テスラのロボット「Optimus」を侮るなかれ--実際に試作機を見た記者が解説 - (page 2)

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年10月11日 07時30分

Musk氏はオタクにとっての天国を作り出した功績がある

 Musk氏には、困難ではあるが達成可能な事業を選び、挑戦に前向きなエンジニアを見つけ、エンジニアたちに違いを生み出せるような環境を提供する才能がある。

 Teslaが自動車業界を揺るがしているのと同じように、Musk氏が創業したSpaceXもロケット事業に極めて大きな影響を及ぼしている。そのSpaceXで働くある人物は、競合他社から誘われたことが何度かあり、それらの企業の仕事は楽そうだったが、実際に何かを成し遂げることはできなかっただろう、と彼女は語った。

 私たちはノートPCやスマートフォンに多額を費やしているかもしれないが、Musk氏が模索しているのは新しい領域だ。Musk氏はAI Dayイベントで、「人々はOptimusの最新状況を把握しておくべきだ。他の多くのテクノロジーは停滞している」と語った。

 そのメッセージは、筆者がAI Dayで話をしたあるエンジニアの考えと一致していた。このエンジニアは、Optimusの胴体や脚、腕、指を動かす主要なメカニズムであるアクチュエーターの開発に取り組んでいる。以前はBoeingで働いていたが、ロボット工学こそがイノベーションの新しい波だと考えている。

 AI Day 2022は、はっきりと、エンジニアの採用イベントとして企画されていた。筆者が話をしたあるエンジニアは、Teslaと直接競合する企業で働いているが、勧誘のメールを受け取ったため、イベントに参加したという。手術用ロボットの開発に携わっている別のエンジニアは、この分野におけるTeslaの取り組みの規模と資金に明らかに感銘を受けていた。TeslaのOptimusを一笑に付している人など1人もいなかった。

Tesla Botは深遠な研究の成果

 AI Dayのステージでは、「Bumble-C」と呼ばれるOptimusの前のバージョンのプロトタイプがすり足で歩いたり、手を振ったり、腕を上げ下げして見せたり、腰の部分で身体を曲げたりしていた。それは、基準によっては地味なパフォーマンスだったが、1年間に満たない取り組みの成果であることも事実だ。何人かのエンジニアがMusk氏と共に壇上に現れ、Optimusに関するこれまでの研究について詳しく説明した。その一部を以下で紹介しよう。

  • Teslaは人間の筋肉のように機能する独自のアクチュエーターを設計しており、これにはギアやモーター、センサー、制御装置がぎっしりと詰め込まれている。同社は、Tesla自動車の駆動ユニットを設計しているチームの協力を得ている。コスト、製造の容易さ、速度、トルク、質量、効率を最適化するため、ロボット全体で6つのアクチュエーターを使用するという結論にたどり着いたが、AI Dayで、エンジニアたちがその計算の過程を示した。
  • Teslaは人体の構造を参考にしている。例えば、人間の膝に似た複雑な4本棒のヒンジ機構を採用しており、膝の曲がり具合に応じて、アクチュエーターのさまざまな強度や速度のニーズに対応している。
  • Optimusの移動を誘導するのに、FSDと同じAI技術を使用している。これには、「Occupancy Network」(カメラの入力データを、ロボットの周囲にあるすべてのものを再現した3Dマップに変換するAIシステム)が含まれる。
  • 同社は、自動車やロボットに搭載される複数のAIシステムを訓練するために、独自のカスタムデータセンター技術のDojoを構築している。これまでのところ、TeslaはDojoハードウェアが格納されたキャビネットを3つ作成しており、NVIDIAのハイエンドプロセッサー「A100」を72個使用する以前のアプローチでは不可能だった方法で、動画訓練データを処理できるようになっている。
  • Optimusでは、移動能力のために、仮想ロボットをシミュレーションする物理モデルと、ロボットが実際にどのように動作しているのかを測定する現実世界のセンサーデータを組み合わせている。歩行技術はますます洗練されている。Optimusが最初に歩いたのは2月、骨盤を動かせるようになったのは7月。8月には、腕を振りながら歩くようになり、9月には、Optimusのつま先が初めて地面から離れた。

 「Teslaのチームはライバルよりもはるかに先を行っており、イノベーションのペースに自信を持っているため、自社の研究を詳しく公開することに不安を感じていない」と、アナリストのFerragu氏は指摘した。

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