5月17日に、CNET Japan×UchuBiz Space Forum 「無限に広がる宇宙ビジネスの将来~相次ぐ参入企業の狙い~」がオンラインで開催された。そのなかから本稿では、スペースデブリ問題に取り組む宇宙テックベンチャーであるアストロスケールのゼネラルマネージャー 伊藤美樹氏によるセッション「宇宙ゴミ(スペースデブリ)という世界一厄介な環境問題への取組み」の様子をお届けする。
スペースデブリは、地球周回軌道に存在する、役目を終えた人工衛星やロケットの牽引部分、およびそれらの破片などの人工物体である。宇宙開発の進展に伴って年々数は増加しており、現在活動中の人工衛星が約5800基であるのに対し、地球上から観測可能な10cm以上のデブリは3万4000個以上あると推定されていて、更に10cm以下の小さいデブリが大量に存在するとのこと。それらの鉄くずが、弾丸の20倍以上に相当する秒速7~8kmの猛スピードで地球を周回しているのだという。
この状態を放っておくと、今後宇宙ビジネスが活発になり宇宙空間が混雑していく中で、スペースデブリ同士またはデブリと人工衛星との衝突事故が多発するようになる。「それによっていずれ持続利用が不可能になるということが、世界各国のシミュレーションで明らかになっている」と伊藤氏は説明する。
例えば2009年には、デブリ化した人工衛星同士が衝突した事故が発生したが、その結果それぞれの軌道上に合計約3000個の破片が散らばり、その軌道は再生不可能になってしまったという。
「一度衝突事故が起きると軌道上にデブリが散逸し、その軌道は使えなくなる。人工衛星は、地上の道路のように決まった軌道上を何個かの衛星が回っているため、稼働中の衛星の運用にも影響が及ぶ。軌道は資源であり、使用不能になる前に対策が必要になる」と伊藤氏は訴える。
そこでアストロスケールは、宇宙交通管理のルール作り、宇宙状況の監視、デブリの回収を含めた軌道上のサービス開発という「宇宙の交通管理のインフラ作り」(伊藤氏)に取り組んでいる。同社の取り組みを地上に当てはめると、道路交通法というルールの下で、混雑や事故状況がわかる道路交通情報センターの仕組みと、事故が起きた時に速やかに撤去するロードサービスを提供するというイメージである。
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