日本でも盛り上がりつつスポーツ×NFTに、フェニックスバトル・パートナーズが乗り出す。販売するのは、ボクシング世界王者である井上尚弥選手初のNFT作品。動画、静止画作品をオークションで発売中だ。
フェニックスバトル・パートナーズ は、NTTぷららと共にひかりTVを運営する、放送事業会社のアイキャスト(NTTぷらら子会社)と映像制作会社であるイースト・ファクトリーによる製作委員会。「ボクシングの発展と選手を支援するため立ち上げた。NTTグループとしての強みをいかし、ICTを活用してコンテンツの価値を高め、映像事業として選手の支援につなげていくことが目的」とアイキャスト 経営企画本部の福岡貴博氏は立ち位置を説明する。
ひかりTVでは、以前から積極的にスポーツにおけるスポンサーシップ事業を展開してきた。現在は、井上選手のメインスポンサーのほか、プロライダーの南本宗一郎選手のメインスポンサー、J3のFC今治のオフィシャルパートナー務めるなど、さまざまなアスリートをサポートしている。
「ベースになっているのは、NTTぷららが創業以来持っているベンチャー精神。挑戦するマインドを強く持っている企業なので、そのスピリットとスポーツ選手の挑戦する気持ちは共鳴するものがある」(福岡氏)と説明する。
ボクシングでは、2021年12月14日に開催した井上尚弥選手、国内での2年ぶり世界タイトルマッチ「PXB WORLD SPIRITS」(ピーエックスビー ワールド スピリッツ)の映像制作、映像配信を手掛けたほか、ライブコンテンツを数多く制作。
「ボクシングは国際的な団体があり、しっかりとした基盤があるスポーツ競技。その現役の世界チャンピオンとご一緒できること自体、大変価値のあること。一方で、ボクシング選手の現状は、プロ選手でも生活のためにアルバイトに励んでいたりで、練習自体がままならなかったりと苦労している部分が多いと聞いている。選手が競技に打ち込める環境を整えるなどのサポートができないかと、取り組みを模索していた」(福岡氏)と現状を話す。
ひかりTVではボクシング試合をPPV(ペイパービュー)で配信するなど、いままであまり見なかった取り組みにも着手。映像配信会社という強みをいかした施策も試みる。
今回取り組むNFT作品もそうした施策のひとつ。「権利をしっかりと守った上で、選手と共同で作り上げられるものとしてNFT作品を作ることにした」(福岡氏)と経緯を話す。
NFT作品としてオークション販売されるのは、2021年12月14日に両国国技館にて開催した「PXB WORLD SPIRITS」に関連した動画1点(オークション開始税込価格:30万円〜)、静止画22点(同:各5万円〜)。動画作品は、井上尚弥選手が次回出場する世界戦のSS席ペアチケットが含まれる。オークション期間は4月2日まで。
「映像の新しい活用方法で、ボクシングの普及拡大に一役買えないかという思いから取り組み始めた。その一環としてNFTは面白い取り組みだし、デジタル作品という新しい楽しみ方をお客様にも体験していただけるチャレンジだと思っている」とアイキャスト サービス本部編成部の谷本彩夏氏は説明する。
フェニックスバトル・パートナーズでは、PXB PHOENIX BATTLE (大橋ボクシングジムを運営するフェニックスプロモーションが主催するボクシング興行)の会場でNFTトレカを試合に来た来場者限定でプレゼントしているとのこと。「ボクシングとNFTの認知拡大として取り組んできており、こういった取り組みの積み重ねで、お客様のNFTへの理解を高めていければ」(谷本氏)と準備を進めてきた。
しかし、通常のグッズ販売にはないシステムが足かせになることも。「オークションや暗号資産といった、馴染みの少ないシステムがお客様のハードルになっていることは事実。少しでも不安を取り除けるよう、オークション会場はクレジットカードでも決済ができる『Adam byGMO』を選択した。動画作品とセットで販売するペアチケットはSS席ということでかなりのレア物。ぜひ多くの人に注目してもらいたい」と工夫を凝らす。
「海外からみた和」をテーマ成された今回のNFT作品。井上選手自身も「こういった取り組みも新たなボクシングの楽しみ方の一つ。ファンの皆様にも応援していただけたらうれしい」とコメントを寄せる。
「井上選手の凱旋試合ということで、日本らしさを意識できるコンテンツに仕上げた。これは試合前に流していたティザー映像などと統一した作りになっていて、ファンの方には、NFT作品はその延長線上と感じてもらえるのではと思っている。PPV配信では試合会場に設置した約10台のカメラがの映像を切り替えながら配信したが、NFTでは、すべてのカメラの映像からベストショットを抽出し直して構成しているため、配信されなかった映像も見られる作品になっている」(アイキャスト サービス本部長の上島史朗氏)と独自性を出す。
「NFTは、選手とファンが双方向でやりとりできる要素が強いと思う。幅広いスポーツに展開できる仕組みだと思うので、ボクシングに限らず取り組んでいきたい」(谷本氏)と今後を描く。
上島氏も「海外ではスポーツ×NFTの成功事例が多く出てきている一方で日本における事例はまだ少ないと思うが、スポーツには後援会があるなどファンが選手をサポートする仕組みが長く息づいている。そういう意味ではNFTは相性がいいのではと考えている」と続け、スポーツとNFTの相性の良さを強調する。
福岡氏は「ボクシングはほかのスポーツに比べ、デジタル化が発展途上という声も聞こえてくる。一定の選手レベルにまでいかないと試合の生中継が無いという状況もあり、ひかりTVでは、ボクシング興行の第一試合からの完全生中継に取り組んでいるほか、12月の井上選手の世界戦では自由視点映像を導入して、パンチがあたった瞬間をリプレイで回りながら見せるなど、新たな見せ方にも挑戦している。そうしたボクシングを盛り上げる施策の1つとしてNFTにも積極的にも取り組んでいきたいと思っている」とした。
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