宮城県と言えば大手企業が数多く拠点を構えるほか、日本三景に数えられる松島や県内に点在する温泉など観光地としても人気だ。そして仙台駅は、そんな宮城県の玄関口と言える場所である。ちなみに筆者は宮城県出身だが、友達と遊んだり買い物したりするのも、仙台駅周辺が多かった。
そんな仙台駅前にある青葉通で、9月23日〜10月10日の期間に、「MOVEMOVE」という社会実験が行われた。駅の目の前にある車道と歩道を交通規制し、ワークスペースを設けたり、イベントを実施したりするというものだ。実際に現地を訪れ、その様子を見ながらワーケーションを楽しんできたので紹介しよう。
社会実験が行われていたのは青葉通の一部、バス停のある約120mの範囲だ。本来ならば車道になっている場所に会場が設けられ、一般車両は通行止めとなっていた。駅から続くペデストリアンデッキ上から見えるため、多くの人々が「何だろう?」と興味を持って足を止めていた。
現地に行ってみると、色んな形状の椅子やテーブルが設置されている。木で作られたものが多いようで、緑に囲まれた青葉通にマッチしていた。特に受付などはなく、誰でもフラッと立ち寄って自由に利用できる。
屋外ということで電源はなかったが、Wi-Fiが完備されているので仕事には十分。近くの飲食店からテイクアウトも可能なので、快適に青空ワークができる。出張に訪れてちょっと時間を潰したり、家族と訪れて買い物待ちの間に仕事したり。駅周辺には宿泊施設も多いので、朝起きて観光やレジャーに出かける前の一仕事にも良さそうだ。
実際、ベンチに座ってPCやスマホを片手に、何か作業している方の姿も見られた。私も少しテーブルで仕事させてもらったが、PC作業にはまったく問題ない環境。むしろ青空の下で仕事していると、とても清々しい気分になれる。
この社会実験では場の提供だけでなく、さまざまなイベントが日替わりで実施されていた。ちょうど訪れたのが日曜だったこともあり、家族連れなども含めてかなり賑わっていたようだった。
これだけ多様なイベントが実施されていると、この場だけでも十分に楽しい時間を過ごせる。まさに、小さなワーケーションスポットと言えるのではないだろうか。仕事メインで訪れていても、ふと息抜きにイベントを楽しむことができる。
また、夜になると会場の雰囲気が変わる。各所に焚火が設けられ、火を囲みながら会話したり仕事したりする人も。火を囲んでお酒を飲む……なんていうこともできるようで、特別な時間を過ごせそうだ。
もともとMOVEMOVEは、市が場所の活用などを目的として企画したイベントとのこと。では、なぜワーケーション要素が加わったのかというと、オリバーの廣瀬雄大氏による提案があったからだという。
働き方が多様化する中、仙台駅周辺にはたくさんのビジネスパーソンが行き交う。それなら“自由に働ける場所”を作ってはどうかと話を持ち掛けたところ、市の構想していたMOVEMOVEと重なる部分があり、実現したのだという。
MOVEMOVEは、もともとワーケーション向けのものではない。あくまで仙台駅周辺を中心としたエリアで働く、あるいは買い物などに訪れる人々に向けたものだ。平日の日中には井戸端会議に利用する方も見られ、期間中に少しずつ認知され、受け入れられていったようである。
しかし、仙台駅には県外からも多くの人々が訪れる。駅を拠点として各レジャースポットへ行けるほか、付近にも買い物や観光を楽しめる場所がたくさん。たとえば、伊達政宗像のある青葉山公園は仙台駅から約2kmと、散歩がてら訪れるのにも程よい距離だ。こうしたことから、ワーケーションを楽しむ拠点としての可能性は大きいと言えるだろう。
会場ではアンケート調査も行われており、その声を踏まえて今後の実施等を検討するとのこと。今あるものを活用し、新しい価値を生み出す。働き方の多様化という世の中の変化にマッチさせたこの取り組みは、今後の展開も期待できそうだ。
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