救急搬送、通報者の「場所がわからない」をなくせ--Smart119、位置情報アプリと連携 - (page 2)

救急時に脳卒中、心筋梗塞等の急性疾患を予測するAIアルゴリズム

 また、あわせてAMED(日本医療研究開発機構)が公募した「令和4年度医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)」に、「AI 救急予測アルゴリズムの実用化を目指した検証の研究開発」が採択されたことを発表した。

 今後は千葉大学と共同で、心筋梗塞や脳卒中など循環器系急性疾患のAI予測アルゴリズムを組み込んだ新たなプログラム医療機器の研究開発を推進する。

 現在の救急医療にはさまざまな課題があるが、救急出動件数は増加傾向で、年間約600万件におよぶ。また、現場到着から病院収容までの時間も同様に延長傾向にあるという。迅速に必要な医療にアクセスできないだけでなく、救急件数の増加により報告書の作成など救急隊の業務負担も増加しており、「効率化・最適化」が日本全国共通の「社会的課題」となっている。

救急の現場到着・病院収容までの時間も「延長傾向」
救急の現場到着・病院収容までの時間も「延長傾向」

 現状の119通報は、通報内容を無線や電話で伝達する「アナログ・リレー方式」が主流のため、情報の齟齬が発生することもある。また、救急隊が病院を選定して患者情報を電話で連絡し、受け入れ不可だった場合はまた一から説明して受け入れを交渉するため収容依頼に時間がかかる。

現状の課題
現状の課題
Smart119の特長
Smart119の特長
こうした社会的課題を解決するために、Smart119を開発したという
こうした社会的課題を解決するために、Smart119を開発したという

 Smart119は、音声入力や予測診断を取り入れたシステムで、指令内容をタブレットに送信するなど「リアルタイム共有方式」にすることで、正確な傷病者情報を把握できるようになる。また、受け入れ可能な医療機関のみが候補として表示されるほか、複数の医療機関に一括で受け入れ要請が可能になるなど、救命率や救急活動の質向上を目指している。

音声認識による効率化
音声認識による効率化

 今回採択された、AI 救急予測アルゴリズムの実用化を目指した検証の研究開発は、特に緊急性の高い、脳卒中・心筋梗塞疾患に対して精度の高い予測診断を可能にするという。

予測診断/AI救急支援
予測診断/AI救急支援

 脳卒中・心筋梗塞の予測診断アルゴリズムを、救急自動車に搭載したタブレットかスマートフォン端末のアプリに組み込み、救急隊がアプリにて入力した情報を元に解析された結果をネットワークを通じて病院側と共有し、病院側の受入可否の判断、医師の診断補助になることを目指す。

 予測診断アルゴリズムは、バイタルサイン、症状、既往歴、性別、年齢、発症時間、気温を入力項目とし、脳卒中・心筋梗塞(および、そのサブカテゴリ)の可能性を予測する機械学習モデルに基づくプログラムだ。医師は、その情報を元にその患者のリスクを適切に評価し、総合的に受入判断をすることが可能になる。

 また受け入れがその医療機関で決定した場合は、想定される治療に応じて手術室や血管撮影室の準備に到着前から着手でき、迅速な治療開始が可能になる。救急隊は、表示された予測確率を参考に、適切な医療機関へ搬送できるとしている。

脳卒中予測アルゴリズム
脳卒中予測アルゴリズム

 現役救急医でもあるSmart119 代表の中田孝明氏は「(Smart119は)千葉市消防と一緒につくってきた。現場の人から受け入れられ、効果があることを確認している」と説明。千葉市消防局に導入されているほか、自治体での実証実験にも取り組んでおり、病院交渉の時間短縮や病院の受け入れ先確定の時間短縮の効果が見られたという。

 Smart119は、このほかにも緊急時医師集合要請システム「ACES」、災害時をはじめ、医療事業継続支援システム「respon:sum」の開発・運用をしており、ICTによる医療の発展を通じて「安心できる未来医療を創造する」ことを目指す。

実証実験の成果例
実証実験の成果例

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