7名との対話を終えると、オンラインで視聴していた生徒からも質問も交えた、Q&Aタイムになった。UoCメンバーであり博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター須田和博氏がモデレーターを務め、オンラインで視聴中の生徒からも、チャットで質問を受け付けた。
まずは、「物語の作り方をどう決定していくのか。湧き出てくるものや、作りたいものがあるなかで、どうやって決めていくのか」を尋ねると、細田監督はこのように答えた。
「今日は『物語の授業』だけど、シナリオライター養成でも、脚本の作り方でもなくて、テーマは『オリジナルの企画』。企画って、短い言葉で、一言で言えたほうが伝わるの。そして、その中で面白そうって思わせることが大事。イマジナリーフレンドに乗っ取られるとか、世の中グレーなのか、白黒なのか、どっちかとか。短い文章の中に対立概念が入っていると、読ませるポイントになるっていうのはあるんだけどね。でも、今日の話は、企画会議で煮詰まってるおじさんたちじゃなくて、まさに現代を生きている若い子たちが、どういう風に世の中を見てて、どういう風に希望を持ってて、どういう風に絶望してるか、企画の中に出てきてると思うわけ。それがすごく意義あることだって思うんだよね」(細田監督)
続いて、「細田監督が普段、アイデアを出すときに意識している点は」という質問。
「たとえば、『おおかみこどもの雨と雪』は、短く言おうと思えば、狼男との間に生まれた子供をお母さんが育てる話。でも、狼男と人間っていう時点で、すでに葛藤があって、人間とは違う子供をどうやって育てるかといった困難とかも、短い文章の中にある。要は、『こういう話なんですよ』と、一言二言でまとまると、実は映画全体の構造としても非常にまとまって、美しい形になっていることが多い気がする。だから、なるべく無駄を省いて、シンプルな形にする。そうじゃないと、伝わっていかないし」(細田監督)
リアルで参加した生徒からは「細田監督の作品には、クジラがよく描かれているけど、それには何か理由があるんですか」という質問も。
「僕ね、クジラやオオカミが好きなんですよね。他の動物と全然違って、人間のイメージを勝手におっかぶせられた存在だと思う。例えば、白鯨という小説では、クジラは悪魔みたいに描かれていて、厳しい自然を象徴するものだったりする。それがいまは、自然保護の象徴で、全く違うイメージでしょ。中世ヨーロッパでは、悪者といえばほとんどオオカミ。でも本当は、クジラやオオカミは、そう思ってない。そういう動物たちの側に立ちたいなと思うし、勝手にそういうイメージをくっつけている人間の方を糾弾したいと思っていて、クジラを出したり、オオカミを出したりしてる」(細田監督)
最後に、細田監督は、「今日はYouTubeでライブ配信して、アイデアだけではなく、みんなが何を考えているのかを共有できた。それが大事なところだと思う。それに、若い人がこれだけ価値があるんだってことを、もっと世の中が知るべきじゃないかなって気がするし、本当に感心しました」と挨拶して、特別授業を終えた。
イベント終了後、「学生の素晴らしさを伝えたい」という細田監督の真意を、個別にインタビューした。
「高校生や中学生は、より強い問題意識がある印象を受けました。社会に対して、しっかりと意見を持って、ちゃんとこの社会を見ています。世の中には、大学生や高校生含めて学生を、『大人じゃないんだから』『社会のことを知らないんだから』と、ものの数に入れないような節もありますけど、そうやって思い込んでいるだけなんじゃないかなあ、という気がします。
逆に大人でも、矛盾を感じながら生きている人もいるし、全員が全員、グレーな部分を受け入れるようになるってことはありません。学生にも大人にも、この社会をしっかりと見て、もっと変化させていった方がいいんじゃないかなって、思っている人は思っているのだから、“学生かそうじゃないか”っていう区別は、する必要ないんじゃないですかね。
参政権を持っている人が、さっきの子みたいな、はっきりとした切り口で、社会に対して物を言えるのか?と考えると、それを言ったのが中学生なんだと思うと、びっくりですよね。そういう意味では、世の中捨てたもんじゃないなと思うし、やっぱり若い人が、結局この世の中を作っていく、世界を変えていくわけですよね。
僕もアニメーション映画を作っている時に、若い人を主人公にするのは、僕らのような古い人間の作った世の中を若い人がぶち壊して、新しい世界を作ってくれるであろうと期待して、若い人を主人公にしているから、僕らが若い人に励まされるような気持ちになりました」(細田監督)
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