ソニー・ホンダモビリティ(SHM)は10月13日、設立発表会見を実施。3月のソニーグループと本田技研工業(ホンダ)の発表以降、新会社として9月に正式に設立したことや企業パーパス、現状のスケジュールなどを発表した。顧客との新しい関係の構築に挑戦する「モビリティテックカンパニー」を目指す。
ソニーとホンダが50%ずつを出資する合弁会社のSHMは、「多様な知で革新を追求し、人を動かす。」を企業パーパス(存在意義)とし、2025年から第1弾商品の先行受注を開始。同年中に発売し、2026年春から北米、後半から日本の顧客に届ける予定だ。当面の生産拠点はホンダの北米工場になるという。
開発、販売する商品は、「高付加価値型」のエレクトリック・ビークル(EV)と、関連するモビリティ向けサービス。オンラインを中心に販売し、顧客と“ダイレクトにつながり続ける”ネットワークの構築を目指す。
顧客には、商品開発プロセスへの参加を呼びかけ、販売後もパーソナライズされた顧客体験を個々に提供し続ける。リアルとデジタルを融合させた新しいサービスを提供し、販売やアフターサービスのみならず、バリューチェーン全体で顧客との関係を長く、深くするという。
平行して、商品の所有に関わらず、ブランドに共感する仲間が集うコミュニティを構築する。従来の自動車産業におけるパートナーのほか、さまざまな産業のパートナーと組み、モビリティにおける新しいエンターテインメントの創出を目指す。またクリエイターなども巻き込んでいく構えだ。オープンで自由な環境と、新たな体験価値創出に向けた協業などにより、高付加価値商品を提供する狙いだ。
SHMの代表取締役 会長 兼 CEOを務める水野泰秀氏は、ホンダの専務執行役員で、ソニーJV準備室にも所属している。水野氏は、「モビリティ業界は、デジタル技術やソフトウェアを震源地とした大きな変革期を迎えている。ホンダがハードとソフトを融合させた商品への転換を掲げて変革を推進するなかで、モビリティの変革、進化をリードするためには、既存の自動車OEMのやり方と全く異なるアプローチを取る必要がある」と、ホンダから見たソニーと組む理由を説明。
“モビリティ空間を観光空間に”というビジョンを抱えてモビリティの進化への貢献を志しつつ、既存OEMと異なる考え方とスピード感を持つソニーとともに、既存の自動車やモビリティとは違う、全く新しい姿を目指すと語る。
ソフトウェアを中心とした新しい技術のほか、他社とのパートナーシップ、新しいアイデアなどにも注力する。「ソニーとホンダの知見や技術の結集はもちろんだが、共感、共鳴するカスタマー、パートナー、クリエイターの知を結集してつなげることで、はじめて革新が達成できる。既成概念を覆す、高付加価値型の商品やサービスの提供、顧客との新しい関係性の構築にチャレンジし、自動車OEMではなく、ソフトウェア技術を中心とした新しいモビリティテックカンパニーを目指す」(水野氏)とした。
提供する高付加価値型EVのコンセプトは「3A」。ソニーとホンダが個々で検討してきたモビリティの進化への貢献、リードという考えをベースに、「Autonomy」「Augmentation」「Affinity」へと集約する。SHMの代表取締役 社長 兼 COOを務める川西泉氏は、それぞれが目指していく方向性などを具体的に説明する。
Autonomyは「進化する自律性」の意味で、ホンダが提唱する事故にあわない社会の実現に向けた取り組みと、ソニーが持つ車体センサー技術を組み合わせ、安全性能の向上に努めるという。
また、さまざまなインテリジェント技術により、特定条件下での自動運転機能となるレベル3の搭載や、市街地などのより広い運転条件下での運転支援機能となるレベル2+の開発にも取り組むという。ハードウェアとしては合計800TOPS(Tera Operations Per Second:1秒あたりの演算処理兆回数)以上の演算性能を持つ高性能SoCを採用予定だ。
Augmentationは「身体・時空間の拡張」という意味で、人とのインターフェースとなるHMI(Human-Machine Interface)を新たに提案する。提供するサービスとクラウドで連携することで、顧客ごとにパーソナライズされた車内環境を実現し、顧客に運転以外の楽しみを提供するという。リアルとバーチャルの世界を融合させつつ、メタバースや5Gを活用。移動空間をエンターテインメント空間、感動空間へと拡張させ、新しいエンターテインメントの可能性を追求する。
HMIと車載インフォテインメントシステムには最新のSoCを2個搭載し、高性能な自動運転、自動支援システムなどと組み合わせる。従来の電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)を、ハイパフォーマンスな“統合ECU”に集約するという。
Affinityは、「人との協調、社会との共生」を意味している。顧客に加えて自動車産業やさまざまな産業を支えるパートナー、クリエイターなどとオープンで自由な環境を作りつつ、双方向性のあるモビリティ社会と、新しいエンターテインメントの創出を目指す。車載ソフトウェアからクラウド上のソフトウェアまで一貫した統合的なフレームワークを活用し、モビリティを移動体験サービスと捉え、サービス全体のアーキテクチャを設計していくという。
ソニーの常務 モビリティ事業担当 モビリティ事業室 部門長、ソニーモビリティ 代表取締役社長 兼 CEOも務める川西氏は、「2社には共通点も多くある一方で、自動車OEMのホンダとIT企業のソニーという、異業種ならではの相違点も感じている。ホンダには将来を見通す緻密さ、ソニーには将来の変化に適用する柔軟性がある。ウォーターフォールとアジャイルという開発プロセスの違いに起因すると言えるかもしれない」と分析する。
「お互いの企業文化を認め合うモビリティテックカンパニーとして、モビリティとITの融合を強く押し進める。スピード感を持って、グローバルで闘えるチームを目指す」と、新会社が目指す方向性を語った。
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