NTTコミュニケーションズは、9月21日の世界アルツハイマーデーにあわせて、AIを用いて発話内容から認知機能低下の有無を測定するサービス「脳の健康チェックフリーダイヤル」のトライアルを開始した。トライアル期間は未定で、少なくとも今年度内は無料でサービスを提供する予定だ。
利用者は専用のフリーダイヤル「0120-468354(知るは最高の予防)」に電話をかけ、ガイダンスに従って今日の西暦、日付、曜日、自分の年齢を答えるだけ。約20秒ほどの短い発話をAIが解析し、その場ですぐに結果を聞くことができる。
たったこれだけの質問で?とも思えるが、「認知機能を測定する質問項目の中で、最も精度が高かったのが時間見当識(現在の日時など)」とのこと。的確に答えられているかだけでなく、声のトーンやゆらぎなどをもとに、パートナーである日本テクトシステムズが開発した独自のアルゴリズムを用いて、「正常」または「機能低下」を判定するしくみだ。
NTTコミュニケーションズの電話や音声認識、クラウド技術とこのアルゴリズムを掛け合わせることで、短時間でどこでも、簡単にチェックできるのがポイント。日本テクトシステムズの調査によれば、音声をもとにした認知機能チェックの軽度認知症患者における正答率、つまり精度は93%に上るという。
サービス説明会の冒頭にビデオメッセージを寄せた、NTTコミュニケーションズ 代表取締役副社長の菅原英宗氏によれば、このサービスは同社が推進する共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」の取り組みのひとつ。認知症の祖父母を抱え、その介護で家族が疲弊する状況を目の当たりにした、同プログラムのカタリスト(各分野に精通した社内外の専門家)の経験をもとに誕生したという。
「2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になるという予測もある。彼の経験は誰しもの将来に起こりえることだが、自分事として受け止め、行動することは容易ではない。社会全体で認知症への意識を高め、行動変容を促すことで予防していくしくみが重要。また認知症は早期に発見し、対処することで進行を遅らせることができる。慣れ親しんだ電話を使って、認知機能の変化に気づくきっかけにしていただきたい」(菅原氏)
同社では無料トライアルの提供とあわせて、認知症で不安になる本人、家族、企業が少なくなる社会をともに目指す、パートナー企業の募集を開始する。ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートヘルスケア推進室長の久野誠史氏は、サービスを活用した共創モデルとして、早期発見や予防・ケアのほか、運転・作業前の定期安全チェックや、金融取引のための事前チェック、健康に寄与する商品、サービスの紹介、広報・啓発などの例を紹介。すでに賛同する数社のパートナー企業と、共創モデルの検討を開始していると明らかにした。
今後はより早期に認知機能の低下を判定できる手法の検討や、繰り返しチェックしてもらうための仕組みの検討のほか、「電話だけでなくSaaSの活用やデータ収集や分析、ダッシュボード機能の提供などサービスを拡充していくとともに、パートナーと共創モデルを具体化していきたい」と久野氏。「より多くのパートナーといろいろな共創を考えていきたいと思っているので、共感いただける企業の皆様はぜひ連絡をいただきたい。認知症に対する意識を高め、衰えを抑止できる世界をパートナーの皆さんと創っていきたい。人生100年時代のQOL向上を目指したい」との展望を語った。
質疑応答には、菅原氏から発案者として紹介されたカタリストも参加。自身の経験を踏まえてサービスに期待することについて「当時は認知症に対する理解も、認知機能の低下を知るきっかけも、テクノロジーもなかった。今、健康な状態であれば予防に備えていただきたいし、リスクを抱えていれば進行を送らせるような取り組みをしていただきたい。サービスが認知症について考えることや、行動変容のきっかけになれば」と話した。
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