中国政府は、ウイグル人イスラム教徒の拘束や新型コロナウイルスの起源に関する政府発の記事を「Google」「YouTube」「Bing」で検索結果の上位に表示させ、検索エンジンで国外の世論に影響を与えようとしている可能性がある。
ブルッキングス研究所と研究機関Alliance for Securing Democracy(民主主義を守るための連合)の研究チームは米国時間5月27日に公表した報告書で、「Xinjiang」(新彊)を検索すると中国発の情報が常に上位に表示されるとの調査結果を明らかにした。Xinjiangとは、イスラム教徒の少数民族ウイグル人が多く住む中国北西部の新疆ウイグル自治区のことだ。
ブルッキングス研究所は、「Google検索」「Googleニュース」「Bing検索」「Bing News」「YouTube」から、「Xinjiang」と「COVID-19」に関連するキーワード12件に関する120日間の日々のデータをまとめた。Xinjiangに関しては、検索結果の88%で、最初の10件に中国政府が関与するコンテンツが1件以上表示されたという。こうしたコンテンツの中には、米国務省が人道に対する罪と呼ぶ、中国によるウイグル族の強制的な同化政策を歪曲するものもあった。
また、「Fort Detrick」(フォートデトリック)を検索すると、この施設が新型コロナウイルスの実際の発生源だとする陰謀論を拡散する中国発のプロパガンダが大量に返ってくると報告書は指摘している。フォートデトリックは米メリーランド州にある米陸軍の医学研究施設で、1940年代初めから1960年代後半まで米国の生物兵器プログラムの拠点だった。報告書によると、YouTubeでFort Detrickを検索すると、「中国政府が関与するコンテンツが繰り返し表示され、中国国営メディアによる動画619件が上位10件に入ってくることを確認した」という。
中国ではGoogle検索とYouTubeの利用が禁止されている。MicrosoftのBingは運用されているが、同国の法律に合わせて一部のサービス要素が制限されているようだ。
中国の検索エンジン戦略は、西側のツールを利用して国外のオーディエンスに影響を与えようとする実態を示している。報告書はこうした戦術を、中国の「戦狼外交」を体現する同国外交官の強硬な主張に沿ったものだと指摘している。外交官は、ぶしつけな言葉で自国の主張を押し通そうとする。報告書は中国の検索戦術について、「国外のオーディエンスに向けた対外的プロパガンダ」を通じて「ナラティブ(物語)の優位性を主張する」ことが目的だとしている。
Googleでポリシー担当の広報マネージャーを務めるNed Adriance氏は、表現の自由のバランスを取りながら、「組織的な影響工作や検閲活動に対抗」しようとしているとコメントした。この調査で使われた一部の検索クエリーはあまり一般的ではない用語であり、中国政府の発信が検索の上位になる理由を説明できるかもしれないとGoogleは指摘した。
Microsoftは、レポートを確認していると述べた。同社は先週、Bingで北米での一部の検索に対して中国式の検閲が適用されていたと指摘された問題を修正している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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