2021年にはNTTドコモがIoT回線を起点とした大規模障害を発生させているだけに、同社としてもネットワーク障害に関しても慎重に進め、今回のメンテナンスについてもシミュレーションを重ねてきたというが、それでも想定し得なかった問題が発生したことは確かだろう。
ただ、一連の内容はあくまで説明会時点で判明しているもので、ルーターのどこに不具合があったのか、なぜ機器の不具合から輻輳が発生するまでの時間が対処できないほど短時間のうちに起きてしまったのかなど、会見時には判明していない部分も多いという。
それらの検証は障害の解消後に進められ、改めて説明するとのことだが、なのであればなぜ障害発生の真っ最中に、障害対応の指揮を取るべき企業のトップが、障害の詳細が分からない状態で説明会を開くのか?――という部分には疑問が残る。実際、会場に訪れた記者からは「詳細が判明してから説明した方がよいのでは」という声も少なからずあった。
KDDIが説明会を急いだ理由も、やはり官邸の意向にあるようだ。先にも触れた通り、KDDIの説明会の1時間前に金子総務大臣が会見を実施している。そして、その内容を見ると「極めて多くの方々が、長時間、利用困難な状態になったことは大変遺憾」と話しており、影響範囲の広さや回復までに要する時間の長さ、そして台風が接近しているタイミングであることなどもあって、官邸側が今回の通信障害に強い問題意識を持っている様子を見て取ることができる。
実際、金子大臣は事態の改善が進まないことから「総理からの指示を受け、昨晩から、当省の幹部をKDDIとの連絡要員として、同社の新宿KDDIビルに派遣し、対応に当たらせた」と話している。高橋氏も総務省の職員が通信障害の現場に来ることは「初めての経験」と話しており、相当異例の対応であることが分かるだろう。
無論、今回のネットワーク障害は非常に深刻なものであり、それをユーザーに迅速に伝えることには課題があったのも確かだ。KDDIは7月2日の2時にはウェブサイトに情報を掲載したというが、KDDI回線のスマートフォンを1台しか持っていない人は通信障害の影響でアクセスできない可能性があり、情報発信手段として十分とは言えない。
また、ネットワークが障害を起こしている以上、KDDI側からSMSなどで通知することもできない。そのため一部のショップでは、障害の原因が分からないユーザーが多数押し掛け、混乱する事態に陥ったようだ。そうした状況を総務省は重く見て情報発信の積極化を求めた結果、通信障害の最中に説明会を実施するという判断に至ったものと考えられる。
ただ、通信障害の原因究明が済んでいない状況では、障害の根本的な原因やその対処、そして今後のユーザーへの責任や改善に向けての対処などを見通すことはできず、このタイミングでの説明会の実施には困惑があったというのも正直なところだ。今後は通信障害への対処だけでなく、障害発生時の適切な情報発信のあり方も、業界全体で考えていく必要があるといえそうだ。
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