その中で同社は昨年、世界初となるデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」を打ち上げている。その際には捕獲機と模擬デブリをセットで打ち上げて、軌道上でゴミを切り離して再度くっつけるという実証を行った。「昨年8月に模擬デブリの捕獲、ことし5月には模擬デブリへの誘導接近という世界初の高難度の技術実証を行っている」(伊藤氏)という。
また同社は技術とビジネスモデル開発のほかに、ベストプラクティス・規範・ガイドライン作りへの貢献を目的として、社内にルール作りのための専門チームを作り、法政策を議論する場にも参加しているという。
「宇宙の交通整理に関するルール作りについては、国連などの国際機関や政府ごとに議論がなされていて、その他にも宇宙機関や業界団体、アカデミックなど様々なレイヤーで法整備の議論がされている。ルール作りに関しては我々のような1民間企業がどうこうできる話ではないが、様々なレイヤーの議論に積極的に参加し、デブリ問題に早くから取り組んでいる企業として提言をしている」(伊藤氏)
ルール作りの提言をする傍らで、事業を加速するためのパートナーシップの構築も求めている。形としては、「宇宙参入サポート」「技術パートナーシップ」「月着陸プロジェクト」「マーケティングパートナーシップ」の4種類を用意している。
「アストロスケールは、『#SpaceSustainability(スペースサスティナビリティ)』という言葉を作って、人と地球と宇宙を持続可能にすることを目指している。SDGsの活動強化や宇宙領域への事業拡大、プロモーションでお互いにWin-Winになるような取り組みを進めていきたい」と伊藤氏は訴える。
セッションの後半で伊藤氏は、モデレーターを務めたUchuBiz 田中好伸編集長と視聴者からの質問に回答した。
まず、海外での注目度については、「非常に注目されている」(伊藤氏)とのこと。5カ国に拠点を構えていることに関しては、政府が顧客になるので国ごとに取り組む方が進めやすいという側面があると明かす。世界的にメディアに取り上げられ認知度も高まっているなかで、「衛星を所有していない国も他国の衛星を使っているので、スペースデブリは世界的な問題。私たちだけでなく世界のみんなで問題を解決していきたい」と、伊藤氏は同社の活動の重要性を訴える。
スペースデブリの放置で生ずるリスクについては、宇宙ステーションにも昨年何回かデブリが当たっているという具体例を紹介。「アームや電池のところだったが、衝突の跡が見つかっている。監視をしているので回避運用はできるが、現状において衝突の脅威はある」(伊藤氏)のだという。
最後に、伊藤氏自身の宇宙旅行に対するモチベーションについては、「いずれは行ってみたいが、今は宇宙環境を良くするために地上でできることにワクワクしながら取り組んでいる」とのことである。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」