バルミューダは、2022年度第1四半期(2022年1月~3月)業績を発表。売上高は前年同期比10.5%増の40億9200万円、営業利益が62.0%減の1億7200万円、経常利益は68.7%減の1億4400万円、当期純利益が67.8%減の9600万円となった。
大幅な減益となった点について、バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏は、「原因はシンプルで明確」と前置きし、「円安やサプライチェーンの混乱により、製品原価率が上昇。各部品の調達難が発生し、良くない状況が続いている。設計変更などにより、商品出荷を止めずにきており、設計変更はコストダウンにつながることもある」などと説明。ピンチをチャンスに変える取り組みを進めていることを強調した。
売上原価率は、前年同期の57.7%から63.5%へと、5.8ポイント悪化。営業利益率は12.3%から4.2%へと、8.1ポイントも悪化している。
円安の影響については、「第1四半期は想定した為替レートであり、利益へのインパクトはほとんどなかった。だが、今後は注意深くみて、対応策をとっていく必要がある」と述べた。
また、「売上高は国内を中心に堅調に推移。2021年11月に発売したコーヒーメーカーである『BALMUDA The Brew』と、韓国向けに投入した『BALMUDA The Range』など、キッチン関連製品が堅調であった」とした。
製品カテゴリー別売上高は、空調関連が前年同期比8.9%増の7億4000万円、キッチン関連が26.1%増の27億3200円、携帯関連が1億7700万円。その他が48.3%減の4億4100万円となった。
「空調関連では海外向けの秋冬モノの製品が伸びた。キッチン関連ではBALMUDA The Rangeが新たに加わった効果がある。その他では、クリーナーの減少が影響している。2020年11月に発売したクリーナーは、2021年1~3月に旺盛な出荷があり、韓国市場向けも初期ロットを入れた。2022年度はそれがだいぶ落ち着いたのが原因である」と説明した。
地域別売上高は、日本が19.1%増の29億500万円、韓国は26.5%減の7億1500万円、北米が70.1%増の1億6000万円、その他が60.3%増の3億1100万円となった。北米での大幅な成長については、「現地にマーケティングチームが行けないなか、デジタルを活用し、粘り強くやってきたプロモーションが効いてきた」と自己分析した。
また、販管費は、前年同期の30.0%から32.3%へと2.2ポイント増加。「増加した分のほとんどが人件費である」とした。販管費の内訳は、人件費は3億7900万円(前年同期は2億7400万円)、広告宣伝費は9600万円(同1億1500万円)、試験研究費は7000万円(同6300万円)。
従業員数は前年同期の119人から152人に増加。「将来の成長へ向けた投資を継続しており、積極的な採用活動を行っている。とくに、エンジニアの採用を強化している。BALMUDA Technologiesによる技術集積度の高い商品を次々と発売していくことを打ち出しており、そのために必要なリソースである。ここへの投資は、健全だと考えている」と語った。エンジニアは前年同期の58人から、83人に増加している。
「売上げは堅調、原価が悪い、引き続き投資を続けているのが、この第1四半期の結果」と総括した。
2022年度第2四半期(2022年4~6月)については、3つの重点ポイントをあげた。1つ目は「粗利率の改善」である。ここでは、さらなる原価低減、部品調達力向上への取り組みとともに、家電商品の値上げに取り組んでいる。
「原価の高止まりし、輸送費高騰の影響も受けている。さまざまな形で、継続的に、原価低減活動をしていかなくてはならない」とし、「対策の1つに、商品そのものの再設計がある。バルミューダの商品は、寿命が長いものが多く、4~5年前に基本設計を行っている。2021年前半に開発を行っていたBALMUDA The Brewは最新の思想で作っている。この考え方でもう一度設計しなおせば、原価を落とせるものがたくさんある。すでにスタートしているが、この成果が出るには時間がかかる」と述べた。
また、「部品の原価を落とす努力をしても、さらに為替のリスクが生まれている。仕向け地の多様化により、為替リスクによる利益インパクトを最小化できると考えており、これに早急に取り組んでいる」と述べ、「商品企画については、人々と変わったことを考える企業だが、金銭感覚という意味では、概ね多くの人と一緒である。1ドル130円と想定した人はどれぐらいいただろうか。円安はバルミューダにとっては悪化方向に進む」などとした。
同社では2022年4月から、家電製品の値上げを行っている。「値上げの告知をした3月の駆け込み需要は思ったほど強くなかった。値上げによる4月の売上げ数量の減少といった影響も認知していない。ただ、注意深く見ていく必要がある」と、値上げの影響は限定的であるとしたものの、「バルミューダは低価格で売っている商品ではなく、価値で販売している商品である。バルミューダの商品は価格が高いから、少し値上げしても影響はないと思われるかしれないが、事業をしている側としては、値上げはとても怖いことである。実績がある商品ほど、値上げは怖い。怖いことはやりたくない。追加的な値上げは検討していない。社員には、この価格で頑張り抜けと指示している」と述べた。
2つ目は「アプライアンス商品の拡充。第2四半期には、家電の新商品を発表する予定であり、国内だけでなく、これを海外にも展開をしていくことになる。
現在、同社では、15商品をラインアップしているが、海外では取り扱い商品が限定されている。寺尾社長は、「日本では60%の認知率があるが、これはフルラインアップの効果もある。重点地域を決めて、面で展開していきたい。たとえば、北米市場に投入しているのは3製品だけである。販路やブランディング戦略を考えつつ、商品投入を計画している。面で見せる戦略を、いつ、どの地域に向けて展開するのかについて、詳細に計画を立て始めている。開発部門はそれに向けて準備を開始している」と語った。
3つ目は、「BALMUDA Technologiesカテゴリーへの挑戦」である。BALMUDA Phoneの継続的な価値向上に取り組む姿勢を示しながら、「BALMUDA Phoneは、これまでにも何度もアップデートを行い、数100点を改善してきた。5月中旬には大規模なソフトウェアアップデートを予定しており、さらに体験品質をあげられる。これは、生活家電では考えられなかった仕組みであり、どんどん良くなっていく。『使いやすい』といった声や、『いいよ』というユーザーの声が、他の家電商品に比べると足りていないため、これを増やしていかなくてはならない。これまでの不定期なアンケートだけでなく、今後は定期的なアンケートを実施することになる。SNSの反応を捉えて、どのアップデートが効果的であったのかも検証していく。また、専用アクセサリーも継続的に発売し、近日中に、次のアクセサリーをリリースする。後継機のためにも、諦めることなく、フルパワーで、ネバーギブアップで続けていく」とした。
BALMUDA Phoneは、ソフトバンクを通じて販売。最大で約半額に値下げするキャンペーンを2月から実施。SIMフリー版についても3月から値下げしている。「2021年11月の発売時は厳しいスタートを切ったが、値下げ以降、SIMフリー版も相応に売れており、ユーザーも増えている。使ってもらえる人を増やし、使っている人の満足度を高めたい」と述べた。
さらに、「BALMUDA Phoneは、BALMUDA Technologiesの第1号商品であり、BALMUDA Technologiesのラインアップを拡大したり、BALMUDA Phoneも次の商品にモデルチェンジしたりする。その開発も進んでいる。いまの時点で、体験価値を細かいところまで丁寧に磨いていくことが、のちに効いてくると考えている。数年後、BALMUDA Phoneは、我々の主力製品のひとつになることは間違いない」と自信をみせた。
なお、2022年度(2022年1月~12月)の業績見通しには変更がなく、売上高が前年比0.2%増の184億1000万円、営業利益が47.3%減の8億円、経常利益が46.0%減の7億9000万円、当期純利益が45.8%減の5億5000万円としている。営業利益率は4.3%、売上原価率は62.6%を見込んでいる。寺尾社長は、「原価上昇への対応は十分取ってきている。だが、計画外だったのは円安である。これが固着すると想定の数字とは異なってくる。為替はどう動くかわからない。円安が継続するのであれば、頑張り抜くしかない。計画を死守するスタンスでいきたい」とした。
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