「0円廃止」が波紋の楽天モバイル、料金引き下げ後も好調の3社--携帯4社の決算を読み解く - (page 3)

「0円廃止」の楽天モバイル新料金プランが波紋

 その楽天モバイルを巡ってはもう1つ、楽天グループ決算発表の直前に大きな動きを起こしており、7月1日より開始予定の新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表している。これは従来の段階制プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」から、1GB以下であれば0円で利用できる要素をなくしたもので、最低でも月額1078円がかかる内容となったことから大きな波紋を呼んでいるのだ。

楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」。1GB以下の利用であれば0円で利用できる仕組みがなくなり、最低でも月額1078円かかるようになった
楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」。1GB以下の利用であれば0円で利用できる仕組みがなくなり、最低でも月額1078円かかるようになった

 楽天グループの代表取締役会長兼社長最高執行役員である三木谷浩史氏は、その発表会の席上、0円を廃止した理由について、楽天モバイルの4Gエリアが人口カバー率97%に達するなどサービスのレベルが上がった一方で「ワンプランを死守したい思いがあった」と話していた。0円で利用したい既存のユーザーをRakuten UN-LIMIT VIに留めることも検討したというが、電気通信事業法第27条のにおける、既存顧客の囲い込みを禁止する規定に抵触する可能性があるため断念したとのことだ。

楽天モバイルの新サービス発表会に登壇する三木谷氏。「0円」を廃止する理由について、サービスの充実とワンプランの維持を挙げていた
楽天モバイルの新サービス発表会に登壇する三木谷氏。「0円」を廃止する理由について、サービスの充実とワンプランの維持を挙げていた

 ただ楽天モバイルの本音は、やはり0円で利用するユーザーを廃して収益化を急ぎたいことであろう。実際楽天モバイルは2022年度の第1四半期、つまり今期を赤字のピークとして、それ以降業績を回復させ、かねて宣言していた2023年の単月黒字化を実現する方針を示している。

 そのため楽天モバイルは、自社エリアの整備を大幅に前倒ししてKDDIに支払うローミングコストのカットを急いでおり、高橋氏によるとその規模は2022年度で「500億円程度減ると思う」とのこと。それに加えて新料金プラン導入で0円を目当てとするユーザーを廃することで、加入者拡大よりも収益拡大を急ぐ方針に切り替えたといえる。

楽天モバイルを主体とした楽天グループのモバイルセグメントの業績見通し。2022年度第1四半期をピークに赤字を減少させていく方針で、新料金プランもそれを達成する狙いが大きいと見られる
楽天モバイルを主体とした楽天グループのモバイルセグメントの業績見通し。2022年度第1四半期をピークに赤字を減少させていく方針で、新料金プランもそれを達成する狙いが大きいと見られる

 実際三木谷氏も、決算説明会では「0円でずっと使われても困っちゃうっていうのがぶっちゃけの話かな。すごく正直に言って」と、本音を覗かせる場面が見られた。ただこのことは、裏を返せば楽天モバイルがそれだけ赤字解消、ひいては黒字化を急ぐ必要が出てきたともいえ、楽天グループの台所事情が厳しくなりつつある印象も受けてしまう。

 楽天モバイルのビジネス上、0円ユーザーの減少はメリットでしかないが、0円を重視するユーザーからはSNS上で大きな不満の声も挙がっているようで、同じく0円から利用可能で、「止める理由がない」と高橋氏が話す「povo 2.0」など競合サービスへ大幅に流出すれば、サービスのイメージが悪化してしまう懸念もある。

 そうしたことから今回の施策は、赤字解消を急ぐべく収益化を焦った楽天モバイルの勇み足、という印象も否めない。加入者の拡大と収益化をいかに両立するかは非常に難しい所だが、もう少し慎重な判断が必要だったのではないかとも感じてしまう。

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