バルミューダは、2021年度業績について発表。その席上、バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏は、2021年11月26日に発売した「BALMUDA Phone」について、一時販売停止になったこと、市場からの厳しい反応があったことなどについて言及した。
決算会見の冒頭には、「BALMUDA Phoneの一時販売停止については、多くの方々に影響を与え、ご迷惑をおかけした。申し訳ありません」と陳謝した。
寺尾社長は、「製造パートナーである京セラから、金曜日(1月7日)に、技適マークの証明に関わる疑念があるという連絡を受け、ソフトバンクとも相談の上、一度販売を停止することを決定した。3連休を挟んで、京セラが3営業日でそれに対応するソフトウェアアップデートの開発、配信準備を行った。そこには京セラの底力を感じた。1週間後(1月14日)には販売を再開することができた」と経緯を説明した。
また、「BALMUDA Phoneは、すべてが想定外だった」とし、「発売前からのネット上での逆風は、私が未熟だったのかもしれないが、まったく想定していなかった。最初は、なぜなのかという仮説を立てることもできずに、数週間、私の頭のなかの動きがストップしてしまった。そこで、さまざまな人と会い、店頭に立ち、お客様と相対するなかで、なにが起きているのかを理解しようとした。やっと仮説を立てられたのが発売後1カ月であった。ネット上の評判を見ると、現時点では、旗色が変わり始めているという実感がある。望むべき姿に少しずつ近づいているのではないかと考えている。BALMUDA Phoneによって、ブランド価値の毀損はないと考えている。おしゃれ、高級といったことに加えて、チャレンジ精神があるという評価もあり、むしろブランド認知度が高まっている」とした。
「実際には、販売状況は、私たちが望んだものに対しては乖離がある。ネット上でのネガティブな見解が大きな影響を及ぼした。だが、BALMUDA Phoneの利用者からは、生活にマッチし、顧客満足度が高いというデータも出ている。私自身も、これまで使ったスマホのなかで、一番使いやすく、とてもいい道具であり、生活が便利になった」と述べた。
さらに、「数カ月では得られない多くのことを学んだ。発表会やティザー広告では、ほかの言い方があったといえ、これまで良しとしてやってきたものだけではないという学びもあった。7年間同じトースターを売り続けるバルミューダが、BALMUDA Technologiesというカテゴリーにおいて、その変化の速さに慣れなくてはいけないという点でも学びがあった」としながら、「BALMUDA Phoneは、絶対にやってよかった。スピード感の違う世界と出会い、アプリケーションによる新たな可能性を手に入れ、技術集積度の高い新たなアイテムに関与するチャンスを得た。スマホをやる前のバルミューダにはなかった巨大な可能性を手に入れている。さらに、ネット上の声の大きさや多さにはびっくりしたが、これを見て改めて、市場にエネルギーがあることを感じた。そこに最良の提案をしていきたい。期待に応えることができたら、すごい成果が出せる。事業の可能性を感じている。大きな挑戦であり、結果オーライになると考えている」と述べた。
次期製品の考え方については、「ネットの評価はあるが、それは実際の利用者の声とは異なる。その点では、まだ第1号機の評価がどうなのかということがわかっていないと考えている。その上で、さまざまなパターンを検討し、開発を進めている。バルミューダは普通のモノを作ってはいけないと考えている。どれだけ生活がよくなるかを考えてモノを作るメーカーである。次に作るモノも普通の携帯電話ではない。やればやるほど、アプリケーションやサービスが有用であるということを感じている。ソフトウェアでもっとお客様に貢献できないかということも考えている。BALMUDA Phoneの継続的な価値向上に取り組む」とした。
なお、ソフトバンクでは、BALMUDA Phoneの価格を最大で約半額に値下げするキャンペーンを2月11日から実施。また、バルミューダでは、同社の公式オンラインストアで使える20%オフのクーポンを提供するキャンペーンを実施する。
「ソフトバンクとは、万人向けではなく、チャレンジングな製品であるという共通認識のもと、スタートしたパートナーシップである。使った人からは好評である。使う人たちをもっと増やしたい。それに向けた施策のひとつである。もともと価格はもう少し安い価格で売りたかった。そこに近い価格になっている。バルミューダにとっても望ましいことである」と述べた。
バルミューダの2021年度(2021年1~12月)の業績は、売上高が前年比46.0%増の183億7900万円、営業利益が15.3%増の15億1800万円、経常利益が16.8%増の14億6200万円、当期純利益が21.7%増の10億1500万円となった。BALMUDA Phone の計画を盛り込んだ2021年5月に公表した業績予想に対しては、売上高は1.5%増、営業利益では4.7%増となっている。
「売上高と純利益は過去最高を更新。世界的なサプライチェーンの混乱や円安影響はあるものの、コストコントロールやさまざまな努力により、利益面においては計画を達成した。また、売上原価率は3.5ポイント上昇し60.2%と悪化し、営業利益率は2.2ポイント減の8.3%となったが、将来の成長に向けた新たな投資を積極的に実施し、人材を強化したなかで、この程度の悪化は仕方ないと考えている。健全な範囲内と見ている。今回の業績は、バルミューダのあるべき姿であった」と総括。
その一方で、「大手家電メーカーでは、部品の価格高騰や調達難のなかで欠品する例もあるが、バルミューダは一度も欠品していない。家電技術部門には80人のエンジニアが在籍しているが、入手できなくなったマイコンがあった場合、代替品を調査し、評価し、設計変更を行い、生産に投入するといったことを数多く行っている。これはかなりの工数がかかるものである。キーデバイスメーカーとの契約では、2年間の枠取りをし、それでも1カ月前に部品が入らないと言われる事象が何度も発生したが、それに急速に対応できる体制が整っている。この力がなかったら、過去最高の売上高にはならなかった。モノがなければ、モノが売れない。バルミューダの家電技術部門を誇らしく思っている」と述べた。
2021年度には、BALMUDA Phoneを発売したこと、同社初のコーヒーメーカーであるBALMUDA The Brewが計画の2倍の売れ行きを見せていること、旗艦店となる「BALMUDA The Store Aoyama」をオープンしたことなどにも触れた。
また、「前回の第3四半期決算発表を行った11月から3カ月を経過したが、さまざまなことが起こり、たった3カ月ともいえるし、長い3カ月でもあった。満を持して発売したBALMUDA Phoneが、販売一時停止になり、社外取締役による株式の誤発注に関する適時開示もあった。さすがの私もこうした日々を過ごすのは久しぶりである。初代のThe Green Fanを孤軍奮闘で発売した頃を思い出すような興奮と忙しさと、目まぐるしさのなかで過ごした、タフな3カ月であった」と振り返った。
製品カテゴリー別売上高は、空調関連が前年比2.2%減の33億4900万円、キッチン関連が38.4%増の96億3200万円、携帯関連が28億4700万円。照明やクリーナーなどで構成するその他が15.6%増の25億4900万円となった。
「全体的に業績予想時よりも良くなっているが、クリーナーは厳しい市場であり、計画には及ばない結果になっている」という。
地域別売上高は、日本が40.8%増の135億1400万円、韓国が101.7%増の33億1700万円、北米を含むその他が15.0%増の15億4800万円。北米だけでは4億4000万円になっている。「韓国では輸出環境が以前の状態に戻りつつあることや、コーヒーメーカーなどの新たな製品を投入したことが影響している。北米は、計画に対して2割下げている。コロナ禍において、BALMUDAのブランディングが進んでいないのが理由である」と述べた。
人件費は12億8000万円、広告宣伝費は6億5000万円、試験研究費は11億4000万円。研究開発費のうち、携帯電話端末およびソフトウェアの立ち上げに約8億8000万円をかけたという。
2022年度(2022年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比0.2%増の184億1000万円、営業利益が47.3%減の8億円、経常利益が46.0%減の7億9000万円、当期純利益が45.8%減の5億5000万円としている。営業利益率は4.3%、売上原価率は62.6%を見込んでいる。
「望ましい数値だとは思っていない。まずはこの数値からスタートするが、年内に収益化を見込みたい複数のプロトタイプが走っている。これらを早期に実行に移し、バルミューダらしい数字とし、さらに、バルミューダらしい数字を超えたいと考えている」としたほか、「原価上昇は留まらず、さらに悪化していくと考えている。メーカーと一体となった原価低減、部品調達力向上、製品開発プロセスの効率化、一部製品の値上げなどの対応をしていく」とした。
値上げについては、「これまで値上げした記憶はない。多くの家電商品が対象になり、値上げ幅はそれぞれである。価格改定は春ごろには行わなくてはならない。部品の価格上昇は、マイコンやコンデンサー、コネクタのピン、白く塗るために必要な塗料の材料である酸化チタンなど、あらゆるところに及んでいる」と述べた。
製品カテゴリー別売上高は、空調関連が前年比15.5%増の38億6000万円、キッチン関連が9.8%増の105億7000万円、携帯関連が61.9%減の10億8000万円。その他が13.1%増の28億8000万円とした。
「好調なキッチン家電を中心に頑張りたい。空調では、年内に納品できなかった加湿機や空気清浄機が年明けに売上が計上されている効果もある。また、その他カテゴリーでは新製品が控えている。携帯電話関連では、現時点では現行モデルの販売分だけを計上している。携帯電話を含めて、技術集積度が高い製品を扱うBALMUDA Technologiesカテゴリーのなかで、プロトタイピングが進んでいるものがある。だが、現時点では予算化していない。それが携帯電話関連で大きく減少している理由。いまの段階ではこの数値にしている」と述べた。
地域別売上高は、日本が5.5%減の127億7000万円、海外が15.9%増の56億3000万円。韓国は7.7%増の35億7000万円、北米が71.2%増の7億5000万円などとした。
「日本だけが唯一前年割れとなっているが、これはBALMUDA Technologiesの新製品が計上されていないため。早期に計上できるようにしたい。北米、韓国を重点地域として販売体制を強化する。北米では全国規模で展開する販売パートナーとの連携、デジタルマーケティングの活用などにより高い成長を目指す。北米は2年目で10億円を目標にしていたが、コロナ禍とはいえ、3年目で7億5000万円という計画に対しては不満である」と語った。
人件費は21.4%増の15億6000万円、広告宣伝費は1.3%増の6億5000万円、試験研究費は39.6%減の6億9000万円。研究開発費のうち、携帯電話端末関連で2億2000万円を見込んでいる。
「人件費の上昇はBALMUDA Technologiesのために、旺盛な人材募集を行ったこと、上場後に優秀な人材が集まっていることが要因である。事業は人から始まる。優秀な人が集まっていくことはうれしい。人材は最初に行うべき投資であり、いいことである。研究開発費はプロトタイピングまでは含まれているが、それ以降のものは含まれていない。今後増加することになる」などとした。
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