パナソニックCTO、投資拡大領域はサステナビリティとウェルビーイング

 パナソニックホールディングスは、同社技術部門の取り組みについて説明。サステナビリティおよびウェルビーイング領域への投資を拡大する考えを示した。

 2022年度には研究開発投資の63.9%がサステナビリティおよびウェルビーイング領域であったが、2024年度にはこれを82.5%にまで高める。

 パナソニック ホールディングス 執行役員グループCTOの小川立夫氏は、「パナソニックホールディングスの技術部門では、『私たちがいなければ生まれなかった世界をつくる』をミッションに、各事業会社の技術部門と一体化した活動を行っている。注力領域は、『サステナブル』な地球環境の実現と、くらしとしごとにおける『ウェルビーイング』の実現であり、これらの領域において、事業会社との連携による新たな事業機会の創出と、コア技術の磨き上げによる競争力強化に取り組む」と述べた。

パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏
パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏

 パナソニックホールディングスの技術部門は、個々の事業会社の手がおよばない領域や、事業会社の競争力強化の後押しをグループ横断的に実施することが役割となる。「グループの将来性を提示し、将来技術の強みを構築することにつなげるほか、全社の技術マネジメント、グループの現場力強化を担うことになる。各事業会社の技術責任者と一緒になって、技術および生産技術のダムを作り、それを武器としてイノベーションを創出し、中長期的事業構想の実現に資する技術により、既存事業の深化と新たな事業機会の創出に注力する」と述べた。

 サステナビリティでは、低炭素や脱炭素、RE100、循環型経済といった環境課題の解決を本業化。2022年1月に打ち出したPanasonic GREEN IMPACTでは、2050年に向けて、現時点での全世界のCO2総排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減インパクトを目指している。

 ここでは、自社バリューチェーンにおける排出削減インパクトである「OWN IMPACT」で1億1000万トンの削減を目標としているほか、既存事業による社会への排出削減貢献インパクトである「CONTRIBUTION IMPACT」で1億トンの削減、新技術や新事業による社会への排出削減貢献インパクトの「FUTURE IMPACT」で1億トンの削減目標を発表。さらに、社会のエネルギー変革に対する波及インパクトとして、「INFLUENCE」による効果も見込んでいる。

 「技術部門が責任を最も負うことになるのは、新技術や新事業によるFUTURE IMPACTである。GHG(温室効果ガス)大気放出ゼロに向けて、3~5年後の商品およびサービスづくりに貢献する技術開発や、将来のエネルギー変革を支える技術開発を進める。また、廃棄物ゼロに向けては、事業会社の循環型モノづくりをさらに進化させる技術開発や、サーキュラーエコノミー型事業の創出を目指す」とした。

 GHG大気放出ゼロに貢献するコア技術への取り組みとしては、ペロブスカイト太陽電池や水電解によるグリーン水素生成による「再エネ活用」、蓄電池やEVソリューションなどによる「需給バランス調整」、そして、パワーエレクトロニクスやヒートポンプの活用などによる「電化・省エネ」の3点をあげるとともに、それらを束ねる分散型電源管理システムであるDERMS(Distributed Energy Resource Management Systems)に取り組むという。

GHG大気放出ゼロに貢献するコア技術
GHG大気放出ゼロに貢献するコア技術

 「これらをFUTURE IMPACTと位置づけ、社会のクリーンエネルギーへの変革を加速することになる。パナソニックホールディングスの技術部門では、この領域の技術基盤に戦略投資をしていくことになる」とした。

 ペロブスカイト太陽電池では、独自のインクジェット技術を用いた大面積塗布により、太陽電池モジュールを安価に生産。30cm角では世界ナンバーワンの変換効率となる17.9%を実現。軽量、サイズフリーなどの特徴を生かして、これまで設置が難しかったビルの壁面や工場の屋根などでの利用提案を進めるという。今後、製品化に向けたロードマップを発表する予定だ。また、燃料電池の開発で培った技術や知見を生かして、希少金属を用いない水電解デバイスを開発し、水電解によるグリーンな水素生成を促進するという。さらに、DERMSでは、エネルギーの貯蔵や運搬デバイスの開発、システム開発を通じて、需要側の電力を束ねて需給バランスを調整。持続性を強化し、再エネ拡大による出力不安定への対策が図れるようになるという。北米においては、充電ステーション向けのDERMSを電力会社に提供し、実証実験を行う予定だという。

GHG大気放出ゼロを支えるキー技術の例
GHG大気放出ゼロを支えるキー技術の例

 また、廃棄物ゼロへの取り仕組みでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)を基盤としたモノづくりや、エコマテリアルの開発、リファービッシュ(再生品)の活用などに取り組むという。

弱みの1つソフトウェア開発はYohanaに学ぶ

 一方、くらしとしごとのウェルビーイングに貢献する活動では、健康維持や生産性向上、自立化および最適化といった人や社会の課題解決に向けて、人間性中心への回帰という観点からの取り組みを行うとした。

 「家電や住宅分野で培ってきたお客様接点を大切に考え、家、街、コミュニティなどの多様な人々が生活している空間において、一人ひとりが豊かな暮らしを実現できるように、身体や心、環境に応じて、快適な生活空間を実現するような社会を目指す」とし、「ひとの理解」、「アップデータブルUX」、「CPS(サイバーフィジカルシステム)」、「人協調・人共存ロボティクス」の4点から、ひと、くらし、現場の理解を軸に、ソリューション創出基盤を整備。CPSを核とした社内外との価値創出、共創のためのエコシステムを構築し、ウェルビーイングに資する技術開発や新規事業創出などに取り組むという。

 ひとの理解、ソフトウェア共通基盤、CPSコア、インタラクション・ロボティクス、センシング、MBD・シミュレーション、セキュリティの7つを、くらしとしごとのウェルビーイングを支えるコア技術と位置づけ、「パナソニックグループのDXは、くらし領域でのCPSである、といえるような取り組みにしたい」と述べた。

 ここでは、ソフトウェア共通基盤への投資に力を注ぐことを強調した。パナソニックグループでは、Panasonic Digital Platform version2を通じて、製品やサービスの体験価値を創出したり、リアルタイムにアップデートする仕組みを提供。家電を中心に24品種が対応し、600万台以上が接続されているという。

 「IoT時代におけるUXのアップデート基盤が完成した。これを横軸に展開し、躊躇なくお客様の体験をアップデートするデジタルの世界を作りたい。ユーザーファーストのアプローチによって、ソフトウェアを開発していく」という。

 また、ロボティクスを活用した搬送ソリューションでは、マニピュレーションの知能化や遠隔運用システム、感性拡張アクチュエーションなどを活用し、人手不足や非接触対応、新たなサービスの社会実装などを進めているという。

 さらに、ひとの理解による最適空間ソリューションの創出や、現場の可視化と最適化によって、経営に直結する現場課題を解決する最適オペレーションCPSの開発および実装に取り組む姿勢を示した。

 さらに、サステナビリティおよびウェルビーイング領域におけるイノベーションの加速に向けて、いくつかの取り組みを行っていることも紹介した。

 コア技術プラットフォームを用意し、各事業会社の技術責任者と定期的な会議を開催。全社共通で育てるコア技術を参加者全員で選定し、将来に価値を生む技術となるために、どんな事業を創出しなくてはならないかといったことを議論し、ロードマップとして共有するという。こうした議論をもとに、ホールディングスの技術部門における投資領域を決定しているという。また、グループCTOプロジェクトを推進し、事業会社横断や、ホールディングスと事業会社が一体となって進める長期的なテーマに対する投資を行い、事業に結びつける力を強化しているという。

 また、「パナソニックグループが、弱みのひとつと感じているソフトウェアの最先端技術に対して、力を注いでいく」とし、米国でサービスを開始しているYohanaの開発チームに、延べ数10人を派遣。ソフトウェアを軸としたビジネス構築や、顧客視点で物事を考える姿勢、開発環境をアップデートして競争力があるものに変革していくといった考え方を習得して、これを日本でも展開。「ビジネス変革のための次世代ソフトウェアエンジニア集団を育成し、ソフトウェア開発の実力を高めていく」と述べた。

最先端技術の取り込み
最先端技術の取り込み

 加えて、外部の力を活用した新たな事業創出スキームを構築。「すべてを自力でやる時代ではない。テーマによっては、世に問い、外からの資本を入れて、成長を加速するべきものもある。ベンチャーキャピタルとも連携し、カーブアウトすることも視野に入れ、独りよがりにならない価値判断基準を用いて、スピード感を持って、社会へのお役立ちをしていきたい」などと述べた。

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