先週、Amazonの2カ所の倉庫で労働組合結成の賛否を問う投票が行われた。この2つの投票は異なる結果に終わったが、労働組合を求める声が高まっていることは間違いない。ニューヨーク州スタテン島で実施された投票では、米国のAmazonでは初となる労働組合が誕生することになった。アラバマ州での投票では労働組合の結成は否決されたが、これは最終決定ではない。有効性が問われている票がまだ相当数、未集計のまま残っており、今後の判断次第では投票結果が覆る可能性がある。
スタテン島のAmazon倉庫では2年前、従業員が新型コロナウイルス感染症対策の強化を求め、初のストライキを敢行した。倉庫の従業員の1人で、ストライキの計画を支援したChris Smalls氏は解雇された。その後、Amazonの幹部職員がSmalls氏を「賢明でも雄弁でもない」とあざけったメモが流出している。解雇されたSmalls氏は仲間と「アマゾン労働組合」(Amazon Labor Union:ALU)を立ち上げた。4月1日の投票の結果、スタテン島ではこのALUが新たな労働組合として倉庫の従業員を代表することになった。
Amazonでは、1年前にもアラバマ州ベッセマーの施設で小売・卸売・百貨店労働組合(RWDSU)への加入をめぐる従業員投票が行われた。この投票は反対多数で否決されたが、敗北した組合側はAmazonが投票を妨害したと主張した。連邦政府当局は、Amazonが敷地内に投票箱を設置したことで、Amazonが選挙を運営しているという誤った印象を従業員に与えた可能性があるとして、投票を改めて実施するよう勧告した。
2021年のベッセマーの選挙を皮切りに、米国ではこの1年間、労働者を組織化する動きが広がっている。スタテン島では、別のAmazon倉庫でも労働組合を結成する動きが進行中だ。Starbucksでは、米国内の150を超える店舗で従業員が組合結成投票の実施を申請し、9店舗で労働組合「Workers United」への加入が可決された。最近では、1日にニューヨーク市のStarbucksで従業員による労組結成投票が実施され、可決された。また、3月にはミズーリ州でGoogle Fiberの下請業者がGoogleの親会社Alphabetの労働組合「Alphabet Workers Union」と契約。ニューヨーク市では3月、アウトドア用品大手REIの店舗で組合結成投票が行われ、同社の店舗としては初めてRWDSUへの加入が可決された。
労働組合の結成活動が活発化している背景には、新型コロナウイルス感染症の流行によって人手不足が深刻化し、社員や時給制労働者の立場が強まっていることがある。従業員の転職や早期退職を防ぐために、企業は賃上げや福利厚生の充実を打ち出した。しかし、こうした待遇の改善はAmazon従業員の組織化を目指す人々を満足させてはいない。組合派が求めているのは休憩体制の改善であり、Amazonの倉庫で事故が多発している原因として批判を受けてきた厳しいノルマの見直しだからだ。
Amazonは1日のスタテン島での投票結果に「失望した」と述べ、組合結成投票や労働関係法の執行を担当する連邦政府機関「全米労働関係委員会(NLRB)」の行動を批判し、投票結果に対する異議申立てを検討中であることを明らかにした。
Amazonはまた、2020年に労働組合結成の動きが始まって以来、一貫して取ってきた姿勢を改めて示した。「会社と直接関係を持つことが従業員にとってベストだと考えている」と、同社は声明で述べた。
現在行われている労働運動の火種は、多くの場合、ベッセマーで最初の組合結成投票が行われる前から存在していた。しかし、ベッセマーでの投票は労働者の不満が高まっていることを初めて視覚化し、組織化を加速させることになったと法律事務所Fox Rothschildの弁護士、Andrew MacDonald氏は指摘する。同氏は雇用主に助言を行う労働問題専門の弁護士だ。
「労働組合の結成が否決されたこと自体は大きな問題ではない」とMacDonald氏は言う。「その後もこの問題は注目を集め続けている」
ニューヨーク州の選挙では組合の結成が可決され、アラバマ州の選挙もかなりの接戦となったことから気運はさらに高まっている。
Amazonの3つの拠点では、従業員が連邦政府に組合結成投票の実施を正式に申請した。先週は2つの倉庫で投票結果が集計され、4月下旬にはスタテン島の別の倉庫でも組合結成投票が行われる予定だ。
2月にはアラバマ州のAmazon倉庫の従業員に再選挙の投票用紙が送られた。3月には上述の通り、スタテン島の最初の倉庫で6日間にわたり、従業員による直接投票が行われた。
従業員による組合結成活動に対抗するため、Amazonは専門家を雇って労働組合に加入するデメリットを説明する会議を開催し、従業員に参加を義務付けた。また、従業員のスマートフォンにメッセージを送り、倉庫のあちこちに張り紙をして、従業員に反対票を投じるよう促している。
こうした会議は従業員の利益になるものだ、とAmazonは主張している。「労働組合の結成が可決されれば、すべての従業員が影響を受ける。だからこそ、説明会を定期的に開催して、従業員が疑問を解消し、組合の結成が自分たちの生活やAmazonでの仕事に与える影響を理解できるようにしている」と、広報担当者のKelly Nantel氏は声明の中で述べた。
スタテン島の倉庫で働く従業員たちは、会社側の主張に反論したために会議から外されたと訴えた。NLRBは、Amazonのコンサルタントが従業員の前で組合側のメンバーを「悪党」と表現したと報告している。
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