シャープ新CEO呉氏が社員にメッセージを発信--「シャープの新たな歴史を築く」

 2022年4月1日付で、シャープのCEOに就任した呉柏勲(Robert Wu)氏が、4月3日に社内イントラネットを通じて社員に配信したCEOメッセージの内容が、このほど公開された。

シャープ 副会長執行役員兼CEOの呉柏勲(ゴハククン)氏
シャープ 副会長執行役員兼CEOの呉柏勲(ゴハククン)氏

 前任の代表取締役会長 戴正呉氏が、2016年8月の社長就任以来、社長メッセージやCEOメッセージとして、51回のメッセージを社員に向けて配信してきたが、呉CEOも、これを踏襲し、CEOメッセージを発信していく考えのようだ。

 第1回目のCEOメッセージのタイトルは、「CEO就任にあたって~共に、シャープの新たな歴史を築いていきましょう~」とし、日本語だけでなく、英語でも配信。英語のタイトルでは、「Upon Appointment of CEO-Let Us Create A New Chapter of Sharp's History-」とした。
 メッセージの最初には、「シャープのCEOに就任しました呉柏勲(Robert Wu)です。社員の皆さん、どうぞ宜しくお願いします」とし、まずは自己紹介を行った。

 今年45歳になる呉CEOは、1977年に、台湾の家電販売店を営む家庭に生まれ、子供の頃から家電業界に慣れ親しんできたという。「当時、日本の家電ブランドに憧れのようなものを抱いていたことをいまでも覚えている」と振り返る。

 2001年に大学院を卒業後、鴻海精密工業で10年間勤務したのち、2012年にSDP(堺ディスプレイプロダクト)に入社し、シャープで10年の勤務経験を持っている。「製造や営業、マーケティングなど、様々な経験を積み、企業経営の基礎を身につけてきた」とする。

 直近では、シャープのASEAN事業や米州事業、海外テレビ事業の責任者として、シャープブランドのグローバル拡大に取り組んできた。

 呉CEOは、「戴会長はかねてより、次期CEOには、『環境変化への機敏な対応』、『リーダーシップ』、『将来のシャープの主力となる事業の経験』、『ステークホルダーからの信頼』、『グローバル経営スキル』の5つの能力を求めると話をしてきた。今回、私が後任のCEOに指名されたことを非常に光栄に思っている」としながら、「しかしながら、私自身は、CEOとして、足らざる点がたくさんある。引き続き、自身の能力向上に努めるとともに、全力で職務に当たる所存である。社員の皆さんにも絶大なる支援と協力をお願いしたい」と述べた。

 CEOメッセージの最初のテーマにあげたのが、「私の経営方針」である。「シャープは、2016年8月以降、戴会長の指揮のもと、創業の精神である『誠意と創意』を大切に継承しつつ、次の100年に向けたトランスフォーメーションを、全社一丸となって推進し、強いブランド企業“SHARP”の確かな基盤を構築してきた。こうした方針を今後もしっかりと引き継ぐとともに、3つの観点からシャープをさらに発展させ、社員一人ひとりが、より誇りを持てる会社にし、次の世代の人々の憧れとなる会社に成長させていく」と宣言した。

 3つのポイントの1つ目が、「健康関連事業のさらなる強化」である。シャープでは、8つの重点事業分野を中心に、SDGsやカーボンニュートラルなど、社会が直面するさまざまな課題の解決に貢献することで、ステークホルダーや国際社会の信頼、共感を得ながら、持続的成長の実現を目指していることに触れながら、「足元のコロナ禍や、高齢化などを踏まえると、8つの重点事業分野のなかで、とくに、健康・医療・介護分野に大きな可能性を感じている。今後、より多面的な取り組みを展開していきたい」とした。

 プラズマクラスターやヘルシオといった商品が、単に利便性を追求するだけでなく、人々の健康的な生活に貢献していることを示しながら、「白物家電分野では、空気、水、食を中心に、独自の商品やサービスの開発を強化し、健康価値の向上に取り組んでいく」とする一方、テレビやモバイル端末、オフィス機器などによって、顧客と接点を持つ商品が数多くあることに触れ、「こうした商品の強みを活かし、日々の健康管理や健康づくりに寄与するサービス提案などにも力を入れる」と述べた。

新たに打ち出した「人(HITO)を活かす経営」とは

 さらに、100年を超えるシャープの歴史のなかで培ってきた映像技術やIT技術、センシング技術、小型化技術などの各種独自技術を活用。「こうした技術は、これから成長が期待されるデジタルヘルスの領域においても応用が可能である。2021年発売した耳あな型補聴器『メディカルリスニングプラグ』がその一例であり、今後も新たな事業の創出に積極的に挑戦していきたい」と語った。

 そして、「健康・医療・介護分野は、シャープの強みを存分に活かすことができる領域であり、私はこの健康関連事業を、スマートホームやスマートオフィスに並ぶ、SHARPブランドの新たな顔に育てていきたいと考えている」と述べた。

 2つ目が、「真のグローバル企業へ」という方向性だ。呉CEOは、自らが2017年から5年間に渡って、シャープのグローバル事業の拡大に取り組んできた経験をもとに、「シャープにとって、海外には事業拡大の余地が、まだまだあると考えている」と発言。2022年4月中には、グローバルマーケティング会議を開催して、海外事業担当者とともに、今後の販売戦略について協議を行う予定を明らかにした。

 その一方で、「今のシャープは、事業の考え方やリソース配分が日本中心になっている」と指摘。組織体制や機能、人材配置の見直しなどにより、グローバル視点での経営改革にも積極的に取り組んでいく姿勢を見せた。

 また、ここでは、SDPの子会社復帰についても言及。「世の中で、ますます役割が高まっていくディスプレイ分野における競争力強化が狙いである。シャープがテレビ事業や業務用ディスプレイ事業を安定的に展開し、グローバルで拡大していく上でも重要な打ち手の1つになると考えており、一日も早く具体的な成果につなげたい」と意欲を見せた。

 そして、「シャープを“真のグローバル企業”、そして、“輝けるグローバルブランド” へと成長させていくことが、CEOとしての私の使命である。これに向け、今後もさまざまな改革に全力をあげて挑戦していく」と強い意思をみせた。

 3つ目が「人(HITO)を活かす経営」である。呉CEOは、自らの経験をもとに、「これまでの私の経験を振り返ると、テリー創業者(郭台銘氏)や、戴会長をはじめとした幹部に、いくつもの挑戦や学びの機会をもらい、日々の業務でも、多大なサポートや指導をしてもらっていた。それが、いまの私につながっている」とし、「私自身も、社員の成長を全力で後押ししたい」との考えを示した。

 これまでの信賞必罰のポリシーを維持し、成果をあげた人にはしっかりと処遇していくの加えて、新たに「人(HITO)を活かす経営」を打ち出す。

 HITOには、「複数の専門性を持つ『Hybrid』人材の育成」、「『Innovation』が生まれる環境や風土づくり」、「社員の才能(Talent)十分に活かす適材適所の人材配置」、「優秀人材への成長機会(Opportunity)の提供」の4つの意味が込められており、この4点に重点的に取り組んでいくという。

 「若手社員とのランチミーティングを実施するなど、社員とのコミュニケーションを強化し、現場の声を経営に活かすとともに、社員のモチベーション向上につなげてたい。このような取り組みを通じて、志の高い優秀人材が生まれ、活気あふれる職場となり、新たな挑戦をし続ける企業風土をより一層育み、どんな厳しい環境下にあっても、持続的な成長ができる会社にしていきたい」と語った。

不透明な時代の中でのCEO就任「シャープの新たな歴史を築く」

 2つ目のテーマが「事業推進体制」である。呉CEO体制がスタートした4月1日付で、新たな事業体制を構築。そのポイントについて説明した。

 呉CEOは、副会長兼CEOとして、経営全般の責任を担うとともに経営戦略会議を主管。戴会長は、取締役会および人事評価委員会の議長を担当。上席常務執行役員の高山俊明氏が新設したCEOオフィスの室長に就任。会長室の機能はCEOオフィスに移管し、解消したという。また、呉CEOが海外を担当し、代表取締役社長兼COOの野村勝明氏が国内を中心に事業拡大に取り組む体制とした。

 各事業グループでは、スマートライフグループを専務執行役員の沖津雅浩氏、8Kエコシステムグループは専務執行役員の中山藤一氏、ICTグループは専務執行役員の橋本仁宏氏がそれぞれ担当。SBS(スマートビジネスソリューション)事業本部にDIS(デジタルイメージングソリューション)事業本部を統合。スマートライフグループ傘下に沖津専務執行役員を室長とするデジタルヘルス事業推進室を新設した。

 「SAS(Smart Appliances & Solutions)事業本部およびSBS事業本部では、次世代にバトンをつなぐことを狙いに、新たなリーダーに事業本部長を担当してもらうことにした」という。

 さらに、One SHARPによる集中購買を徹底するために、調達部門を一元化してきた体制を見直し、各事業グループ傘下に調達機能を配置する体制へと移行した。「One SHARPの意識や仕組みがしっかりと根づいてきたことから、事業とのさらなる連携強化を狙い、調達体制を見直した」と説明している。

 CEOメッセージの最後に、呉CEOは、「足元の事業環境は、米中貿易摩擦の深刻化やロシアによるウクライナ侵攻、円安の進展など、ますます不透明になっている。こうしたなか、シャープのCEOという重責を担うことになった。私自身、大変、身が引き締まる思いである。戴会長によるCEOの条件にもある通り、激しい環境変化のなかのなかでも強いリーダーシップを発揮し、先頭に立って、シャープの成長を牽引していく覚悟をした。私の考え方や経営戦略については、今後も引き続き、CEOメッセージなどを通じて社員に伝えていく。目標達成や困難に立ち向かう“強い決心”を持ち、“スピード”をもって変革に取り組んでほしい。ともに、シャープの新たな歴史を築いていこう」と締めくくった。

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