Twitter買収、イーロン・マスク氏がもたらす変化を予想する

Queenie Wong (CNET News) 翻訳校正: 矢倉美登里 高橋朋子 佐藤卓 吉武稔夫 (ガリレオ) 編集部2022年11月01日 12時30分

 富豪のElon Musk氏は、Twitterについて大胆な構想を抱いている。そして今、それらを本当に実現する必要に迫られている。

Elon Musk氏
提供:Getty Images

 Musk氏は米国時間10月27日遅く、Twitterを440億ドル(約6兆5000億円)で買収する手続きを完了し、同社の大規模な変革の準備を整えた。最初の仕事は、最高経営責任者(CEO)のParag Agrawal氏ら主要幹部の解雇だ。

 Musk氏によるTwitter買収は、同氏が履行について何度も考えを変えたことで、混沌とした過程をたどった。同氏はこれまで部外者の立場から、Twitterの将来に対する自身の崇高なビジョンを声高に語ってきた。そして、内部の人間となった今、Twitterに関するその途方もない野望を現実のものとするか、あるいは再び方針を変えるかの選択を迫られている。

 一般のユーザーにとって、それは、かつて知っていたTwitterが過去のものになる可能性があることを意味する。いまだインターネットで特に影響力のある場所の1つであるTwitterは、決済などの機能を追加することで、単なるソーシャルメディアプラットフォームの枠を超えた進化を遂げる可能性もある。コンテンツモデレーションがこれまでより甘くなり、ユーザーが嫌がらせやヘイトスピーチ、その他の悪用に対処するのが困難になる恐れもある。

 すでにMusk氏は、スパムボットを撲滅する、Twitterを「WeChat」に似た「万能アプリ」に変身させる、ユーザー数を10億人に増やすなど、さまざまな野望を口にしている。2022年半ばの時点で、Twitterのデイリーユーザーは2億3800万人ほどだった。これに対し、「Facebook」のユーザーは20億人に迫っている。

 Musk氏の提案で最も議論を呼んだものの1つは、Donald Trump前米大統領のアカウント永久停止措置の撤回だ。この措置がとられたのは、2021年1月6日に米連邦議会議事堂が襲撃され、死者が出る事件が起きた2日後のことだ。Twitterは当時、Trump氏のツイートがさらなる暴力を煽動する危険があると警告していた。

 とはいえ、Twitterの買収が現実になる以前から、Musk氏のアイデアは終始一貫していたわけではない。

 Musk氏は一時期、Twitterにブロックチェーン技術を取り入れることを提案したり、Twitterの本社をホームレスのシェルターにするアイデアを打ち出したりしていた。また4月には、月額4.99ドル(約740円)のサブスクリプションサービス「Twitter Blue」の加入者に対して、広告を一切表示せず、認証バッジを自動的に付与し、仮想通貨の「ドージコイン(Dogecoin)」で支払いができるようにすることを提案したツイートを削除している。

 さらにMusk氏は、「広告は嫌いだ」と公言していたかつての態度を翻し、「広告は、正しく実行されれば、人々に喜びや楽しみ、情報をもたらす」とマーケターに呼びかけるツイートを10月27日に投稿した。

 しかし、「Twitterの広告ビジネスはすでに不安定になっている」と、Insider Intelligenceの主席アナリストJasmine Enberg氏は指摘する。「景気後退とMusk氏の一貫性のない行動による不透明感が、広告主の撤退を引き起こしている」

 Musk氏がTwitterに対して強く求め続けている3つの変革と、それがユーザーにとってどのようなものになる可能性があるかを、以下に示す。

「万能アプリ」

 Twitterは、単なる意見の共有にとどまらないもので知られるプラットフォームになる可能性がある。Twitterは、ショッピングや投げ銭のような機能をより多く取り込もうとしてきたが、この数年大きな変化は見られない。

 Musk氏は、決済やゲーム、ショッピングなどさまざまなことができる中国のメッセージングアプリ、WeChatに似たサービスを生み出したいと述べたことがある。同氏は、Twitterの所有をこうした大きなビジョンの一部と見なしている。

 10月には、「Twitter買収は、万能アプリ『X』の構築を加速させる」とツイートしていた。

 われわれは将来、議論やミームのためだけでなく、フードデリバリーや金銭のやり取りのためにTwitterアプリを使うことになるのかもしれない。

新しい決済方法

Twitterのロゴ
提供:James Martin/CNET

 Musk氏は10月27日に広告主をなだめようと努めたものの、過去には広告があまり好きではないと明言したことがある。Twitterのジレンマは、収益のほとんどが広告によるものということだ。

 Reutersの報道によると、Musk氏は4月下旬、費用削減の手段を探すだけでなく、バイラルツイートや、重要な情報が含まれたツイートから利益を上げる手段も見つけると銀行に語ったという。同氏は、認証済みの個人や組織のツイートを引用したり埋め込んだりしたサードパーティーのウェブサイトから料金を徴収することも示唆した。

 Musk氏は、24時間の顧客サービスを含む有料会員制の導入をTwitterが提案した点を称賛したこともある。また、TikTokやYouTubeのような競合サイトより広告売上の分配を多くして、最初にTwitterに投稿するインセンティブをクリエイターに与えると提案したことも、褒めている。

 そうなると、理論的に考えて、ハッキングされたアカウントの復旧を従業員に支援してもらうなど、新しいサービスを受けるために対価の支払いが生じることになるのかもしれない。

 Twitterはまた、サブスクリプション「Twitter Blue」の月額料金を19.99ドル(約3000円)に値上げし、その料金を支払わないユーザーの認証バッジを取り消すことを計画しているとも報じられている。しかし、これまで無料で使えていた機能を有料化することについてユーザーを納得させるのは、特にインフレで人々が支出を切り詰める中では難しそうだ。

 Musk氏は自身のフォロワーに対し、ショート動画サービス「Vine」を復活させるべきかどうかを問う投票も促した。Twitterは2012年にVineを買収し、2013年に正式に提供を開始したが、2017年に同サービスを終了している。Vineが復活すれば、Twitterが収益を得る新たな方法への道が開ける可能性がある。

表現の自由、検閲、そして安全性

Twitterのロゴ
提供:James Martin/CNET

 Musk氏はTwitterの熱心なユーザーで1億1000万人以上のフォロワーを抱えているが、Twitterのコンテンツモデレーションのやり方を特に厳しく批判している人物の1人でもある。

 Musk氏は10月27日のツイートで、「公共のデジタル広場を持つことが、文明の未来にとって重要だ。(中略)今は、ソーシャルメディアが極右のエコーチェンバーと極左のエコーチェンバーに分裂し、私たちの社会により大きな憎しみと分断をもたらす危険が生じている」と述べた。

 Musk氏は同時に、Twitterを「後先考えずに何でも言える、参加自由の地獄絵図のような場所」にするわけにいかないとも記している。同氏は以前から、Twitterは違法な発言のみを取り締まるべきだとしているが、スパムや偽アカウントをこのプラットフォームから撲滅するとも明言している。

 同氏は自身を言論の自由の支持者としているが、有害なコンテンツを放置することで、ライトユーザーがTwitterに時間を費やしたり考えを投稿したりすることに、より慎重になる恐れがある。

 同氏の買収によって、Twitterがヘイトスピーチやハラスメントなど攻撃的なコンテンツに対処するために進めてきた取り組みが、台無しになることを懸念する向きもある。法務ポリシーと信頼、安全性の責任者であるVijaya Gadde氏を解雇するというMusk氏の判断が最大の懸念材料だとする専門家もいる。

 Musk氏は10月28日、Twitterに「多用な見地を持ったコンテンツモデレーション評議会」を設立するとツイートした。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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