初代「Apple Watch」が登場したのは2015年。当時は「iPhone」のアラートを表示する程度のことしかできなかったが、それから7年あまりが過ぎ、Apple Watchは高機能なフィットネストラッカー兼コミュニケーションデバイスへと進化した。しかし、改良の余地はまだまだ残されている。
現在のApple Watchは選べるワークアウトの種類も多く、ソフトウェアの操作も直感的だ。アクティビティリングの機能も中毒性があり、ついつい使ってしまう。筆者にとって、お気に入りのフィットネストラッカーであることは確かだが、欲しい機能がないわけではない。例えば一部の分野、特に身体の回復に注目した機能に関しては、AppleはOuraやFitbitといった競合メーカーの後塵を拝している。今こそ、他社に追いつく時だ。次期Apple Watchが、その助けになる出来映えであることを期待している。
通常、Apple Watchの新モデルは秋に発表されるが、6月に開催されたAppleの年次開発者会議「Worldwide Developer Conference」で、「Apple Watch Series 4」以降に搭載される新OS「watchOS 9」のプレビューが披露された。そこで、これ以外に筆者が新型Apple Watchに期待する新機能を挙げていきたい。
長年、バッテリー駆動時間はApple Watchのアキレス腱となってきた。Apple Watchのバッテリーは通常の使用でも1日半程度で切れてしまうが、Fitbitのトラッカーやスマートウォッチは1回の充電で数日は持つ。例えば「Fitbit Sense」なら、充電が必要になるまでの時間はだいたい2〜4日。米CNETがレビューしたところでは、「Fitbit Versa 3」は最長6日間持った(ただしバッテリー駆動時間は使用状況によって変わる)。
Apple Watchのバッテリー駆動時間が数日、せめて3日くらいに延びることを期待したい。これなら週末の旅行にApple Watchを持っていく時も、電源を探したり、充電器を持参したりしなくて済む。睡眠トラッカーとしての実用性も向上する。筆者はApple Watchを睡眠トラッカーとして使ったことはあまりない。バッテリーの仕様上、睡眠よりもエクササイズやアクティビティのトラッキングに向いていると感じるからだ。しかし充電が必要になるまでの時間が延びるなら、話は変わってくる。
公平を期すために言うと、「Apple Watch Series 6」と「Apple Watch Series 7」ではバッテリー駆動時間は延びなかったが、代わりに充電速度が向上した。これは、ある程度は便利だった。夜Apple Watchを着けたまま寝てしまっても、朝起きて身支度を整えている間に日中分の充電は済ませられるからだ。
ほとんどの人は、バッテリー駆動時間が短くても充電速度が速ければ問題を感じないかもしれない。しかし、筆者はアクティビティリングを閉じることを毎日のノルマとしているので、起きている間はできる限りApple Watchを着けていたい。また、朝起きて家を出るまでのスケジュール管理もApple Watchに頼っているので、充電器に置かずについ腕に着けてしまう。
来る「Apple Watch Series 8」には、新しいバッテリー節約機能が搭載されるとみられている。Bloombergによると、この新型Apple Watchにはバッテリーの消費を抑えながらも、一部のアプリや機能は実行できる新しい低電力モードが搭載されるという。実現すれば、時刻しか表示できない現在の省電力モードよりも、使える機能が増えるはずだ。Bloombergは以前、この機能がwatchOS 9に搭載されると伝えていたが、WWDCでは言及はなかった。
筆者が使っているApple Watchは、カロリー消費量からフィットネス目標の進捗状況まで、さまざまなことを教えてくれる。しかし、休息日が必要かどうかは教えてくれない。
筆者はアクティビティリングを閉じることを毎日の目標にしているので、休んだ方がよさそうな日も無理してトレーニングを続けてしまうことがある。逆に、もっとハードなトレーニングができると分かっているのに、楽なワークアウトを選んでしまうこともある。Apple Watchが、身体の兆候や最近の活動、睡眠の状態に基づいて、必要な運動を判断する手助けをしてくれたらうれしい。
OuraやFitbitのスマートウォッチは「エナジースコア」(Ouraでは「コンディションスコア」)を使って、この種の機能をすでに実現している。エナジースコアとは、その名が示すとおり、激しい運動に挑戦するだけの体力があるか、それともジムは休んで、休息を取った方がいいかを知るための指標だ。また、OuraとFitbitはエナジースコアに基づいて、ユーザーにアドバイスをしたり、フィットネス目標を調整したりする。エナジースコアが低いときは体調に気を付けて休息を取るようアドバイスし、良いスコアや平均的なスコアが出ているときは、適度な運動を勧めてくるといった具合だ。
Apple Watchは、リングが完成していない時は運動するよう促し、たくさん動いた日は褒めてくれる。しかしOuraやFitbitのエナジースコアのような、身体の回復に特化した指標はない。「マインドフルネス」アプリや「Apple Fitness+」の瞑想プログラムも役には立つが、Apple Watchのゴールや指標に最初から身体の回復に対する視点が組み込まれていれば最高だ。
大したことではないと思うかもしれないが、目標を達成するにはこうしたアドバイスが大切だ。疲れているときはエナジースコアが低く表示され、かつ無理しないようにというメッセージが届けば、気分が乗らないときは頑張らなくていいのだと再確認できる。Apple Watchのマインドフルネスリマインダーは無視されやすく、十分とは言えないが、エナジースコアは睡眠時間や活動量に基づいて体調を推測しているため、深呼吸を促すだけのリマインダーよりも説得力がある。
watchOS 9では、Apple Watchの「ワークアウト」アプリに心拍数ゾーンなどの新指標やセッション中の休憩間隔をカスタマイズできる機能が追加されるため、ワークアウトの運動強度を管理しやすくなるかもしれない。しかし、競合メーカーのアプリに搭載されているエナジースコアのような指標は、今回も期待できそうにない。
運動のモチベーションを上げるという意味では、Apple Watchは良い仕事をしている。次は、休憩の必要性に気付けるようにしてほしい。
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