住友商事と東急電鉄は9月14日、ローカル5Gを活用した線路巡視業務の効率化と高度化、線路敷地内の安全性向上に関する実証実験を開始すると発表した。12月から、東横線と横浜高速鉄道みなとみらい線の自由が丘駅、菊名駅、妙蓮寺駅、横浜駅で実施する。
同実験は、2022年7月に総務省の「令和4年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証(特殊な環境における実証事業)」に選定されたもの。1点目として、線路巡視業務の効率化、高度化に取り組む。電車内に設置した高精細4Kカメラで撮影した映像をローカル5Gで伝送し、AIで解析。作業員が現地に出向かず、線路設備などの異常を確認できる仕組みを構築するという。
両社は2021年12月から2022年3月に富士通と共同で、総務省の「令和3年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に選定された実証実験を実施。自由が丘駅でローカル5Gを活用した線路の異常検知および、運転支援業務の高度化を実験し、駅停車時間内のデータ伝送とAI解析処理時間の短縮に成功していた。
今回実施する実験では、AIの精度向上を図るとともに、横浜駅において横浜高速鉄道とローカル5Gシステムの一部設備および、AIアプリケーションの共用化を共同で実施するという。
さらに、富士通、京セラコミュニケーションシステム、サムスン電子ジャパン、SCSK、西日本旅客鉄道、沖電気工業、伊豆急行、九州旅客鉄道、名古屋市交通局、西日本鉄道、首都高速道路、東急、イッツ・コミュニケーションズ、Sharing Design、グレープ・ワン、Insight Edgeなど、横浜高速鉄道以外の複数事業者と、同ソリューションの共同利用を検討。令和5年度以降の商用化を目指す。
2点目の取り組みとして、線路敷地内の安全性向上に寄与する新規ソリューションを検討する。線路敷地内や踏切を網羅的にカメラで監視し、歩行者などの踏切の渡り残りや第三者の線路内への侵入を自動で検知する。リアルタイムの映像を司令所や運転士に伝送することで、事故の未然防止を図り、異常発生時における早期運転再開を目指す。線路敷地内の安全性向上は、将来の鉄道自動運転の実現にもつながるという。
また、両社は今回の実験を通じて関係各社と連携し、安全性の向上や業務効率化を実現する新たなデジタルソリューションを創出するという。鉄道業界全体への展開を目指し、さまざまな課題解決に貢献していくとしている。
近年、日本の鉄道業界では、熟練技術者を含む業界従事者の減少や、車両や駅構内、沿線でのトラブルの増加が懸念されており、作業現場における自動化、省力化、安全性向上が求められている。そのために必要なインフラとして、高速大容量で超低遅延かつ、多数同時接続という特徴を持ち、独立したネットワーク網を構築できるローカル5Gの活用が期待されているという。
住友商事は、ローカル5Gを活用した実証実験や基地局シェアリング事業など、5Gの普及促進に取り組んでいる。総務省の実施するローカル5Gの実証実験に参画し、工場、地域防災、港湾など複数の産業分野において有効性を検証している。
東急電鉄は、東急と住友商事が設立したSharing Designを通じて、携帯通信事業者向けの基地局シェアリングサービスによる、東急線各駅への5G基地局の設置を進めている。
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