ポケットからはみ出すほど大きな画面を持つスマートフォンが登場するまで、世界には「フリップフォン(折りたたみ式携帯電話)」というものが存在した。
通話とテキストメッセージ送信程度の機能しかなかったが、この二つ折りの携帯電話は手のひらに収まるほど小さかった。
その後、機能面の「スマート化」が進むにつれて、電話自体も大型化していった。
そして今、最新のスマートフォン技術と、コンパクトな折りたたみ式デザインの利便性を併せ持った、「折りたたみスマートフォン」という新たな波がやってきた。スマートフォン業界の未来は、折りたたみスマートフォンにあるのだろうか。
IDCのレポートによると、折りたたみスマートフォンには一定の需要があり、昨年の出荷台数は710万台に上った。2020年は190万台だったことを考えると劇的な増加だ。2025年には出荷台数は2760万台まで増え、290億ドル(約3兆9000億円)規模の市場に成長するとIDCは読む。
「折りたたみタイプの人気は今後も続くだろう。この種のスマートフォンには、サイズ面の特徴が生み出す唯一無二の価値があるからだ」と、IDCでワールドワイドトラッカーチームのリサーチディレクターを務めるNabila Popal氏は言う。IDCの予測では、折りたたみスマートフォンは2022年だけで前年比80%の成長を遂げ、出荷台数は1300万台に迫る見込みだ(目覚ましい数だと思うかもしれないが、2025年の時点でも、折りたたみスマートフォンがスマートフォン市場全体に占める割合はおそらく2%にも満たない)。
折りたたみスマートフォンの市場が今後も拡大するとすれば、その魅力はどこにあるのか。最大のセールスポイントは、画面サイズで妥協せずに、小さなスマートフォンを手に入れられることだ。完全に開いた状態での画面サイズは、普通のスマートフォンより大きい場合さえある。問題は、この利点が価格に見合うかだ。
折りたたみスマートフォンには、縦方向に開閉するフリップ型と、横方向に開閉するフォールド型がある。フリップ型は、ハンバーガーのように中央部分で上下に開き、フォールド型は、ホットドッグのように中央部分で左右に開く。
フリップ型の画面は、開いた状態だと一般的なスマートフォンより少し大きく、閉じると半分のサイズになる。例えばサムスンの「Galaxy Z Flip3」のメインディスプレイは、開いた状態だと6.7インチ、折りたたんだ時のカバーディスプレイはわずか1.9インチだ。
フォールド型には、さらなるメリットがある。それは、一般的なスマートフォンよりも画面が「格段に」大きいということだ。中には、開くと画面がタブレット並みの大きさになる機種さえある。サムスンの「Galaxy Z Fold3」は、開いた時のメインディスプレイは7.6インチ、閉じた時のカバーディスプレイは6.2インチだ。参考までに、筆者が所有する「iPhone 11」のディスプレイは6.1インチで、サブディスプレイは当然ない。
Galaxy Z Fold3には、半開きの画面に合わせてアプリのレイアウトが自動調整される「フレックスモード」というユニークな機能も備わっている。
この機能はストリーミングから会議まで、あらゆる場面で使える。例えば、「YouTube」を観る時ならスマホを持たずに動画を楽しめる。ハンズフリーでビデオ通話をする時にも役立つし、プレゼン中や、バーチャルホワイトボードで同僚と共同作業をする際には、スタイラスペンをフル活用できる。
折りたたみスマートフォンの恩恵を受けるのは消費者だけではない。Strategy AnalyticsのエグゼクティブディレクターNeil Mawston氏によれば、折りたたみスマートフォンの普及はスマートフォン業界全体に利益をもたらす。
「大きな画面を持つ小さな端末は、消費者にとっても、デバイスメーカーや通信事業者にとっても極めて魅力的だ」と、Mawston氏は続ける。「例えば、消費者は『TikTok』の動画を大画面で見ることができる。サムスンなどのデバイスメーカーは1000ドル(約13万円)の高級モデルで増収を図り、Verizonなどの通信事業者は、毎月大量のデータを消費してくれるリッチなユーザーを取り込める」
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