Dave Meyer氏が訪問先の宇宙望遠鏡科学研究所で緊急のメッセージを受け取ったのは、90年代前半のことだった。
「これを見てほしい」
建物のほかの場所で、注意深く監視されているコンピューターに何枚もの画像が次々とダウンロードされていた。それを見ていた科学者たちは、画像がダウンロードされるたびに、自分たちの呼吸をより意識するようになっていった。「あれは何だ」。Meyer氏は叫んだ。自分の声が反響するのが聞こえた。気がつくと、一見小さな銀河が散在する暗い背景を見つめていた。それらの銀河は、人間の頭脳では理解できないほど遠く離れたところに浮かんでいた。
ハッブル宇宙望遠鏡が深宇宙の姿を見せてくれていたのだ。それは、胸躍る光景だった。
ノースウェスタン大学の教授で、ハッブル宇宙望遠鏡による発見を研究しているMeyer氏は、「奇妙なものを目にすることもある」と語った。銀河の様子は天文学者の予測通りで、地球の近くにある渦巻銀河や楕円銀河と異なる見た目のものもたくさんあった。そのとき、Meyer氏は自分が何を見ているのかを理解した。
これは、宇宙に打ち上げられたばかりの望遠鏡によってもたらされた、宇宙の進化の視覚的な証拠だった。同氏は、「私は本当に度肝を抜かれた」と話す。当時は、人類が宇宙のそれ以上先を見るのは不可能に感じられた。
しかし、その直後の1995年、米航空宇宙局(NASA)が最初のハッブルディープフィールドを公開すると、ハッブルは自らの記録を更新した。天の一見空白に見える部分に、なんと、はるか彼方のさまざまな銀河が含まれていることが判明したのだ。Lockheed Martinでハッブル宇宙望遠鏡のシステムおよび副プログラムマネージャーを務めるMorgan Van Arsdall氏は、「あの最初のハッブルディープフィールドの画像は革命的だった」と話す。「天の『暗い』筋を見て、いくつもの星や銀河を確認すると、宇宙について学ばなければならないことはまだまだあると実感する」(Arsdall氏)
それからの27年間で、本当に多くのことが明らかになった。「ハッブル」は、われわれが目にする遠く離れた宇宙の驚くべき画像のほぼすべてに表示される名前となった。
そして、米国時間2022年7月11日がやってきた。私たちは、さらに遠くに移動し、さらに深い部分を見ることに成功した。ハッブル宇宙望遠鏡抜きで。
先週、ほぼすべてのニュースメディアの見出しにNASAは登場した。Joe Biden米大統領が何十年も前のハッブルディープフィールドの壮観な現代版画像を落ち着かない様子で公開したからだ。その画像は、NASAの素晴らしいジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のレンズのおかげで、画質が向上していた。
そして、人々を驚かせた放送の翌日、JWSTによる美しい画像がさらに公開された。イリノイ州立大学の物理学助教授であるMatt Caplan氏は、それらの写真を最初に見たとき、「編集者が記事に載せるには不適切だと判断するような言葉を発してしまったと思う」と筆者に語った。Caplan氏の反応には、多くの人が共感できるはずだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス