているところだという。

レーザー光照射の様子
レーザー光照射の様子

 「物理的な力で剥がしても、接着部分がきれいには取れない。そこで、有機塗料を加熱することで剥離することが最適だと考え、レーザーが効果的であることに着目した。ガラスを透過する波長のレーザーを照射し、その下にある数ミクロンから数100ミクロンの厚さの有機塗料を炭化させることで、ガラス面を吸着パッドを使って持ち上げれば剥離できるようになる。ガラス板の表面には有機塗料の炭化物だけが残る状態になる」という。

吸着パットで剥離可能
吸着パットで剥離可能
剥離したガラス板と扉本体
剥離したガラス板と扉本体

 1064nmのパルスレーザーを用い、出力は200Wとなっている。冷蔵庫1台あたり2分弱で剥離することができ、エネルギー負担は少ないとしている。

 これにより、冷蔵庫の扉を外さずに、ガラス板のみを選択的に剥離でき、樹脂やウレタンなどとの分別処理が容易なように、ガラスの単一素材化を実現。さまざまなサイズのガラスに対応が可能であり、簡便な工程として量産設備を導入できる。剥離したガラスは板状であり、付着した炭化物は容易に除去することができるため、ガラスの再利用拡大にもつながるという。また、ガラスの裏に配置されていた基板なども取り出すことが容易になるというメリットもある。

 今後は、実証実験を経て、リサイクルプラントへの導入に向けた量産設備の検証を行うことになる。2023年度には、パナソニックグループのリサイクル拠点への導入を計画しており、社外のリサイクル施設への提案も行う考えだ。また、冷蔵庫以外にも、ガラストップが採用されている洗濯機などの家電製品や、スマホの画面に採用されているガラスの剥離などにも同技術を活用していくことになるという。

 パナソニックグループでは、Panasonic GREEN IMPACT(PGI)を掲げ、2050年に向けて、全世界CO2総排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指している。その一環としてサーキュラーエコノミーの取り組みを推進。自社の事業に伴うCO2排出量の削減と、社会におけるCO2排出量の削減に対する貢献などに取り組んでいる。

 今回の取り組みは、廃棄物ゼロを実現するための技術として、パナソニックホールディングスのマニュファクチャリングイノベーション本部が開発に取り組んできたもので、パナソニックホールディングス傘下の事業会社において、循環型モノづくりをさらに進化させる技術として活用することになる。

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