パーソル総合研究所は3月22日、有職者の地方移住に関する調査結果を発表した。調査対象は、社会人になってから、自身の意向で、都道府県をまたぐ地方圏への移住をしたことがある移住経験者および意向者計7866人。
コロナ禍によるテレワーク普及などを背景に、地方圏への移住の関心が高まったことを受けて調査したもので、地方移住の経験者および意向者の実態や、移住に対する意思決定の要因について定量的なデータ、知見を提供することを目的とした。
なお、この調査の指す「地方」は、東京23区、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、大阪市、京都市、神戸市を除く、国内の市町村。
調査によると、地方移住でもっとも多いのは、故郷とは別の地域に移住する「Iターン型」で38.6%。次いで、故郷の市町村に移住する「Uターン型」が20.2%、主たる生活拠点を持ちつつ他の地域にも拠点を設けて行き来する「多拠点居住型」が3番目に多く17.3%となった。
また、移住にともない転職をしなかった人は53.4%だった。従来は、移住には転職がともなうと考えられ、移住促進に際し、地方圏に適した仕事がない点が課題視される傾向にあったが、テレワークなどの普及により、「転職なき移住」が増えていることが分かった。
収入に関しては、移住に伴う年収変化は、58.6%が「変化なし」と回答した。5~10%増収したという回答が6.2%、20~30%増収したという回答が5.4%、40~50%増収したという回答が3.3%、60%増収したという回答が3.1%あり、移住をしたからといって収入が必ずしも減るという訳ではないようだ。
なお、調査数のうち3.6%は"60%減収した"と回答しており、増収したという回答より、減収したという回答のほうが多い。
移住時の減収について許容できる減収幅を聞いたところ、20代では46.7%が「減収は考えられない」と回答した。また、年代を経るごとに減収を許容する傾向も確認された。
移住経験者に、移住後の地域における暮らしについて「その地域に住むこと自体に幸せを感じているか」を5段階(とてもそう思う~全くそう思わない)で評価してもらったところ、「Uターン型」や「配偶者地縁型」は評価が高く、「Jターン型」「Iターン型」「多拠点居住型」は評価が低い傾向が見られた。
Uターン型や配偶者地縁型は、その他の移住タイプに比べ、移住後の地域における情報や人脈を持っている場合が多い。そのため、リアリティショックや孤立などのリスクが低いことが影響していると考えられる。
「5年以内で計画」「10年以内で計画」「時期未定」と回答した「移住意向者」のうち、現在働いている企業において、テレワークなどにより「在宅勤務」や「遠隔地居住」の働き方が可能な状況にある人ほど、近い将来の計画として移住を具体的に検討しているという。
今後の移住を検討中である移住意向者(2998人)のうち、最も多く検討されている移住タイプは、「Iターン型」で56.7%。次いで、「多拠点居住型」が40.1%となった。
移住意向者に対し、移住検討時に影響する項目を調査すると、1位は「地域での日常的な買い物などで不便がない」、2位は「地域の医療体制が整っている」となった。また、3位、4位には「街並みの雰囲気」や「穏やかな暮らしの実現」といった曖昧で主観的な項目が挙がった。移住に際しては、生活上必要な具体的条件(生活基盤の担保)だけでなく、移住候補地に対してポジティブな印象や期待感を抱けるといった情緒的な側面も重視されているという。
移住意向者のうち51.3%は、何らかの不安があり移住に踏み切れないでいるとの結果もある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス