WHILLは9月13日、歩道を走れるスクーター「WHILL Model S」の先行受注を開始すると発表した。主に“免許返納後”などのシニア層に向け、既存の移動手段で拾いきれていないニーズに対応する。
9月19日の「敬老の日」に先立ち、同日から同社ECサイトと電話や、WHILLを取り扱う全国の自動車ディーラー、「サイクルベースあさひ」などで申し込みを受け付ける。11月ごろから機体を発送する見込み。
カラーはアイコニックホワイト、シルキーブロンズ、ガーネットレッド、ラピスブルーの4色展開で、非課税、送料調整費別の価格は21万8000円~。
検討や相談する場として、有楽町マルイなどの全国20店舗にWHILL Model Sを試乗できる体制を構築する。試乗可能店舗は随時増やす方針で、試乗会も開催予定だ。
Model Sが中心顧客と定めるシニア層には、適した移動手段がないという。65歳以上の免許返納件数は年間60万件となる一方、その後の移動手段候補となるシニア向け電動アシスト自転車やシニアカーの流通台数は、計16万台弱にとどまっているという。
WHILL 代表取締役社長 CEO 杉江理氏は、3人に1人が「車の代わりになる移動手段が少ない」と回答したオンラインの自社調査を紹介し、シニア向けモビリティ市場が限定的であると指摘する。
加えて、2020年の改正道路交通法により、高齢者の運転免許証の更新などの手続きに新たに運転技能検査が導入。2022年5月13日から75歳以上かつ一定の違反歴がある場合、運転技能検査が義務化されており、合格しないと運転免許証の更新を受けることができない。
杉江氏は「例えば認知症の疑いがあると認められてしまった場合、運転免許をはく奪されるようなシステムとなっている。今までは自主的だった免許返納が強制的に行われる、といったことが今後は増えてくる」とし、シニア層の“足がなくなる”可能性を伝えた。
WHILL 事業開発・戦略室の赤間礼氏は、既存のシニア向け移動手段が選ばれない理由として「バランスが取りづらく、ふらつく」「体力的に厳しい」「見た目が古い」などの声を紹介。これらを踏まえ、時速6km以下で走行するModel Sは、電動アシスト自転車よりも安定した走行性能と、シニアカーよりも日常に馴染みやすいシンプルなデザインを特徴に設計したという。
Model Sは、7.5cmの段差を乗り越えられ、フル充電で33km走行できる。安定して歩道を長く走ることが可能だ。
レバーを握れば前進や後進、手を離せばその場でブレーキがかかり停止するというシンプルな操作性に加え、操作部は自動車に馴染みがあるアイコンを採用。運転の楽しさを演出するという。
赤間氏は、「既存のシニアカーは、例えば『前進、後進』『(速度が)速い、遅い』『(バッテリー残量が)多い、少ない』のように、漢字で表記されている。わかりやすい反面、少し老け込んだ印象を受けてしまうという声もある」とし、Model Sを安心かつ若々しいという、“まったく新しい”カテゴリーの移動手段として展開すると説明した。
「お出かけの途中でさまざまな場所に寄るなどライトに楽しんでもらいたいが、おそらく一番多い活用シーンは買い物。前方には耐荷重4kg、容量12リットルのバスケットを標準装備しており、申し分なく使える」(赤間氏)という。
Model S 紹介ビデオ
Model Sとともに、本人と家族に対してより安心かつ快適な移動体験を提供すべく、「WHILL Family App」を開発。IoTモジュール「WHILL Premium Chip」を活用し、本人と家族はスマホアプリから機体の位置情報やバッテリー状態、お出かけ記録などの外出情報を共有できる。
保険やロードサービス、メディカルアシストがセットになった既存のサポートサービス「WHILL Smart Care」と組み合わせ、Model Sだけのプレミアムなサービス「WHILL Premium Care」として提供する。年額利用料(税込)は2万6400円。
なお、WHILL Premium Careを利用するためにはWHILL Premium Chip搭載の機体である必要がある。搭載機体の納品およびサービス開始は2023年1月以降になる予定だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス