事業プラットフォームに進化した東急の共創プログラム--TAPがピッチコンテストを開催

 東急は3月22日、Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)において「2021 東急アライアンスプラットフォーム(TAP) Demo Day」を開催した。メインの事業共創ピッチコンテストには、Demo Dayにおいて過去最多となる9社のスタートアップが登壇し、最優秀賞となる「東急賞」には、冷凍パンの定期便サービス「パンスク」や「全国パン共通券」などの事業を展開するパンフォーユーが選出された。

ピッチ終了後、各賞発表後におこなわれた記念撮影の様子
ピッチ終了後、各賞発表後におこなわれた記念撮影の様子

スピード感と幅広さを備えた共創プログラム「TAP」

 TAPは2015年に、鉄道業界初のアクセラレートプログラム「東急アクセラレートプログラム」としてスタートし、これまでの7年間で東急グループ各社とスタートアップとの協業を100件以上、事業化や本格サービス導入を30件以上実現している。

 TAPの特徴は、事業共創に特化したプラットフォームであること。早期事業化を目的として常時応募を受け付けており、毎月選考を行っている。東急側の参画事業者および対象事業領域も年々増加し、今回のDemo Day実施時点でグループの27事業者(19社)および19領域という幅広いアセットと顧客接点を持つ。

 2021年度から、名称を「東急アライアンスプラットフォーム」に変更してリブランディングを実施。東急グループの“オープンイノベーションプラットフォーム”として、活動を強化している。新たにTAPのホームページに参画グループ企業が抱える課題やニーズ、目指す将来像を掲載し、各事業領域でのバリューチェーンのプロセスごとに必要な技術やサービスをリスト化して、スタートアップに求めるニーズを可視化。これにより、協業数は前年度の2倍以上となる35件に拡大している。

選ばれた9件の共創プロジェクトがプレゼン

 Demo Dayには、2021年度に実施または実施が決定した共創プロジェクトの中から選出された、「ユカイ工学×東急百貨店」「エヴィクサー×東急レクリエーション」「MOVE×東急モールズデベロップメント」「パンフォーユー×東急電鉄・東急レクリエーション・東急グルメフロント・東急リゾーツ&ステイ」「和空プロジェクト×東急電鉄」「ロスゼロ×東急百貨店・東急 沿線開発事業部」「TypeBeeGroup×東急エージェンシー・東急レクリエーション」「3rdcompass×東急百貨店」「ウゴトル×東急スポーツシステム」の9プロジェクトが登壇した。

ピッチには9社のスタートアップが登場した
ピッチには9社のスタートアップが登場した

 ピッチコンテストは、東急側の共創事業者が共創に至った背景を1分間、スタートアップが事業共創内容について6分間アピールし、最後に5分間審査員からの質問に回答するという形でおこなわれた。その結果、東急賞(賞金109万円)にパンフォーユー、渋谷賞(賞金42万8千円)にウゴトル、二子玉川賞(賞金25万円)にエヴィクサー、SOIL賞(賞金10万円)に3rdcompass、 TypeBeeGroup、MOVE、ユカイ工学、ロスゼロ、和空プロジェクトがそれぞれ選出された。当日の様子はYouTubeでもライブ配信されており、オーディエンスの投票で決定したオーディエンス賞(賞金20万円)として、ロスゼロが選出されている。

冷凍技術で食品ロスを削減するパンフォーユー

 パンフォーユーは、地域のパン屋と消費者を独自の冷凍技術とITでつなぐプラットフォームを構築している。代表的なサービスである「パンスク」は、全国の個人客に約100の契約店舗のパンを届けるサービス。冷凍の袋を使ってパンを冷凍させることで賞味期限を最大3カ月延ばすことができる仕組みと、注文管理や食品表示作業をスマートフォンで管理できるシステムを提供することにより、地域のパン屋の流通網を従来の店頭から全国へと広げつつ、食品ロスの削減に寄与するサービスをおこなっている。

 そのほかに、冷凍庫とストッカーがあればどこでもパンを販売できる法人向け事業「パンフォーユーBiz」や、パン好きで知られる女優の木南晴夏さんとコラボレーションした宅配企画、全国のパン屋で使えるオンラインのパンギフト券「パン共通券」などの事業を展開している。

プレゼンをおこなうパンフォーユー 取締役 山口翔氏
プレゼンをおこなうパンフォーユー 取締役 山口翔氏

 パンフォーユーが東急グループ4社との共創で目指すのは、「サスティナブルな社会の実現」と「地域活性化」である。まず東急電鉄とは、同社が定期券の付加価値向上を目指して実施した環境配慮型サブスクリプションサービス「TuyTuy」に参加し、パンスクの1000円クーポンを配布し、フードロス削減の啓発を実施した。

 東急レクリエーションとは、109シネマズ川崎で全国各地の冷凍パンや、上映された映画「ソードアート・オンライン」のロゴ入りパンを販売し、フードロスの削減と共に映画館で全国のパン屋のパンを販売するという新たな流通網構築に挑戦している。東急グルメフロントとは、同社が運営するベーカリー12店舗に全国パン共通券を導入し、新たなパン経済圏による地域の活性化を推進。東急リゾーツ&ステイとは、東急ステイ用賀ホテルの宿泊者向け朝食サービスとして、冷凍パンと冷凍スープのセット提供をトライアルで実施。今後他のホテルにも展開していく計画となっている。

 授賞式においてパンフォーユー 取締役 山口翔氏は、「オープンイノベーションで大企業とスタートアップが協業するケースは多いが、実はほとんどうまくいっていない。理由は、スタートアップが大企業に課題を伝え、課題を解決して欲しいというスタンスで臨むから。今回のTAPのコンセプトが、『共に、世界が憧れる街づくりを』というものだが、その中で一番大事なのが“共に”というキーワード。お互いの課題を認識して解決し合うことが重要と考えている。それを今回4社と事業提携で実現できたが、他のグループ企業とも連携の機会を作ってお互いの課題を解決し、『世界が憧れる街づくり』という東急グループが掲げるビジョンの実現に向け、これからも頑張っていきたい」と述べた。

「パンフォーユーが頭ひとつ抜けていた」--東急 髙橋社長

 審査員長を務めた東急 取締役社長 社長執行役員 髙橋和夫氏は今年のDemo Dayの総評として、「種目が広がり、事業の内容もモノを売ることから顧客の体験価値をいかに上げるかという視点に変わったことが印象的」と振り返った。東急賞のパンフォーユーに関しては、「審査員の中で頭ひとつ抜けた評価を受けた。数社と協業していることもファクターのひとつだったが、何より技術的なところで東急に限らずもっとビジネスを広げられる可能性がある。まずは当社グループとの協業領域で事業を拡大してもらいたいが、最終的には広く日本中の人においしいパンを食べてもらうことで、ウェルビーイングやソーシャルハーモニーという当社が目指す街づくりのコンセプトに合った形で成長してくれれば今回の共創プログラムは成功となるし、TAPを継続していく要因にもなる」と評価した。

リモートで審査をおこなった東急 取締役社長 社長執行役員 髙橋和夫氏
リモートで審査をおこなった東急 取締役社長 社長執行役員 髙橋和夫氏

 また、他の登壇企業に対して髙橋氏は、「もう少し違った視点で味付けすれば大化けしそうな事業も散見された。更なるブラッシュアップや協業で成長の可能性にトライしてもらうこともTAPの主目的のひとつなので、ぜひ実現してもらいたい」と期待を示した。

 渋谷賞のウゴトルは、スポーツ指導の現場において撮影された動画の編集、線やコメントによる添削、配信までの機能を備えたプラットフォーム「ウゴトル for Lesson」を提供。2021年2月から、東急スポーツシステムが運営する東急スイミングスクールあざみ野にて同サービスの実証実験をおこない、映像指導の価値や継続性を検証。その後「オンラインスイミングレッスン」としてサービス提供を開始している。

 二子玉川賞のエヴィクサーは、音を使って同時に大人数へデータを送ることができる独自の音響通信技術を活用し、映画のバリアフリー字幕をスマートグラスに表示する「字幕メガネ」を提供。今回は東急レクリエーションと、映画のバリアフリー上映を実現するために109シネマズ港北での実証実験を経て、109シネマズ全館への導入を達成した。

 オーディエンス賞のロスゼロは、作り手と食べ手をつなぐ食品ロス削減プラットフォーム「ロスゼロ」や、余剰分の食品が発生するタイミングで商品が届く「ロスゼロ不定期便」を展開する。東急が大井町エリアで運営するコミュニティカフェ「PARK COFFEE」でロスゼロ商品の販売会をおこない、その後2022年2月からPARK COFFEEでのロスゼロ不定期便の受付を開始。さらに5月には東急百貨店本店でポップアップイベントを実施する予定となっている。

 なおDemo Dayの後半では、TAP2017東急賞を獲得したWAmazingと東急 交通インフラ事業部のトークセッションがおこなわれ、コロナ禍で方針転換を余儀なくされた中で新たなサービスを共創で作り上げていったTAPプログラムの成功事例について語られた。

(左から)東急 交通インフラ事業部 課長補佐 溝渕彰久氏、WAmazing 代表取締役 CEO 加藤史子氏、モデレーターのpilot boat 代表社員CEO 納富隼平氏
(左から)東急 交通インフラ事業部 課長補佐 溝渕彰久氏、WAmazing 代表取締役 CEO 加藤史子氏、モデレーターのpilot boat 代表社員CEO 納富隼平氏

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]