Hunter Avallone氏の仕事は、「Twitch」やYouTubeで見知らぬ人々と議論することだ。Avallone氏は2021年8月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する突飛なメッセージを受け取り、驚愕した。
「コロナワクチンを接種したら、魂を奪われる。そう信じない理由は何もない」。カナダのキリスト教が熱心に信仰されている地域で育ったDavid Argentiさんは、Avallone氏に送ったメッセージにそう記した。Avallone氏は、このメッセージを配信の視聴者たちの前で読み上げた。
両者は30分以上にわたって、聖書と科学を踏まえた議論を繰り広げた。Avallone氏は事実を示し、Argentiさんから提示された聖書の一節の意味を読み解いた。議論は友好的に終わり、その1週間後、Argentiさんはワクチンを接種した。
こうしたディベート配信者が、論理やユーモア、思いやりを駆使して、極端な意見を持つ人々とつながりを築くことで、Argentiさんのような人々の考え方を変えている。Avallone氏のようなディベーターは、毎日何時間も政治や時事問題について議論しており、視聴者を誤情報の深淵の縁から救い出すこともよくある。彼らは、いってみれば、ファクトチェッカーと研究者からなる同盟の非公式メンバーで、新型コロナウイルス感染症や選挙の安全性、ロシアのウクライナ侵攻に関する事実を広めるために戦っている。
パンデミック以来、ディベート配信はTwitchとYouTubeの視聴時間の急増の波に乗り、政治的な話題によってファン層を拡大した。クリエイター向けツールを提供するStreamElementsの最高ビジネス責任者であるJason Krebs氏によると、Twitchの政治カテゴリーの視聴者数は2021年5月から2022年5月までの間に3倍に増加し、視聴時間は170万時間を超えたという。
こうした配信者たちは、政治について議論したり、討論したりすることで生計を立てている。収入源は、広告やサブスクリプション、視聴者からの寄付(数ドルから100ドル以上までさまざま)だ。
米保健社会福祉省軍医総監のVivek Murthy氏と米食品医薬品局長官のRobert Califf氏は誤情報について、米国民の健康への脅威と述べている。ある分析によると、新型コロナウイルス感染症で亡くなった人々のうち、30万人以上はワクチンを接種していれば助かった可能性があるという。ワクチン接種は、誤情報が流されることの多い話題の1つだ。
安全性と効果が証明されているコロナワクチンに対するArgentiさんの極端な見解は、Argentiさんの宗教的背景に端を発していた。Avallone氏と議論したとき、Argentiさんは22歳で、カナダのオンタリオ州南部の聖書地帯に住んでいた。Argentiさんの家族や友人たちは、キリスト教の宗派に属しており、パンデミックが猛威を振るう中でコロナ禍の制限措置に声高に反対し、大規模な対面式での礼拝を行っていた。ワクチンの提供が開始されたとき、接種に対する彼らの考え方は極端なものだった。
Argentiさんは自分の主張にほとんど疑いを持っていなかった。両親からワクチンを接種しないように促され、さまざまな文書や動画を見せられたという。Argentiさんは、今ではそれらの文書や動画をプロパガンダと呼んでいる。
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