「1年以内のプラチナバンド再割当て」求める楽天モバイル、競合3社を痛烈批判--焦り鮮明 - (page 3)

 あくまで今回の会合のみによる評価ということになるのだが、気になるのは楽天モバイル、ひいては矢澤氏のスタンドプレーが際立っていることだ。実際、有識者との意見交換に際しても、他社への質問に関して矢澤氏が間に口をはさみ意見や要望を発言するケースが少なからずあった。

 また楽天モバイルの説明に関して、4Gのエリアカバーを主目的としているにもかかわらず5Gの展開のためプラチナバンドが必要と主張していたり、衛星通信を活用した「スペースモバイル計画」に、現在地上での利用に限定されているプラチナバンドの連携を打ち出したりしていたことなどについて、一部の有識者から疑問の声が向けられる場面もあった。そうした様子を見ていると、楽天モバイルがプラチナバンド獲得のためやや勇み足を踏んでしまっている印象も受けたというのも正直な所である。

同会合の楽天モバイル提出資料より。楽天モバイルはプラチナバンドをスペースモバイル計画に活用することも打ち出していたが、プラチナバンドはまだ宇宙での利用に関して議論が進められていない
同会合の楽天モバイル提出資料より。楽天モバイルはプラチナバンドをスペースモバイル計画に活用することも打ち出していたが、プラチナバンドはまだ宇宙での利用に関して議論が進められていない

 なぜそのようなことになっているのかというと、議論が楽天モバイルの思惑通りに進んでいないことが大きいのではないかと考えられる。先にも触れた通り、このタスクフォースは従来非公開で進められていたため筆者もその内容を知る術はないのだが、これまでの会合で楽天モバイルが想定しているスピード感で議論が進んでいない、あるいは同社の主張があまり受け入れられていない可能性が高いのではないかと考えられる。

 一方で、筆者はこのタスクフォース開催以前に矢澤氏から話を聞く機会があったのだが、その際矢澤氏は、プラチナバンドの獲得を楽天モバイルの最も重要な経営課題に掲げており、獲得のためには特定の1社からプラチナバンドを奪うことも辞さないとの姿勢を当時から見せていた。にもかかわらず議論が進まないことで焦りが出てきていることが、矢澤氏の一連の行動にも現れているのではないかと筆者は感じている。

 ただ正直な所、周波数の利用効率を考えるならばプラチナバンドの細分化はあまり好ましい手段とは言えない。仮に今回楽天モバイルの主張が通った場合、今後もし楽天モバイル以外の新規参入事業者が現れ同様のプラチナバンド再割当てを要求するようなことがあれば、それが前例となって周波数の細分化が深刻なものとなる可能性もあるからだ。

 実際、現在NTTドコモとKDDIが利用している800MHz帯も、元々は他にも複数の事業者が利用しており細分化していたものを、企業再編を経て2社に利用が集約されたのを機として一度効率化を図るため、多くの時間とコストをかけて再編したという経緯がある。周波数の利用効率を維持するならば、細分化が進むような割り当ては可能な限り避けるべきだろう。

 一方で楽天モバイルが他の1社からプラチナバンドを奪うとなれば、企業間で非常に大きな禍根が残るだけでなく、現在そのサービスを利用している利用者にも非常に大きな影響が出てしまうことから、ユーザー保護の観点からするとあまり好ましいとは言えない。だからといって他の周波数帯から楽天モバイルに割り当てる空きが出る可能性も高いとはいえず、唯一プラチナバンドで空きができる845〜855MHzと930〜940MHzに関しても、3GPPで標準化されている周波数帯から外れ既存のエコシステムが生かせないことから、楽天モバイルも割り当てを希望しないと宣言している。

 そうした状況を考慮するに、今後も事業者間による話し合いだけで結論を出すのは困難であり、行政主導で何らかの思い切った判断を下すしか道はないだろう。そしてその判断からは日本政府がモバイル通信で何を重視し、何を切り捨てるのか、その結果としてユーザーに何がもたらされるかが明確に見えてくることとなる。それだけに今後のプラチナバンド再編の行方は、非常に大きな関心を呼ぶこととなりそうだ。

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