MUSVIは9月20日、テレプレゼンスシステム「窓」を活用した 空間接続ソリューション事業を開始すると発表した。大画面ディスプレイを介して空間をつなぎ、臨場感や気配まで感じ取れるコミュニケーションの場を提供する。すでに50以上の企業や、教育機関、医療機関、地方自治体等に導入しており、オフィス、現場、医療、介護、地域創生、教育などの領域において、空間をつなぐプロジェクトに貢献しているという。
MUSVIは、ソニーで通信技術のエンジニアなどを務めた阪井祐介氏が、ソニーを退職し立ち上げたスタートアップ。ソニーグループ、セーフィー、SREホールディングスが出資している。窓はディスプレイ、カメラ、スピーカー、マイクなどを組み合わせたテレプレゼンスシステムで、Wi-Fiなどの通信を通じて別の場所にある窓とやりとりが可能だ。
「オンライン会議システムのディスプレイを大きくしたものと何が違うのか、と思われる方もいると思うが、オンライン会議をしていると、沈黙が大変つらい。それは言葉を明確に伝えることを重視しているため、言葉以外の情報をカットしてしまうから。窓は、ソニーが得意とする、映像、音声技術を駆使し、リアリティを追求して作り上げたシステム。臨場感が得られるとともに、人の気配を感じとれることで、ディスプレイ越しでも自然なコミュニケーションが可能になる」(阪井氏)と説明する。
55インチの液晶ディスプレイは、20対9の比率で作られているという建物の窓をモチーフにして作られたもの。縦型の大画面のため、等身大の相手と対面できるほか、双方向同時のハンズフリー通話ができ、目の前にいるような臨場感と同じ空間にいるかのような気配を提供する。マイクとスピーカーを使って、会話のやりとりができ、複数の窓を集め、窓越しでの複数人の会話も実現。やりとりがオフになる「カーテン」機能を設け、カーテンが開くとつながり、閉じると終了など、窓のような使い勝手を提案する。
ソニーが長く培った映像、音声技術を組み込み、臨場感を得られるほか、その場にいるような人の気配を感じ取れることが大きな特徴。「高解像度の映像でやりとりができるといった部分的な問題ではなく、全体のバランスを上手にとることで、人がそこにいるような気配を感じられる。これは言葉で言ってもなかなか伝わらない難しい部分。ここを理解してもらうことが一番のハードルで、匍匐前進の日々だった」(阪井氏)とポイントを明かす。
ネット環境については「帯域が広ければ広いほど安定するが、Wi-FiやLTEなどでの通信もトライしている」(MUSVI 取締役COOの三木大輔氏)とのこと。すでに導入している施設では「ビデオ会議では伝わらなかったニュアンスが伝わるようになった」「遠方にいるおばあちゃんと自宅をつないでいると、窓の前でペットの犬がおばあちゃんに買ってもらったおもちゃをもってきて遊ぶようになった」などの声が寄せられているという。
窓のベースになっているのは、阪井氏が2000年にソニー内で提案した「人と世界をつなぐ『窓』と空間事業戦略」。「20年間鳴かず飛ばずの状態だったが、なんとか実現したいとソニー内で生き残るためにあらゆる仕事を身に着け、ずっとやってきた。私自身は技術者だが、企画やデザイン、事業開発などにも取り組み、ソニーにいさせてもらった(笑)。また、2000年の段階では入社2年目だったが、出井さん(ソニー元社長の出井伸之氏)に『しばらくやらせてあげる』とイントロで追い風をもらったのが大きかった。今でも本当に感謝している」(阪井氏)とコメントした。
収益については「商品販売だけではなく、導入時のコンサルタントとサブスクリプションで月額のサービス費用いただく形を想定している。費用感は設置場所や環境、台数によって変わるため一概には言えないが、2拠点をつなぐ基本システムで数百万円くらいを考えている」(MUSVI 取締役CFOの大野木健氏)とした。
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