英国プレミアリーグ(EPL)は、収益のほとんどを独占的な放送契約に依存している。海賊行為の取り締まりに世界規模で取り組むのは当然のことだろう。
米ZDNetのインタビューに応じたEPLの主任弁護士Kevin Plumb氏によると、海賊行為対策は以前からEPLの重要議題の1つではあったが、優先事項として取り組まれるようになったのは、前会長Richard Scudamore氏の時代からだという。「(Scudamore前会長は)放映権の営業と並んで、海賊行為対策を優先的に扱っていた。その2つを、切っても切り離せないものだと考えていたからだ」
Plumb氏は、さらにこう続ける。「これは、どんな分野でも問題になっていることだ。スポーツに限ったことでも、ましてプレミアリーグに限ったことでもなく、映画でも、テレビ番組でも共通している。(3年前にシンガポールで)オフィスを開いたのも、それが理由の1つだった。われわれの海賊行為対策については、かなりの自負がある」
「かつては、海賊行為は裏口から公然と行われる作業だった。(中略)だが、今やわれわれは海賊行為対策の最先端におり、放送局にもファンの皆さんにも、そのことを知ってもらいたいと考えている」(Plumb氏)
Plumb氏は海賊行為への対策が大きな効果をもたらしていると考えており、国際放送契約の収益は2022年~2025年の間に最大30%増加するだろうと主張している。2022年に入ってからThe Timesが報じた記事によると、国際放送の契約は53億ポンド(約8492億円)に達し、国内の放映権料が51億ポンド(約8171億円)、広告契約は総計で105億ポンド(約1兆6830億円)に達する見込みだ。
収益の増加にはさまざまな理由があるものの、Plumb氏の考えでは、海賊行為への対策はその要因の1つというわけだ。
「われわれの海賊行為対策がその要因の1つであると自信を持って言える。ここまで取り組んでいなければ、そしてインパクト(私は特にこの分野において、プレミアリーグがインパクトを与えている最中だと考えている)がなければ、特にこの地域において、ここまで影響力を持ち、他の権利保有者と協力することにはならなかっただろう」
「いわば、船の向きを変えて、権利保有者に有利になる弾みを取り戻したようなものだ。仮に事態をただ放置していたとしたら、放映権の販売は今ほどうまくいっていなかっただろう」
Plumb氏によると、EPLの海賊行為対策プログラムは、4本の柱から成るという。すなわち、法的措置、ブロック、ロビー活動、教育・啓蒙だ。
例えば、ブロックは海賊版コンテンツの供給を最小限に抑えることを意図した手法だ、とPlumb氏は解説する。ベンダー各社とも協力して、海賊版コンテンツを検索結果から排除し、ライトユーザーから検索しにくいようにする。それと同時に、広告をトラッキングして海賊版のサイトを特定し、「収益源を根絶やしに」することを目指すのである。
「コンピューターにログオンする、あるいはスマートテレビをつけるところから、海賊版のストリーミングにアクセスするところまでの全工程を調べ尽くし、その工程のあらゆる段階を阻止して、海賊版のストリーミングにアクセスすることをできる限り困難にしようとしている」(Plumb氏)
「可能な限りハードルを増やすことを試みている。ハードルを1つ設けた場合に100人が海賊行為を断念するとしたら、ハードルを2つにするとその数は500人になるからだ」
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