米航空宇宙局(NASA)が進めているアルテミス計画では、月面に送り込んだ宇宙飛行士が、自分たちで育てた野菜でサラダを作れるようになるかもしれない。その前提となる歴史的な実験が行われた。科学者たちが月の表面を覆う物質、レゴリスのサンプルを使って、地球上で植物の生育に成功したのだ。
実験では、半世紀前に実施されたアポロ計画のうち、それぞれ異なる3つのミッションで採取された少量のレゴリスのサンプルに、カラシ菜と同じ科であるシロイヌナズナの種を植えた。
種は発芽し、ある程度までは成長したが、成長しきることはなかった。
「月の土壌には、植物の生育に必要な栄養素の多くが足りない」と、フロリダ大学のStephen Elardo氏が、米国時間5月11日の記者会見で語った。
Elardo氏は、Anna-Lisa Paul氏、Robert Ferl氏と共に、5月12日に学術誌「Communications Biology」で発表された研究論文の共同執筆者となっている。
シロイヌナズナには、生育の過程でストレスを受けた兆候が認められたが、研究チームが光、水、栄養素を与えたところ、早いうちに発芽したという。
「2日後には発芽し始めた」と、同じくフロリダ大学で園芸学の教授を務めるPaul氏は声明で述べている。「全部発芽した。どんなに驚いたか、分かっていただけるだろうか。月面土壌のサンプルでも、管理下の環境でも、どの苗もおよそ6日目まではほぼ同じように育った」
最初の1週間が終わる頃、レゴリスに植えた苗は生育が鈍り始め、根と葉の成長が止まり、赤い斑点も見られた。その後、遺伝子を解析したところ、この植物はストレスを受けていたことが確認された。
月のレゴリスは極めて細かいパウダー状だが、その見かけに惑わされてはならない。粒子は細かいだけでなく、尖っているのだ。月面で呼吸ができたとしても、ほこりを吸い込めば肺に傷がついてしまうおそれもあるし、植物の生育にとってもやさしいわけではない。
「最終的には、遺伝子発現データを使ってストレスに対する反応を改善する方法を見つけ、植物、特に穀物が、月の土壌で健康状態にほとんど影響を受けずに育つまでにしたい」、とPaul氏は付け加えている。
Ferl氏によると、月面で植物を生育することは、月に長期滞在するための鍵になるという。食料源になるだけでなく、宇宙飛行士や訪問者が必要とするきれいな空気や水を作り出すことにもなるからだ。
Ferl氏は以下のように語った。「宇宙のどこかに行くときには、農業も一緒に持ち込むことになる。月の土壌で植物が育つことを実証できれば、この方面における大きな一歩となるだろう」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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