ソニーとホンダの合弁会社設立の狙い--「一線を画した新しい価値の創造を」

 ソニーグループと本田技研工業は3月4日、新時代のモビリティとモビリティサービス創造に向けた戦略的な提携への合意、両社による合弁会社の設立などを発表。2022年中に設立する新会社を通じて、高付加価値なエレクトリック・ビークル(EV)の2025年での共同開発、販売を目指すという。

 同日実施した会見では、ソニーグループ 代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏と、本田技研工業 取締役代表執行役社長の三部敏宏氏が登壇し、今回の発表に至った背景、今後の狙いなどを語った。

 吉田氏は、「2020年のCESでのスピーチで、『過去10年で人々の生活を大きく変えたメガトレンドはスマートフォン、すなわちモバイルだった。これからの10年はモビリティ』と述べたが、技術とビジネスモデルの観点から、モビリティはモバイル化する」と説明。モビリティは技術面ではITと通信、ビジネスモデル面ではネットワークを軸としたサービスへシフトすると語った。

ソニーグループ 代表執行役会長兼社長CEO 吉田氏
ソニーグループ 代表執行役会長兼社長CEO 吉田氏

 また、自社のこれまでを振り返り、「エレクトロニクス事業を社業とするソニーは、IT、通信分野の技術、サービスといったビジネスモデルのメガトレンドにおいて、リードしてきたというより対応してきた会社」(吉田氏)と説明。

 ITでは1996年のPC「VAIO」、ITと通信の融合では2008年のスマートフォンの「Xperia」、2014年に本格的に立ち上げたネットワークサービス「PlayStation Network」など、テクノロジーとビジネスモデルの変化へ対応してきた経験と、2014年から投資を本格化した「CMOSイメージセンサー」の技術を活用し、モビリティの進化に貢献したいと語った。

 提携については、「ソニーにとってモビリティは新しい領域で、貢献するためにはモビリティを学ぶ必要があるが、ソニーは安全面を支えるセーフティ、移動空間を感動空間にするエンタテインメント、進化を支えるアダプタビリティの3つの領域で貢献できる」(吉田氏)と語りつつ、「大きな貢献のためにはPC、スマートフォンのようにEVそのものに自身で取り組むことが重要」。その中で三部氏との会話が始まったという。

 幾度の対話を重ねながらモビリティの進化にチャレンジしたいという思いを共有し、今回の発表に至ったと説明した。

 一方三部氏は、「今日の会見が念頭にあったわけではないが、2021年の夏頃にホンダから、両社でモビリティの将来を検討しようと提案した」と経緯を補足する。

 若手で構成したメンバーでのワークショップから開始し、化学反応のような大きな可能性を感じつつ、2021年末に吉田氏と話す機会があったという。「新しい自動車という領域ではパートナーが必要という認識で、さまざまな可能性を模索してきた。(吉田氏と対話を繰り返す中で)モビリティの変化と将来の方向性を共有できるという思いが加速し、本日に至った」(三部氏)と説明した。

本田技研工業 取締役代表執行役社長 三部氏
本田技研工業 取締役代表執行役社長 三部氏

 会見では、両者ともにソニー創業者の1人である井深大氏とホンダ創業者の本田宗一郎氏の親交の深さ、グローバルや独創性、社風などをたびたび口にしており、企業として感じる親近感も決め手になったようだ。

さまざまにシンクロしていると紹介
さまざまにシンクロしていると紹介

 2025年でのEV販売開始以外の具体的な数値目標は避けたが、吉田氏は新会社へ提供予定のソニーの新モビリティ向けサービスプラットフォームについて、ソニー、ホンダで終わるものでなく、拡大していくものを目指すと語る。具体的には、「今後、車両から人へと変わっていく『認証』をサポートし、何らかのアクション、サービスを提供する」(吉田氏)ものを想定しているという。また、必要があれば課金という要素もサポートしていきたいと続けた。

 三部氏は、「電動化というキーワード1つとっても、ガソリン、エンジンを下ろしてモーターとバッテリーを積む、ということではない。社会構造そのものが変わっていく中で、一線を画した新しい価値の創造を狙いたい」と、合弁会社で今までにない新しいものを生み出していきたいと語った。

 なお、「ホンダ単独のEV戦略などとは別」(三部氏)。新しく開発された技術やサービスを活用する可能性には含みを持たせながらも、ブランドとしてのホンダとは別で展開していくと語った。

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