Appleの製品イベント「Far Out.」で発表された「Apple Watch Ultra」は、Apple Watchシリーズにおける、ここ数年で最大の変化と言えるかもしれない。発売日は、同日に発表された「Apple Watch Series 8」の1週間後となる、9月23日だ。その見た目と価格から、Apple Watch Ultraは間違いなく、万人向けのモデルではない。
Apple Watchのラインナップは、iPhoneと同じように少しずつ拡大してきた。以前は1年に1つのペースで新モデルが追加されていたが、手頃な価格の「Apple Watch SE」は「Series 6」とともに2020年に登場した。この流れに逆行するのがApple Watch Ultraだ。値段は高くなったが、ファッション性を重視した「Edition」とは異なり、機能性と耐久性に重点が置かれている。サイズもApple Watchの中では飛び抜けて大きい。
Apple Watch SEやApple Watch Series 8と並べてみると、Apple Watch Ultraはまるでカシオ計算機の「G-SHOCK」のApple版だ。本体から張り出したサイドパーツに押し込まれた竜頭(Digital Crown)とサイドボタン、巨大なケース、角が丸くなったフラットディスプレイによって、過去のどのApple Watchよりも冒険的なデザインになっている。
しかし過去モデルと並べてみると分かるが、劇的にデザインが変化したわけではない。独特の見た目は、ボリューム感のあるデザインや大胆なデザインを好む層には受ける可能性さえある。控えめなデザインだったEditionモデルと比べると、見た目のインパクトは大きい。
Apple Watch Ultraは49mmのチタニウムケースと平らなサファイア前面クリスタルを採用している。ディスプレイは明るくなり、最大輝度は2000ニトだ。新しいアクションボタンが追加され、スピーカーが改善。見やすく堅牢なデザインとなった。GPSのみのモデルはなく、GPS+セルラーモデル一択となる。数多くの新機能も搭載された。
最大のポイントは、バッテリーが大幅に強化されたことだ。バッテリー不足はApple Watchがデビュー以来、一貫して抱える課題だった。一般的なApple Watchのバッテリー駆動時間は約1日半だが、Apple Watch Ultraでは通常の使用で36時間、機能を絞った低電力モードでは最大60時間となっている。
視認性が高く、屋外での活動に適した「ウェイファインダー」文字盤も新たに採用された。
Apple Watch Ultraは筆者の太い手首に着けても大きいと感じる。しかし重さは思っていたほどではない。この時計の見た目、特に機能性を重視したバンドは、筆者の感覚ではかなり冒険的なデザインだ。
2021年に発売されたApple Watchでは、予想されていたほどの大胆なデザイン変更がなかった代わりに、画面が大きくなった。それと比べると、Apple Watch Ultraはデザイン面で大きな変化があった。ディスプレイの前面は平らになり、本体の片側に竜頭とサイドボタンを格納する突起部分が作られ、反対側にはカスタマイズ可能なボタンが追加された。
この2つのボタンは使いやすいが、突き出たDigital Crownについては正直、微妙だ。もちろん、Appleがこのデザインを採用した理由は分かる。この方が水中でグローブやギアを装着した状態でも使いやすいのだろう。
専用バンドも一新され、ウェットスーツの上からでも装着できる波状のゴム製「オーシャンバンド」、従来の「スポーツループ」を改良したような、軽量で伸縮性のある「トレイルループ」、チタニウムのG字フックでフィット感を自由に調整できるポリエステルの「アルパインループ」の3種類が用意された。どれも特定のスポーツシーンでの使用を想定しているようだ(特に黄色いオーシャンバンドはワイルドな印象を受ける)。
リニューアルされた「コンパス」アプリは、縮尺の変更、コンパスウェイポイント、バックトレース機能などを搭載し、非常に面白そうだ。また、Apple Watch Ultraは高精度2周波GPS(L1とL5)を組み込んでいるため、他のGPSスマートウォッチを大幅に上回る精度で位置を把握できる可能性が高い。
同日に発表されたApple Watch Series 8には、皮膚温センサー、自動車の衝突事故を検出する高度なモーションセンサーに加えて、標準モデルで最大36時間のバッテリー駆動時間を実現する低電力モードが追加された。これらの機能はすべてApple Watch Ultraでも利用可能だ。
Apple Watch Ultraに向いているのは、どういう人々だろうか。Garmin製スマートウォッチの愛用者は興味を持つだろう。つまり、ランニング用のスマートウォッチや、充電なしで週末中ずっと使えるスマートウォッチを求めている層だ。
新しいコンパスアプリは、携帯電話の電波がなくてもGPSだけで地点情報を記録する機能や、移動したルートを表示する機能などをApple Watch Ultra向けに提供している。こうした機能はApple Watch Ultraの大きな魅力となり得るだろう。水中での使い勝手も向上した。新たに設けられたアクションボタンを使えば、タッチスクリーンを使わずに、お気に入りのアクティビティに直接アクセスできる。ショートカットのためにボタンだらけのスマートウォッチを検討していた本格派のランナーにとっては、決め手となり得る機能だ。
しかし新たな機能が追加された分、価格も引き上げられているため、購入を検討する人は限られるだろう。「iPhone Pro」や「iPad Pro」がそうだったように、Apple Watch Ultraの革新的な機能の一部は、いずれApple Watchの他のモデルにも採用されるかもしれない。
Apple Watch Ultraは、他のモデルにはない安全機能も搭載している。道に迷ったり負傷した時などの緊急事態に大音量で知らせるサイレン機能はそのひとつだ(この機能はAppleのデモルームでは試せなかった)。防水性能も強化されており、「WR100」の耐水性能を備え、スキューバダイビングアクセサリーの標準規格である「EN13319」に準拠している。
Ultra専用のアプリもいくつか用意された。例えば「Oceanic+」は、Apple Watch Ultra用に開発された新しいダイビングアプリで、潮の干満や水温を調べたり、水深や各種の測定値を記録したりできる。Apple独自の水深検知アプリもある。サイドボタンはダイビング中も使えるので、水中でも地点情報を設定可能だ。
筆者はダイビングやハイキングの愛好家ではないが、Apple Watch Ultraのバッテリー駆動時間には大いに引かれる。実際の性能は使ってみないと分からないが、充電なしで何日も使えるApple Watchは、筆者が長年求めてきたものだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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