200Mbps超えを連発--日本上陸した「Starlink」をさっそく自宅に導入

 10月11日、Elon Musk氏が率いる「Space Exploration Technologies Corp (SpaceX)」のTwitterアカウントが「Starlinkが日本でのサービスを開始しました。アジアでは初めてのサービス国です」とつぶやいた。その途端、SNSは一気に盛り上がりを見せた。

 しかし、10月11日から契約受付を開始するのかと思いきや、実はSpaceXのサイトでは、かなり前から日本からの予約を受け付けていたのだった。

Starlinkの注文ページ
Starlinkの注文ページ

 筆者は8月15日にFacebookでつながっているキャリアの元関係者が「Starlinkを申し込めた」というつぶやきを発見し、慌てて申し込んでいた。約2カ月後の10月12日、ようやく我が家にStarlinkのアンテナが届いたのだった。

 衛星ブロードバンドサービス「Starlink」は、専用アンテナ代が7万3000円、利用料金が月々1万2300円かかる。日本でのサービスエリアは現時点では東京以北から北海道南部の一部だ。西日本は現時点で対象外だが、Space Xに技術協力しているKDDIの山口衛星通信所付近は利用可能のようだ。

頻発する「通信障害」に備えるため導入を決断

 本来、Starlinkは砂漠や山間部など「携帯電話の電波もつながらないような場所」に向けたサービスだ。日本は至る所で4Gの電波が入るし、最近は5Gエリアも増えてきた。住宅であれば光回線やCATVによるブロードバンド環境も手に入る。正直言って、都心に住んでいるのであれば、衛星ブロードバンドなど単なる「宝の持ち腐れ」になってしまうのが目に見えている。

 しかし、先日のKDDIによる大規模通信障害で、いかに「通信を確保するのが重要か」というのを身に染みて実感させられた。筆者が住む住宅街はかなり込み入っており、大地震が襲来し、電柱が倒れれば、間違いなく通信は遮断されるのが目に見えている。光回線が断絶すれば、携帯電話のネットワークもつながらなくなる。

 これまで、各キャリアの災害対策を取材してきたが、台風や地震、津波などあらゆる災害対策には、地上の影響を受けない衛星通信が有用であった。毎月1万2300円の出費はかなり痛いが、個人事業主の事業継続計画(BCP)の一環として導入を決断したのだった。

 また、最近は筆者が取材しているスマートフォン関連でも衛星通信が注目を浴びている。楽天モバイルはASTと組んで、衛星通信によってスマートフォンの人口カバー率100%達成を目指している。今年発売となったiPhone 14も衛星通信に対応し、米国とカナダではSOSメッセージを衛星に向けて飛ばせるようになる。 

 Space Xと米国のキャリアであるT-Mobileはスマートフォンに向けた衛星通信サービスを計画中だ。「衛星ブロードバンドって本当に実用性があるのか」試してみたくて、気がついたらStarlinkの予約ボタンをポチッとしていたのだった。

設定は超カンタン、まるで最新のデジタルデバイスのよう

 10月12日の朝、子どもを保育園に送りにいって帰ってくると巨大な箱が届いていた。本来は13日着の予定だった。

Starlinkが我が家にやってきた。箱がでかい
Starlinkが我が家にやってきた。箱がでかい

 早速、3階の屋上スペースに持ち込み、箱を開けてみた。中には直径50センチほどの衛星アンテナと台、電源と通信を行うボックスとWi-Fiルーターが、すでにつながれた状態で入っていた。

箱を開けてみたところ。
箱を開けてみたところ

 細かな説明書は一切無く、巨大な紙に「アプリをダウンロード」「屋外に置く」「コンセントに刺す」「Wi-Fiの電波が飛ぶから接続する」といったイラストしか書かれていなかった。まるで最近のデジタルデバイスのようだ。

巨大な箱に入っていた巨大な紙。イラストでどうすべきかが描いてある
巨大な箱に入っていた巨大な紙。イラストでどうすべきかが描いてある

 しかし、アプリでも解説が出るので、設置はとても簡単だ。というか、単に箱から出してコンセントを刺しただけに過ぎない。

電源からケーブルが黒いボックスにつながり、黒いボックスからアンテナとWi-Fiルーターに接続されている。構成は実にシンプルだ。黒いボックスとWi-Fiルーターは屋内に設置する
電源からケーブルが黒いボックスにつながり、黒いボックスからアンテナとWi-Fiルーターに接続されている。構成は実にシンプルだ。黒いボックスとWi-Fiルーターは屋内に設置する。

 実際にアプリを使ってみると、かなり優秀で優れたユーザーインターフェースなのに感心してしまった。自宅で衛星からの電波をキチンとつかめるかを事前に確認できるようになっているのだ。

 メニューを選ぶとカメラが起動し、空に緑色の丸が無数に配置されている。それらをすべてカメラに撮影することで100%となり、周辺の状況をチェックできる。この場所であれば、衛星の電波をどれだけつかめるかがすぐに確認できるようになっている。

Starlinkアプリには自宅で電波が入るか、測定できる機能がある。カメラで空に浮かぶ緑色の丸を集めることで、空を見回し、遮蔽物などを確認する。iPhoneで自分の顔を登録する手順のようだ。
Starlinkアプリには自宅で電波が入るか、測定できる機能がある。カメラで空に浮かぶ緑色の丸を集めることで、空を見回し、遮蔽物などを確認する。iPhoneで自分の顔を登録する手順のようだ。

 我が家は10%ほど受信できないようであり「もっといい場所を探せ」とアドバイスされるのだが、それほど問題はなく使えるようであった。アプリの入手は誰でもできるので、Starlinkに興味のある人はダウンロードして自宅で試してみるといい。

自宅は、どれくらい空が開けていて、また逆に空が見えない状態にあるかがわかる。
自宅は、どれくらい空が開けていて、また逆に空が見えない状態にあるかがわかる。

 電源を入れるとしばらくアンテナはびくともしないのだが、突然、上を向き始め、衛星を探しているようだった。

設置時は真上を向いていたアンテナがいつの間にか壁の方を向いていた
設置時は真上を向いていたアンテナがいつの間にか壁の方を向いていた

 さらにアプリでは「起動中」のメッセージが出るのだが、10分程度待たされたのち、オフラインからオンラインに切り替わった。

アプリ上ではオンラインやオフラインなど状況を確認できる
アプリ上ではオンラインやオフラインなど状況を確認できる
ネットワークの通信状況や速度なども把握できる
ネットワークの通信状況や速度なども把握できる

 ただ、起動直後はまた安定して通信ができないようで、オフラインになったりと、かなり不安定な状態が続いている。アプリには「衛星の情報を集めるのに12時間ほどかかる」と表示されているので、もうしばらく待つ必要がありそうだ。

 オンライン表示時にスピードテストを実施したところ、レイテンシーは28ms、ダウンロードは203Mbps、アップロードは16Mbpsという数値であった。調子がいいとダウンロードで300Mbps、アップロードで43Mbpsを超えることもあった。平均してダウンロードは100Mbps以上は出ているので、動画の視聴も特に問題なさそうであった。

200Mbps超えを連発するなど、いまのところは高速で通信が可能だ
200Mbps超えを連発するなど、いまのところは高速で通信が可能だ

「衛星通信が当たり前になる時代」の到来にワクワクが止まらない

 ネットでは「某光回線サービスより速い!」と盛り上がっているが、これはあくまで日本にユーザーが全然いないからこそ実現している数値ともいえる。今後、ユーザーが増えれば、それだけ衛星にぶら下がる人も増えるわけで、通信速度が遅くなる可能性は充分にある。一方で、さらに衛星を飛ばすとみられるため、しばらく速度がこのまま安定する可能性もゼロではない。

 実際に導入して感じたのはとにかく「衛星通信が簡単に手に入る」ということに感動してしまった。工事は一切不要で、まるで4Gや5GにつながるモバイルWi-Fiルーターや据え置き型のルーターを購入するのと同じ感覚で衛星通信につなげてしまうことに拍子抜けしてしまった。

 Starlinkのように大きなアンテナだけでなく、将来的には普通のスマホでも簡単に衛星につながるのが当たり前になる時代がもう少しでやってくると思うと、ワクワクせずにはいられないのだ。

 (この記事はUchuBIzからの転載です)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]