ロシアのISS撤退表明、その影響は--相互依存の運用はどうなる? - (page 2)

Sabrina Ortiz (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2022年08月03日 08時00分

 ISSの設計は分解を前提としておらず、その機能は米国の軌道セグメントとロシアの軌道セグメントで相互依存している。したがって、ロシアは撤退するにしても、ISS全体の性能を妨げずにロシアのモジュールを物理的にきれいに切り離すことはできないとみられる。

 NASAの公式サイトの説明には「米国の軌道セグメントとロシアのセグメントを切り離そうとすると、外部と内部の多数の接続や、宇宙船の姿勢と高度の制御の必要性、ソフトウェアの相互依存性などにより、ロジスティクスと安全の面で大きな課題に直面することになるだろう」とある。

 ISSの分割におけるもう1つの障害は、米国とロシアがISSの資源で相互に依存していることだ。NASAによると、ロシアは、ISSの再起動、姿勢制御、デブリ回避操作、最終的な軌道離脱操作に使う、ISSのすべての推進力を供給し、一方米国は、必要な電力と太陽エネルギーを担っている。

 この問題を回避するには、ISSは推進力の代替案を模索する必要がある。元NASAの宇宙飛行士でISSの元船長、米空軍の大佐のTerry Virts大佐は、その代替案を米国が提供できると述べた。「米国は、既存の宇宙船の設計を基に、比較的短期間でISSの推進力を構築できると確信している」と同氏は米ZDNetに語った。

 ロシアがISSから撤退しても、ISSで行われる一連の研究に影響を与えるとは限らないとVirts氏は語った。「研究に必要な電力、データ、通信、科学、乗組員、貨物輸送などの機能はすべてわれわれが持っている」(同氏)

 一方、米国は既に、ロシアの協力を必要としない宇宙ステーションの長期計画を立てている。米国は、より民間商業主導の宇宙ミッションを支援する道を進んでいる。ヒューストンに拠点を置く民間企業Axiomは、ISSの引退後、ISSに代わる商用宇宙ステーション構築を目的に設立された。4月に打ち上げられた「Axiom Mission 1(Ax-1)」ミッションは、ISSに接続されるAxiomの居住モジュールの2024年の打ち上げに向けた最初のプロジェクトだ。

 ISSは引退するまで、世界の科学業界にとって貴重なリソースであり続ける。ISSはもともと、微小重力研究の実施と、月などの天体へのミッションのための資源提供のために構築されたものであり、現在でも地球軌道上最大のモジュール式宇宙ステーションだ。

 ISSは打ち上げられて以来、宇宙探査と研究の大きな進展を促してきた。2022年だけでも、Ax-1が商業クルーをISSに届け、AmazonはISSで機械学習モデルを処理するためにSpaceXのFalcon 9ロケットにストレージデバイスを載せ、ISSからの地球観測データを共有するためのセンサーカメラが開発された。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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