その楽天モバイルを巡ってはもう1つ、楽天グループ決算発表の直前に大きな動きを起こしており、7月1日より開始予定の新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表している。これは従来の段階制プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」から、1GB以下であれば0円で利用できる要素をなくしたもので、最低でも月額1078円がかかる内容となったことから大きな波紋を呼んでいるのだ。
楽天グループの代表取締役会長兼社長最高執行役員である三木谷浩史氏は、その発表会の席上、0円を廃止した理由について、楽天モバイルの4Gエリアが人口カバー率97%に達するなどサービスのレベルが上がった一方で「ワンプランを死守したい思いがあった」と話していた。0円で利用したい既存のユーザーをRakuten UN-LIMIT VIに留めることも検討したというが、電気通信事業法第27条のにおける、既存顧客の囲い込みを禁止する規定に抵触する可能性があるため断念したとのことだ。
ただ楽天モバイルの本音は、やはり0円で利用するユーザーを廃して収益化を急ぎたいことであろう。実際楽天モバイルは2022年度の第1四半期、つまり今期を赤字のピークとして、それ以降業績を回復させ、かねて宣言していた2023年の単月黒字化を実現する方針を示している。
そのため楽天モバイルは、自社エリアの整備を大幅に前倒ししてKDDIに支払うローミングコストのカットを急いでおり、高橋氏によるとその規模は2022年度で「500億円程度減ると思う」とのこと。それに加えて新料金プラン導入で0円を目当てとするユーザーを廃することで、加入者拡大よりも収益拡大を急ぐ方針に切り替えたといえる。
実際三木谷氏も、決算説明会では「0円でずっと使われても困っちゃうっていうのがぶっちゃけの話かな。すごく正直に言って」と、本音を覗かせる場面が見られた。ただこのことは、裏を返せば楽天モバイルがそれだけ赤字解消、ひいては黒字化を急ぐ必要が出てきたともいえ、楽天グループの台所事情が厳しくなりつつある印象も受けてしまう。
楽天モバイルのビジネス上、0円ユーザーの減少はメリットでしかないが、0円を重視するユーザーからはSNS上で大きな不満の声も挙がっているようで、同じく0円から利用可能で、「止める理由がない」と高橋氏が話す「povo 2.0」など競合サービスへ大幅に流出すれば、サービスのイメージが悪化してしまう懸念もある。
そうしたことから今回の施策は、赤字解消を急ぐべく収益化を焦った楽天モバイルの勇み足、という印象も否めない。加入者の拡大と収益化をいかに両立するかは非常に難しい所だが、もう少し慎重な判断が必要だったのではないかとも感じてしまう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」