シャープ、AIoT戦略企画チームを立ち上げ--事業の枠を越え新商品創出へ

 シャープ代表取締役社長の戴正呉氏は11月14日、社内イントラネットを通じて、毎月恒例となっている社員に向けたメッセージを発信した。

 今回のメッセージは、「新たな挑戦、飛躍的成長に向けて」と題し、2017年度上期決算の報告のほか、8KエコシステムやAIoTの取り組みなどについて言及した。

 最初に戴社長は、10月27日に発表した2017年度上期決算について説明。「2017年度上期は、3年ぶりに当期純利益の黒字化を達成。さらに、5月に公表した業績予想を、売上高、利益ともに上回り、四半期単位では、2016年度第3四半期から、4四半期連続で当期純利益黒字を達成した。つまり、1年を通して黒字を達成した。また、2017年度通期業績予想の上方修正も発表した」と述べた。

 決算内容に対して、記者やアナリストから、「順調な業績回復がうかがえる決算」といった声や、「『有言実現』がしっかり果たされた」などの評価が出ていたことに触れながら、「好決算の要因は、国内および海外、そして、すべてのセグメントで対前年伸長を成し遂げ、全社で前年同期比20%以上の売上拡大を達成したこと、想定を上回るコストダウンができたことにある」と総括した。

 一方で、記者やアナリストからは、「下期以降も継続的に増収増益を達成できるか注視したい」といった指摘や、「AIoT、8Kエコシステムでの実績や、それらに関連する新規事業の創出に着目したい」といった声など、今後の成長に注目する声が数多くあがっていることを示しながら、「これは、私たちが、今後、成し遂げなくてはならない大きなテーマであり、下期には、具体的な成果を必ず示していこう」と呼びかけた。

業務用8Kカムコーダ発表、「8Kエコシステム」に本腰

 決算内容に続いて触れたのが、「8Kエコシステム」である。

 戴社長は、中期経営計画において、映像を生成する「カメラ・編集システム」、映像を伝送する「通信・放送インフラ」、映像を映し出す「表示機器」の3つを、8Kエコシステム構築に向けた重点事業領域に設定したことに触れ、「各領域において、取り組みが着々と具体化している」として、それぞれの進捗状況を説明した。

 「カメラ・編集システム」では11月7日に、業務用8Kカムコーダを発表し、これが、シャープにとって新たな挑戦となることを示しながら、「発表会では、8Kエコシステム構築に向けた取り組み状況や業務用8Kカムコーダの特徴、当社が果たす役割、今後の展望などについて説明するとともに、同製品の開発に技術協力をしてもらったアストロデザインから、同社が手掛けるさまざまな映像機器や8K関連の取り組みについて紹介してもらった」と前置き。

 「この業務用8Kカムコーダは、世界で初めて、1台で8K映像の撮影、収録、再生、ライン出力を実現した『カメラ/記録部一体型カムコーダ』である。これまでの8Kカメラと比較して、持ち運びやすく、扱いやすいという特徴があり、格段に豊かな映像表現を実現できる。この業務用8Kカムコーダを皮切りに、映像制作機器という新たな分野に本格参入し、8K映像制作に必要な環境を早期に構築。映像コンテンツの8K化を一気に加速していきたい」と語った。

 また、発表会の出席者からは、「カメラは8Kエコシステムの入口となる要の製品で、重要な役割を果たすことが理解できた」、「既存の8Kカメラより1桁低い、思い切った価格設定に驚いた」などの声があがっていたことも紹介した。

 シャープは、11月15~17日までの3日間、千葉県の幕張メッセで開催される2017年国際放送機器展「Inter BEE 2017」において、アストロデザインと共同で出展。展示会では、業務用8Kカムコーダをはじめ、8K対応テレビ「AQUOS 8K」、業務用8K映像モニタのほか、アストロデザインの編集機器などを展示。「両社が共同で実現する放送・映像分野の8Kエコシステムを、映像制作のプロの方々に体験していただこうと考えている」と述べた。

 「通信・放送インフラ」では、業務用8Kカムコーダの発表会同日に、NTTドコモと共同で取り組んできた「5G技術を活用した8K映像の12チャンネル同時伝送実験」に成功したことを発表したことに触れた。

 「これまでのLTE(4G)では、データ量の大きさが問題であったが、5G通信を活用することによって、安定的な8K映像の複数チャンネル同時伝送が可能になる」とした。

 また、「表示機器」では、「AQUOS 8K」について説明。「AQUOS 8Kのデビューまで残り3週間を切り、大都市圏において、複数のイベントに出展したり、テレビコマーシャルを予定するなど、プロモーション活動は佳境を迎えている。今月下旬から販売店への配荷を開始し、12月1日の発売日には、大型店舗を中心に、日本全国のさまざまな店舗で、AQUOS 8Kを体験いただける予定である。さらに、AQUOS 8Kの発売に合わせて、12月1日から1カ月間に渡り、デビューキャンペーンとして『シャープ8Kテレビ誕生祭』の実施も予定している」と語った。

 戴社長は、8Kエコシステムの取り組みの発展性にも言及。「こうした3つの重点事業領域の技術を核に、AIやビッグデータ、さらには関連パートナーが持つ技術などを組み合わせて、8Kエコシステムを実現するさまざまな革新的なソリューションを創出することに取り組んでいる。たとえば、医療分野では、カイロスなどと共同で構築した8K内視鏡システムの医療現場への設置を開始しており、工業分野では、精密機器の生産現場で微細な傷を発見する検査システムを構築し、まずは、当社国内工場への導入を検討している。また、農業分野への展開を見据えて、害虫駆除や農作物の生育管理システムの構築のほか、美術館や博物館向けには、展示物と8K映像のコラボレーションによって、展示物に関する理解をより深め、新たな発見や感動を生むための仕組みづくりなどを検討している。その他にも、警備やインフラ保守、パブリックビューイングでのスポーツ観戦、教育など、幅広い分野でイノベーションの創出に向けた取り組みを進めている」と語った。

 「今後も、特徴ある技術や商品の開発に加え、ソリューション創出への取り組みを一段と加速し、1日も早く、シャープが目指す8Kエコシステムを実現することで、人々の生活や文化の向上に貢献していきたい」とした。

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