これだけのメリットがありながら、なぜ折りたたみスマートフォンは主流の端末となっていないのか。新しい技術には新しい問題があり、それらの解決には時間がかかる。つまり、折りたたみスマートフォンが一般的なユーザーにとって価格面でも機能面でも魅力的な存在になるまでには、多くの試行錯誤が必要となるのだ。
CanalysのリサーチアナリストRunar Bjorhovde氏は、「消費者が折りたたみスマートフォンを購入する際に大きな障壁となるのは、端末の価格、堅牢性や機能面の信頼性、そして折りたためるという特徴に価値を見い出せるかどうかだ」と指摘する。
折りたたみスマートフォンの価格は、安くて1000ドル(約13万円)、高いものでは2000ドル(約27万円)もするため、現時点では、はるかに安い一般的なスマートフォンとの競争に勝つことは難しい。
IDCのPopal氏は、折りたたみスマートフォンが市場の主流となるためには、価格が大幅に下がり、平均販売価格が400ドル(約5万4000円)を切る必要があると指摘する。これは世界のスマートフォン出荷台数の70%以上を占める価格帯だ。しかしデバイスメーカーにとって、この規模の値下げを実現することは大きな挑戦となる。
市場に参入する企業が増え、需要がさらに高まれば、価格は下がるかもしれない。それまでは価格の高さがネックとなって、一般的な消費者には敬遠されるだろう。
初期のモデルにも問題があった。サムスンは2019年に初の折りたたみスマートフォンを発売して以来、市場の先駆者として活躍している。最初のプレーヤーはさまざまな問題に直面するもので、ディスプレイの割れ、気泡、傷といった不具合が生じた。
初の折りたたみスマートフォンを発表して以来、サムスンは製品の開発、改良、販売にいそしんできた。CanalysのBjorhovde氏によると、2021年に出荷された折りたたみスマートフォンの90%以上がサムスン製だったという。その成長ぶりはすさまじく、2020年と比べるとサムスン製折りたたみスマートフォンの出荷台数は4倍以上に増えている。
中国のOPPOとHonorも、「OPPO Find N」と「Honor Magic V」で折りたたみスマートフォン市場に参入した。この市場は確かに成長しているが、折りたたみスマートフォンが信頼できるモデルとして安定した地位を築くまでには時間がかかるだろう。
ただし、この市場にAppleが参入すれば、信頼性は大きく高まる。「Appleには、新しい市場に『火』をつける特別な力がある」とStrategy AnalyticsのMawston氏は言う。
Appleが折りたたみスマートフォン市場に参入する可能性をめぐっては、様々な臆測が飛び交ってきた。Mawston氏は、「Appleは2025年までに米国で『iFold』を発売する」と予測する。この市場は、Appleが無視し続けられないほど急速に成長している、と同氏は言う。
たとえ街中で見かける機会は少なくても、折りたたみスマートフォンは確かに勢いを増している。需要が拡大すれば、新たな企業が参入し、端末の価格は下がり、手に取りやすくなるだろう。
折りたたみスマートフォンをあらゆる場所で目にするという状況が生まれるまでには、あと2、3年はかかるかもしれない。しかし、テクノロジー企業が次の大きなトレンドとして精力的に取り組むなら、数年後には多くの人が折りたたみスマートフォンを持ち、超大型ディスプレイを楽しんでいたとしても意外ではない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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