ディベートで他者の考えを変えられることはあるが、そのためには、言葉のスキルだけでは不十分だ。
モンマス大学のコミュニケーション学教授で、政治的修辞を研究しているMichael Phillips-Anderson氏は、これらのディベートを多くの視聴者に見せても、大勢の人々の考え方を一度に変えるのにそれほど効果はないと考えている。誰かが自分の立場について考えを改めるために重要なのは、自身の信念にある程度の余白、つまり柔軟さがあることだ。
「最も大きな課題の1つは、われわれが『見解への非執着』と呼ぶものだ」と同氏。「私たちが自分の意見に固執してしまったら、何も変えることはできない。そして、一般的に、私たちは他者が間違った見解に執着しないことを望みながら生きていくが、自分が自らの見解に執着することについては、問題視しない」
その「非執着」は、ディベート配信者が他者の考えを小さな規模で変えるのに役立つ。他者とは、直接議論している相手や、情報や娯楽のためにライブ配信を探している視聴者などだ。過去のAvallone氏の保守的な信念にはある程度の柔軟さもあり、そのために他の配信者との議論で考えが変わったと同氏は述べている。
Ian "Vaush" Kochinski氏は3年以上前から、進歩的な政治動画を制作し、配信も行っている。Kochinski氏は、2019年6月にAvallone氏と議論し、同氏の政治的思想の変化に部分的に関与したと自負している。
Avallone氏と違って、Kochinski氏は話題について調査したり、ディベートの議題となる陰謀論の矛盾を突こうとしたりすることに時間をかけない。陰謀論を主張するディベート相手の中には、オンラインで簡単に見つけられる情報よりもはるかに多くの知識を持っている者もいることに気づいたという。固い信念を持つ人々と議論するときは、親しみやすさを感じさせることが重要だと同氏は感じている。
「(ディベートの相手を)説得する最も効果的な方法は、彼らを笑わせたり、彼らの予想とは違う態度で接したりして、その幻想を少しずつ壊していくことだ。彼らがおそらく思っているよりも陽気で友好的に振る舞うようにする」(同氏)
Avallone氏にとって、ディベート相手の信念の余白の部分に働きかける方法は、話に別の切り口を持ってくることだ。Avallone氏は、Argentiさんが間違っていることを証明する事実を単に並べる代わりに、より信じられる主張を展開することに焦点を合わせた、と述べている。
「人々を救い、ウイルスから守るワクチンを提供するというのが、一体どうして悪魔の邪悪な計画なのか。単にパンデミックが起きて、いつものようにワクチンを開発したということではないのか。どちらがもっともだと思う?」(同氏)
Steven "Destiny" Bonell氏は時折物議を醸す配信者であり、多くの人から、Twitchの政治的配信の事実上の創始者とみなされている。Bonell氏は2010年、Twitchの前身である「Justin.tv」でゲームの配信を開始した。同氏は、オンラインで「スタークラフト2」の大会をプレイするプロゲーマーだったが、2016年に人々と議論することに興味を持ち始め、配信で政治を語るようになった。
同氏の政治的な配信はAvallone氏とKochinski氏にも影響を与えた。Kochinski氏はBonell氏のコミュニティーのメンバーであり、独立して活動するようになった。Bonell氏自身もさまざまな人の考えを変えてきた。
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