共創コミュニティの「ムラ社会化」を防ぐには?--オープンイノベーション施設の運営者たちが語るリアル - (page 2)

コミュニティで得られる「メリット・デメリット」

 最後のテーマは、「コミュニティに入ることで得られるメリット・デメリットについて」。及部氏はまず、コミュニティ活動における重要ポイントとして、「つながり」「モチベーション」「知識」「影響力」の4点を挙げる。それを踏まえた上でメリット・デメリットに関しては、「目的をしっかり持って取り組めばメリットになり、目的を持たないで動くと全てデメリットになる」と表現する。

 宇野氏はメリットとして、つながりや新しい発見があることを挙げる。そこからビジネスパートナーになったり、親友になったりするという可能性が生まれる。デメリットは、人と人とのやり取りの中で面倒なことも多々発生することで、「そこはクリアするしかない」のだという。

 飛松氏は、大企業の新規事業のコミュニティを運営している立場から、参加するメリットを説明する。「大企業の社員は、『何かをしたい』『会社はこうあるべきだ』と思っていても、ほとんどの場合は行動して駄目だったわけではなく、その手前で諦めてしまっていることが多い。しかし、コミュニティの力によって、一緒に行動する仲間に出合えたり、同じ境遇の人と悩みを分かち合い、成功した他人の経験を疑似体験することで、新たな挑戦に背中を押してもらえたりすることができる」(飛松氏)

 一方デメリットについては、“ムラ社会化”することを挙げる。スタートアップ系のコミュニティは、成功した人はどんどん卒業していくため、ある程度リフレッシュしていかないと淀んだ空気になってしまうと指摘する。「慰めあうだけのコミュニティでは後ろ向きになってしまうので、いかにチャレンジングなコミュニティにしていくか、運営サイドとして気を付けている」(飛松氏)とのこと。

 この停滞期問題については、及部氏、宇野氏も強く同意する。「最初のうちはモチベーションが高いので何をしてもうまくいくが、5年、10年経つと新鮮味がなくなってどんどんコミュニティから人が離れていく」(及部氏)

 それを防ぐ策については、及部氏は「新しいヒト・モノ・コトを提供し続けることと、コアメンバーとコミュニティ参加者が“仲良くなりまくる”こと」という2つの手段を紹介する。宇野氏は、「明確な答えはないので小さいイベントをやり続けるなど、手あたり次第できることをやっている。ただその際に、人が変わるということは新鮮な刺激になる」と見解を示す。

 ARCHは開業から2年、運営の責任者である飛松氏は「まだ停滞期を迎えていない」という。しかし、その時を見据え、今年は新しく多くの自治体と関係を構築し、大企業の新規事業づくりを促進することに取り組んでいるという。またもう1つ、参画企業から参加する人を変えてもらうことも考えているとのこと。

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ARCHの飛松氏(右下)

「QUINTBRIDGE」「point 0」「ARCH」に参加して共創を

 パネルディスカッションの最後に、イベント共通の質問である「自社にとって共創の価値とは?」にそれぞれが回答した。

 及部氏は、一人でできないことをみんなで助け合って形にすることだと語る。「プライベートの時も企業で取り組んでいる時もそうだが、これからのVUCAといわれる時代に社会課題が複雑になっていくなかで、ひとり、1社でやれることには限界がある。みんなで一緒に取り組むことによって、ミッシングピースを補い合って解決していくことができれば共創としての価値になるのでは」(及部氏)

 宇野氏は、目的は及部氏が話したところと同じだと前置きした上で、自身の見解を述べる。「新しいことに挑戦する場合は、いろいろな人と一緒にやるのが効率的で一番の近道。なぜかというと、僕らだけで取り組むときには具体的にできない理由を見つけてしまうし、共創すればできる方法を持っている人と組むことができるから。その組む相手を見つける場がコミュニティ。だからこそこういうところに参加してさまざまなコミュニティにつなげたり、自らが出会うために活動をしている」(宇野氏)

 飛松氏は、「個人としても森ビルとしても、共創は新たな価値創造に最も有効なものと考えており、それが生み出されていく場が、当社の戦略エリア(六本木・赤坂・虎ノ門)であることを期待している」と話す。「共創の創出は最も注力している部分。今までにわれわれが作ってきた仕掛けや場、コミュニティを通してさまざまなモノが生まれたように、これからも共創を通じて色んな形で実績を出していきたいと思っている。それは単純にビジネスだけでなく、価値観や生活の豊かさなどいろいろなものを生み出すものであってほしい。今はARCHを運営しているが、他にもさまざまな仕掛けをしていく予定」(飛松氏)

 共創という部分では今まさに、ARCHとQUINTBRIDGEとの間でも対話が始まっているという。「大阪と東京で離れているが、オンラインツールも発展したので、価値共創をしながら色んな人や企業、アイデアを結合させて、いろいろなものを生み出していけるのではないか。コロナ禍終息と共に、新たなモノが生まれるようどんどんトライしていきたい。聴講している皆様も、QUINTBRIDGE、point0、ARCH、どこでもいいのでどんどん参加していただき、コ・クリエーションを進めていければと思う」(飛松氏)

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