図面、現場施工管理アプリ「SPIDERPLUS」を展開するスパイダープラスは3月29日、東京証券取引所マザーズ市場上場から1年を経て、記者会見を開いた。代表取締役社長の伊藤謙自氏がこの間の業界、社内の変化を振り返るとともに、「ここ数年女性の活躍が目立つ」(伊藤氏)とし、女性技術者の座談会を開催した。
スパイダープラスは2021年3月30日に上場。「建設DX銘柄として上場した。東証の方のはからいか証券コードは『4192=よいくに』で、非常によいコードがもらえたと思っている(笑)。改めて市場環境を振り返ると、2018年に働き方改革の一環として労働基準法が改正されたが、建設業界は2024年3月31日までの適用猶予が与えられていた。しかしその猶予も2年後に迫っている。これにより、今までと違ってくるのは残業時間の罰則規定が設けられること。ウェビナーの開催などを通して、関係者にアンケートを実施したところ、この法改正自体を知らないという人も少数いた。法改正に伴う働き方改革は思っている以上に大きなポテンシャルがあると感じている」(伊藤氏)と業界の課題である長時間労働について触れた。
建設業界の月間平均残業時間は、2012年の82.4時間から2020年は37.3時間までに減少しているが、全産業の中でもトップクラス。「労働時間が長いことに加え、2040年には人員が287万人まで減ると予想されている。しかし建設投資額についてはほぼ横ばい。コロナの影響も受けたが、今後緩やかに回復する見込みだ。その中で、スパイダープラスは何ができるかを考えている」(伊藤氏)と建設業界の課題解決に取り組む。
SPIDERPLUSは、図面管理、写真管理、電子小黒板、報告書作成など、全工程で必至の標準機能を備える一方、総合建築、空調衛生設備、電気設備など、建設工種別の検査に対応するオプション機能を設けていることが特徴。「お客様へのアンケートを通してわかったのは、SPIDERPLUS導入後、1日平均で2.5時間の業務時間削減に結びついているということ。作業の効率化が積み重なり、生産性が向上している」(伊藤氏)と効果を話す。
現在、契約者数は1204社で、ユーザー数は約4万9000。「2021年12月の数字だが、過去最高の純増数になっている。建設DXが急ピッチで進む中、私たちは2024年4月をマイルストーンと位置付け、現場におけるデジタル活用が当たり前の世界を作っていきたい」(伊藤氏)と今後を見据える。
スパイダープラスでは、現在ある池袋のオフィスを、5月に虎ノ門へ移転する予定。4月には北海道と福岡に新たな営業拠点も構える。「2024年4月の転換点に向けて先行投資している。2020年12月に92人だった従業員数も、2021年12月には194名まで増員した。技術系のスタッフを中心に強化してきたが、今期に関しては、拡販していくためのフィールドセールスを増やしていきたい」と、明確な成長戦略を描いた。
同日には、埼玉建興の若松由華氏、三機工業の御囲祐貴氏を迎え、建設業の女性座談会を実施。伊藤氏が「ここ数年、お客様から女性の活躍を聞く機会が増え、現場に行っても女性が増えたという印象を持っている。建設業界に入っての印象は」と問いかけた。
若松氏は「大学で設計デザインを専攻し、それを活かしたいと建設会社に入社した。現在は現場監督として働いており、想像以上に楽しい」とコメント、御囲氏も「大学からの流れで建築に携わり、現場を経て、現在は現場を支援する部署にいる。現場は楽しいが、現在の部署も非常に面白い」と話した。
続けて伊藤氏「現場で大変だったことは」と聞くと「高層ビルの現場では移動の往復が大変だった」(御囲氏)とし、若松氏は「入社当時は、女性の起用があまりなく、女性が働く環境が整っていないケースもあった」と当時を振り返った。
また、「爪が割れたり、手が荒れたりするので、ハンドクリームを塗ったり、こまめに爪を切るようにしていた」(若松氏)、「夏場は紫外線が気になった。日焼け止めも塗っていたが、汗をかくので結局流れてしまう」(御囲氏)と、建設現場ならではの困りごともあったとのこと。
しかし、ここ数年で現場の状況も変化してきており、「女性専用トイレや更衣室など、女性が使いやすいように整備されてきた。意識的な改革が進められている」(若松氏)と現場の変化を話す。御囲氏はSPIDERPLUSを導入した変化として「検査の際に少人数で作業ができるようになった」と効率化を挙げた。
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